診察室にハニとこうして入るのは二度目だ。
あの時はまだ大学生で、結婚していたからそういう事になったが、お袋の勝手な思い込みの妊娠騒動。
さすがにあの時はオレも一瞬焦ったが、冷静になってハニを病院に連れて行ったが、ハニと大喧嘩をしての診察だった。
遠い時代には考えられないくらい今は早い時期でも妊娠が判るが、あの時の・・・・あの時代のハニが双子を妊娠したことに気が付いていれば、若くして命ん炎が消えることはなかった。
「パク先生・・・・」
「おめでとう!妊娠が確認できましたよ。」
「ほ・・・本当に・・・」
「良かったですね。まだ妊娠初期なので無理をしない様に。ペク先生が付いているから心配はないでしょうが、ハニさんは、外科病棟でも有名ですからね・・・・」
ニッコリと笑って言う年配の産科医師のパク。
スンジョとハニが結婚してから5年。
ようやく待望の第一子の妊娠に、不安はあったがスンジョもハニも幸せだった。
まだ膨らんでもいないお腹に慮手を当てて、ハニは嬉しそうに笑っていた。
「お母さんになるなんて、なんだか不思議ね・・・・」
「オレも父親になるなんて不思議だけど、これが幸せと言うのだろう思ったよ。」
「スンジョ君・・・・・」
「これから先あと何年も、ハニとこうして生まれてくるオレ達の子供と過ごすと思うとさ・・・・・600年前のふたりは、身分違いで苦しんだけど、いつかこうして身分など考えなくて、好きな人と結婚して子を持ち親になる事を夢見ていた。300年前のスンジョは、その身分違いでハニを選んだけど、ハニはずっと身分を気にしていた。それにふたりのハニは、病気で苦しんでいたのもある。あの時代に今の医療技術があったら、ハニの病気が治ったのかどうかは別として、もう少し長く生きることが出来ただろう。」
ハンドルを握っていない方の手で、お腹の上に添えられているハニの手を掴んだ。
「スンジョ君・・・身分違いと言うか、家柄の違いと言うか・・・・・私は気にしていたよ。お義父さんが倒れた時に、家の事を手伝うのが精一杯の私にしたら、ヘラのおじいさんの会社が融資をして、その条件にお見合いをしたじゃない・・・」
「あぁ・・・でも、あれは・・・・」
「スンジョ君があの時私の事が好きだとはっきり判らなかったからと言えばそれまでだけど、実家がククスの店では会社の融資をするくらいのお金がないから諦めたんだよ。どれだけ、ヘラが羨ましかったか・・・」
ハンドルを切って路肩に止めると、自分のシートベルトとハニのシートベルトを外した。
「降りるぞ・・・」
「え?」
「買い物だ・・・・」
スンジョから買い物を誘う事は今まで一度も無かった。
それが、スンジョが買い物と言って誘った店にハニは驚いた。
「ここに入るの?」
「あぁ・・・お前の話を聞いていたら、お腹の子供に悪影響を与えるし、あの時の話はしない約束だ。生まれてくる子供に何を着せるのか、お前の妄想に付き合ってもいいぞ。」
ドアを開けて入ると、店内にディスプレイしたベビー用品をハニが見ると、嬉しそうに顔を輝かせていた。
気の利いた言葉を掛けたりプレゼントをしたりすることが苦手で、こんな風にハニが表情をするのを見た事が無かった。
遠い時代のスンジョは、自分とは違ってハニを気遣い、大切にしていた。
声を挙げて喜んで品物を手にするハニと、ずっとこんな風に過ごして行きたいと思った。
「お義母さん、ビックリするね。妊娠報告とこの買い物を見て・・・・でもどうして女の子の物ばかりなの?スンジョ君の二の舞に・・・・・」
「ならない、600年前も300年前も女の子が産まれた。
勿論そんな事、今の時代でそう簡単に性別は変えられないけど、女の子だ・・・・因みにオレ達の子供は7人だ。」
「7人も?」
「あぁ。七宝焼きの箱の中のと言うよりも、先週親父の田舎に行った時、300年前の家系図を見たら7人子供を産んでいたよ。名前も書かれているから、オレ達もその子供の名前を付けることになるのかもな。」
初めての妊娠から、時は流れてペク家の家には小さな子供が走り回っていた。
「優太、優美と優理と一緒におじいちゃんとおばあちゃんにご挨拶をしていらっしゃい。」
5~6歳くらいの男の子は、双子の妹たちの手を引いて、祭壇に掲げられている祖父と祖母の遺影に手を合わせた。
スンジョとハニの息子のスングは、親と離れて異国で家庭を持った。
7人兄弟で最後に結婚したスングは、両親から聞いた伝説の話を妻の優花にも話した。
600年の年月を得てやっと幸せだと言っていた両親が、ほぼ同時に天に召したことは、伝説のスンジョとハニの願いどおり、幸せな人生を過ごしたのだと思った。
家系図通りに7人の子供の親になったわけではないが、両親が出会う300年前のスンジョとハニの子供と同じ用に7人の子供の親になったのは、偶然なのかそれとも計算している父が運命と言う言葉が好きな母の為にそうしたのかは判らないが、そんな二人の子供で会って良かったとスングも祭壇の両親の遺影に手を合わせた。
完

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あの時はまだ大学生で、結婚していたからそういう事になったが、お袋の勝手な思い込みの妊娠騒動。
さすがにあの時はオレも一瞬焦ったが、冷静になってハニを病院に連れて行ったが、ハニと大喧嘩をしての診察だった。
遠い時代には考えられないくらい今は早い時期でも妊娠が判るが、あの時の・・・・あの時代のハニが双子を妊娠したことに気が付いていれば、若くして命ん炎が消えることはなかった。
「パク先生・・・・」
「おめでとう!妊娠が確認できましたよ。」
「ほ・・・本当に・・・」
「良かったですね。まだ妊娠初期なので無理をしない様に。ペク先生が付いているから心配はないでしょうが、ハニさんは、外科病棟でも有名ですからね・・・・」
ニッコリと笑って言う年配の産科医師のパク。
スンジョとハニが結婚してから5年。
ようやく待望の第一子の妊娠に、不安はあったがスンジョもハニも幸せだった。
まだ膨らんでもいないお腹に慮手を当てて、ハニは嬉しそうに笑っていた。
「お母さんになるなんて、なんだか不思議ね・・・・」
「オレも父親になるなんて不思議だけど、これが幸せと言うのだろう思ったよ。」
「スンジョ君・・・・・」
「これから先あと何年も、ハニとこうして生まれてくるオレ達の子供と過ごすと思うとさ・・・・・600年前のふたりは、身分違いで苦しんだけど、いつかこうして身分など考えなくて、好きな人と結婚して子を持ち親になる事を夢見ていた。300年前のスンジョは、その身分違いでハニを選んだけど、ハニはずっと身分を気にしていた。それにふたりのハニは、病気で苦しんでいたのもある。あの時代に今の医療技術があったら、ハニの病気が治ったのかどうかは別として、もう少し長く生きることが出来ただろう。」
ハンドルを握っていない方の手で、お腹の上に添えられているハニの手を掴んだ。
「スンジョ君・・・身分違いと言うか、家柄の違いと言うか・・・・・私は気にしていたよ。お義父さんが倒れた時に、家の事を手伝うのが精一杯の私にしたら、ヘラのおじいさんの会社が融資をして、その条件にお見合いをしたじゃない・・・」
「あぁ・・・でも、あれは・・・・」
「スンジョ君があの時私の事が好きだとはっきり判らなかったからと言えばそれまでだけど、実家がククスの店では会社の融資をするくらいのお金がないから諦めたんだよ。どれだけ、ヘラが羨ましかったか・・・」
ハンドルを切って路肩に止めると、自分のシートベルトとハニのシートベルトを外した。
「降りるぞ・・・」
「え?」
「買い物だ・・・・」
スンジョから買い物を誘う事は今まで一度も無かった。
それが、スンジョが買い物と言って誘った店にハニは驚いた。
「ここに入るの?」
「あぁ・・・お前の話を聞いていたら、お腹の子供に悪影響を与えるし、あの時の話はしない約束だ。生まれてくる子供に何を着せるのか、お前の妄想に付き合ってもいいぞ。」
ドアを開けて入ると、店内にディスプレイしたベビー用品をハニが見ると、嬉しそうに顔を輝かせていた。
気の利いた言葉を掛けたりプレゼントをしたりすることが苦手で、こんな風にハニが表情をするのを見た事が無かった。
遠い時代のスンジョは、自分とは違ってハニを気遣い、大切にしていた。
声を挙げて喜んで品物を手にするハニと、ずっとこんな風に過ごして行きたいと思った。
「お義母さん、ビックリするね。妊娠報告とこの買い物を見て・・・・でもどうして女の子の物ばかりなの?スンジョ君の二の舞に・・・・・」
「ならない、600年前も300年前も女の子が産まれた。
勿論そんな事、今の時代でそう簡単に性別は変えられないけど、女の子だ・・・・因みにオレ達の子供は7人だ。」
「7人も?」
「あぁ。七宝焼きの箱の中のと言うよりも、先週親父の田舎に行った時、300年前の家系図を見たら7人子供を産んでいたよ。名前も書かれているから、オレ達もその子供の名前を付けることになるのかもな。」
初めての妊娠から、時は流れてペク家の家には小さな子供が走り回っていた。
「優太、優美と優理と一緒におじいちゃんとおばあちゃんにご挨拶をしていらっしゃい。」
5~6歳くらいの男の子は、双子の妹たちの手を引いて、祭壇に掲げられている祖父と祖母の遺影に手を合わせた。
スンジョとハニの息子のスングは、親と離れて異国で家庭を持った。
7人兄弟で最後に結婚したスングは、両親から聞いた伝説の話を妻の優花にも話した。
600年の年月を得てやっと幸せだと言っていた両親が、ほぼ同時に天に召したことは、伝説のスンジョとハニの願いどおり、幸せな人生を過ごしたのだと思った。
家系図通りに7人の子供の親になったわけではないが、両親が出会う300年前のスンジョとハニの子供と同じ用に7人の子供の親になったのは、偶然なのかそれとも計算している父が運命と言う言葉が好きな母の為にそうしたのかは判らないが、そんな二人の子供で会って良かったとスングも祭壇の両親の遺影に手を合わせた。
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