大好き！＜イタズラなＫｉｓｓ＞

このお話はキム・ヒョンジュンさんの「君だけを消せなくて」をイメージして書いたお話の続編というのか、スンジョと再会するまでとその後の二人を書きました。

私の殆どのお話はスンジョ目線だったので、このお話は結構苦労しました。
ハニならこんな時はどうするのだろうか、ハニから見たスンジョはどうなのか。
今更ながら公式ガイドブックを探してＹオクで買いまいした。

イタキス関連の物がドンドンと増えて行くのと同時に、自分だけのイタキスの世界が大きくなり、原作や韓国版テレビオリジナルと離れていくようで心配でした。
毎日がイタキスとキム・ヒョンジュンさんの事で頭がいっぱいで、こんなことを書きたいと思うことが沢山あります。

彼はスンジョとは違った性格なので、私の書くスンジョが優しいと言われるのは、スンジョならこうするではなく、キム・ヒョンジュンならこうするだろうと思っているからだと思います。 

このお話のスンジョは、記憶がないために不安で仕方がなく、ハニだけが頼りでした。
完璧人間ペク・スンジョの本当の姿は、周囲から天才だと言われていたのですがこんな風に不安が沢山あるのだとも思いました。 
最後はスンジョらしく「産めよ」という言葉にしましたが、スンジョって本当はすごく優しい人だと思います。

必ず出てくるスンジョとハニの子供「スンハ」シチュエーションごとに誕生日が違いますが、今回は私の構成ミスでクリスマスの時期に生まれたことになりましたが、他の作品では７月７日（昨日）を誕生日にしていくつもりです。 
余談ですが、７月７日はハニの親友のトッコ・ミナの結婚記念日でもあります。 

それでは次回作も楽しんで読んで行けるように書いて行きますので、お付き合いくださいね。 

試験が終わって大きく手を振ってハニが走って来た。
その様子から、これは案外出来たのだと思った。 
自分の方に走ってくるハニの笑顔を見ると、あの時離れ離れになって再会できなかったらと思うと、飛び込んでくるハニを強く抱きしめないと不安になって来た。
「スンジョ君？」
「良く頑張ったな、こんな短期間で。」
「変なスンジョ君・・・・・前なら、こんな風に優しく抱きしめてくれなかったのに・・・・。」
「これからどこかに行こうか？」
「どこに？」
「ハニの行きたい所。」
「恋人みたいにデートしたい。」
結婚したのにバカだなと言われそうだったけど、スンジョ君はデートしてくれた。
普通の恋人同士みたいに、手をつないで私の買い物に付き合ってくれて、そして一番スンジョ君と一緒に行きたかった場所。

ハニは少し路地に入ったところにある古びれた小さな喫茶店にスンジョを連れて来た。
「ここのねお弁当を食べると、辛いことも悲しいことも頑張れるの・・・・・・・」
「いつ来たんだ？６年間一緒に過ごしてきたのに、一度もこの喫茶店の事は聞いたことはないぞ。」
「ふふ・・・・・・」
ハニはいたずらっ子のように笑って、店のドアを開けた。
「いらっしゃい・・・・・・・・アニ・・・じゃなかったハニ！よく来たねぇ・・・・・。」
「おばさん・・・・元気だった？」
スンジョは一瞬訳が分からなかった。
「あんたがハニの大好きな旦那様かい？」
ハニの顔とおばさんの顔を見てようやく分かった。
「ハニを助けてくれた、バンスンさんですか？」
「助けたって言うほどでもないが・・・・・・・ハニが諦めないで頑張れるほどの旦那様はどんな人かと思ったら、まぁまぁ・・・・いい男じゃないか。今日はハニとハニの旦那様が来たから、店は臨時休業だ。奥に上がって待ってて送れ、すぐに行くから。」 
バンスンはうれしくて仕方がないように、急いで店のドアに臨時休業の札を掛けてドアに鍵を掛けた。

ハニに連れられてきた小さな部屋に、幼い女の子の写真が机の上に置かれていた。
「この部屋ね・・・・・・私が使わせてもらっていたの。」
「意外だ・・・・・・」
「？」
「お義父さんの店からそれほど離れていないのに、お義父さんが何度も現場に行って探していたのに・・・・・・」
ハニがひと月だけ過ごした形跡が机の上に残されていた。
震える手で書いたのであろう、願い事のメモがテープで飛ばないように貼りつけてあった。

「狭い部屋で悪いね・・・・・・今日のランチに出す予定だった弁当だよ。捨てるのももったいないから三人で食べよう。」
スンジョは箸を入れて一口食べた。
その味は覚えがあった。
パラン大病院にハニが運んで来た弁当と同じ味つけだった。
「私ね、顔の痣が消えなくてスンジョ君がもし・・・・・・だったら、おばさんの子供としてここにずっといようと思ったの。」
ハニは机の上に置かれていた写真を手にした。
「その子は私の娘だよ。６歳の時に交通事故で亡くしてな・・・・・・・心の優しい子だったよ。どことなくハニに似ているだろ？」
「スンハって言うんだって・・・・・・。」 
その幼い女の子はハニがこの年齢の頃はこんな感じだったのだろうと思うくらいによく似ていた。
「さ・・・・亡くなった娘の事はもういいから、最近のハニの事を教えてくれんかね？」
ハニは恥かしそうに笑いながら、スンジョの顔を見た。
「今日ね、看護師になるために看護科に転科する試験を受けたの。結構自信があるの。」
「ほぅ・・・・・・ハニは頑張り屋だからね。」
次に何を話すのかバンスンンは、期待を込めた目でハニを見ていた。
ハニはさらに顔を赤くして、小さな声で話した。

「お・・・・・・お母さんになります・・・・・・・。」
バンスンだけじゃなく、スンジョもハニの言葉に驚いた。
「本当か？」
「うん・・・・・多分・・・・・・・まだ病院に行っていないし・・・・どうしたらいいのか迷ってるの・・・・。」
何も言わないスンジョに、ハニはドキドキしていた。
「まだ看護学科に行けるかどうかわからないのに・・・・・・それに・・・・」
「産めよ。」
「でも学校が・・・・・・。」
「結婚しているんだし、迷うことなどないだろう。」
バンスンは机の上に置かれたハニの手をしっかりと握った。
「母親になれば大変なことも多い。だけどどんなに辛いことがあっても、愛してくれる旦那が傍にいて見守ってくれる家族がいるから大丈夫だ。母親になれば子供のために頑張れるもんだよ。ハニは、事故の後動けるようになるまでも頑張ったし、こっちに戻って来ても前向きに頑張って来たから、大丈夫だよ。」
おばさんやスンジョ君にそう言われると、なんだか本当に対丈夫なように思える。

まだ夢も実現するためのスタートラインに立ったばかりなのに、お母さんになって出来るのだろうかとこの何日かは不安だらけだった。


バンスンの店を出た二人はそのまま家に帰らず、パラン大病院の産科を受診した。
検査結果を待つ間、不安な顔をしているハニをスンジョは頬を抓った。
「ひったはぁ～い」
「オレが付いているんだ、何も心配しなくてもいいし、あのお袋が知ったらきっと喜ぶだろうし、お前を助けてくれる。何も心配しなくてもいいから。」




町にクリスマスソングが流れ、イルミネーションが綺麗に輝き、フワフワと雪が舞っているその日の 団らん時、家族で祝うように準備が整ったペク家のリビングは、ひっそりとしていた。
テーブルに並べられている食事はほとんど手付かず。
飲みかけのワインにジュース、ケーキの食べかけとフォークの刺さったチキン。
皓皓と点いている電気。
誰もそこにはいなかった。
ペク家の人はどこに行ったのか・・・・・・

そのペク家とは正反対に、パラン大病院の産科病棟に大家族が着の身着のままで、息を潜めて静かに聞き耳を立てていた。
日付が変わる少し前に、小さな声が聞こえて暫くすると分娩室のドアが開いた。
「産まれたよ。女の子だ。」
静かな病院の廊下に響く歓声。

産まれたばかりの子供は「スンハ」と名付けられた。


☆;+;｡･ﾟ･｡;+;☆;+;｡･ﾟ･｡;+;☆;+;｡･ﾟ･｡;+;☆;+;｡･ﾟ･｡;+;☆;+;｡･ﾟ･｡;+;☆;+;｡･ﾟ･｡;+;完☆;+;｡･ﾟ･｡;+;☆;+;｡･ﾟ･｡;+;☆;+;｡･ﾟ･｡;+;☆;+;｡･ﾟ･｡;+;



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転科試験は募集人員５名に受験生が３０人ほど。
入学試験の人数よりは少ないが、それよりも試験というだけで緊張してきた。
事故から３ヶ月でも、スンジョ君とまた一緒に暮らし始めてひと月。
その間は、この日の為に毎日勉強をしていた。
昔から勉強をすることは好きではなかったけど、それでもスンジョ君と同じ職場で仕事が出来ることを考えれば、頑張れた。

「スンジョ君の方が先に卒業しちゃうね。」
「ハニと一緒に卒業だ。」
「スンジョ君・・・・私に合わせて留年しなくてもいいよ。」
シートベルトを外してハニの方を向くスンジョは、優しい顔をして笑っていた。
「お前・・・知らないのか？」
何のことだろう・・・・・
「医学部は６年だ。ハニは受かれば看護科の２年に転科だから、同じ年に卒業が出来るぞ。」
「知らなかった・・・・・。」
ハニの柔らかな髪をそっと触れると、スンジョはクスッと笑った。
「お前らしいな・・・・・小学生でも医学部が６年だと言うことを知っているぞ。」
「そうでした・・・・・・」
腕時計を見ると、受付開始時間になっていた。
急に緊張してきたのか、体が熱く感じられた。
「何か頑張れそうに思えて来た。」
「頑張ってこい。オレはお前が試験中も、頑張れるように祈ってる。」
スンジョに送り出されて受付場所に走って行くハニを見るスンジョは、自分の夢を見つけてくれたハニが、今度は自分の進む路を見つけた姿が嬉しく思えた。



答案用紙と問題用紙が配られると、緊張がさらに高まった。
周りの人すべてがすごく自信にあふれているのに、今のハニは・・・・・・というより昔からハニは大事なところで緊張しすぎて失敗をしていた。
「大丈夫、私にはスンジョ君が付いているから。」
この日のためにスンジョはハニに付き合って毎晩遅くまで勉強をしていた。
お母さんもパパも私とスンジョ君の為に、消化の良い夜食を用意してくれた。
なにがなんでも頑張らないと。
目を瞑って試験管の合図を待ち、
「始めてください」
と聞こえると一斉にそれぞれが問題の冊子を開いた。
ハニはまだ目を閉じていたが大きく深呼吸をして問題を開いた。
「大丈夫、私にはスンジョ君が付いているから、大丈夫。」

ハニにとって簡単な問題ではなかったが、看護科に移りたいと思ってから毎日スンジョと勉強したことを無駄にしないように、ハニは問題をよく読んで解答していった。
たとえいい結果じゃなくても、悔いの残る事だけはしたくない。
あの山小屋で、身体の痛みを堪えてリハビリをして、景色を見ながらスンジョに会える日を諦めなかった。

大丈夫
私には応援してくれる家族がいるのだから。
パパにお母さんとお父さん。ウンジョ君に・・・・・・・バンスンおばさんも応援してくれる。
バンスンおばさんの子供のように事故や病気で治療する子供の不安を取り除ける、そんな看護師になるためには頑張らないと。
優秀な看護師になれなくても、ありがとうと言う看護師になるために、頑張るよ。
スンジョ君が祈ってくれるから。

退出が出来る時間になっても、終了の合図を聞くまでハニは何度も解答を見直した。
試験管に解答用紙が回収されて、ハニはスンジョがいる医学部等に急いだ。




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「今日だな。」
「うん。」
「頑張れよ、オレは遅れている分を取り戻したいから図書館にいるから。」
「大丈夫。目標があれば頑張れるから。」
そう目標があるから、事故の後気が付いた時のあの自分の絶望的な姿でも頑張れた。
生きていればきっといいことがある、とおばさんが言っていた。
私がこうしてまたスンジョ君といられるのは、おばさんのお蔭だから。
スンジョ君と遠く離れていても、きっと会えると信じていた。
「ボヤッとしていると遅刻するぞ。」
こんな風にスンジョ君に嫌味っぽく言われても、それが嬉しい。

「おばさんの事を思い出したの。」
「一度おばさんの店にハニと一緒に食べに行きたいな。」
「行こうか？」
「ああ、但し試験が終わってからな。おばさんもハニと離れていてもきっと元気でまた勉強を頑張れるように祈っているさ。」
上着と鞄を持ったスンジョの後に続いてハニは一緒に部屋を出た。

「おはよう、ハニちゃん。」
「お母さん、おはようございます。お父さんとウンジョ君・・・・・パパもおはようございます。」
「パパは一番最後だな。」
「ごめんね・・・・・・。」
いつもは店の仕込みに早く出るギドンもさすがにハニの試験の事が気になって、今日は準備をジュングに任せてハニを送り出すことにした。

「頑張ってね。家でハニちゃんが無事に受かるように祈ってるわ。」
グミがにこやかに言うその横でスチャンはいつもの様ににこにこと笑ってハニを励ましていた。
「ウンジョ！食べてばかりいないで、ハニちゃんに一言」
黙々と食べているウンジョも、グミに言われて顔を上げずにボソッと言った。
「がんばれよ。」
「ありがとう。」
ニコリともしないでぶっきら棒に行ってもそれがウンジョ君の私への愛情表現。
スンジョ君が大好きだといことが私と同じだから本当にかわいい弟。
真似をしているつもりだと思うけど、少しづつ大人になって行くウンジョ君はスンジョ君と似てきた。

私の隣でスンジョ君も勉強をしている。
こんなに幸せな日が戻って来るとは思わなかった。
「どうした？」
「何でもない。」
「私の隣でスンジョ君が勉強をしている。こんなに幸せな日が来るとは思わなかった。」
心で思っていたことをスンジョ君が声に出したことに驚いた。

「聞こえたの？」
「ハニの心の声はどんなに遠くに離れていても聞こえるんだ。」
スンジョがニヤッと笑って、ハニの顔を見た。
「心の声は聞こえた訳じゃないが、こんな時にハニだったらこう言うだろうと言う、今までの経験からそう思った。」
「凄いね・・・・・・・・」
結婚する前は意地悪ばかりされて、ヘラとお見合いをしたときはもう生きているのも辛いくらいだった。
「スンジョ君、眠らなくてもいいの？」
「休んでいた分を取り戻さないとな。」
スンジョ君が勉強をする姿を今まであまり見たことがない。
一度目を通せば覚えてしまうスンジョ君が、初めて見つけた夢を 実現させるために、必死になって勉強をしている。

私と言えば今までスンジョ君しか見ていなかったから、自分の夢なんて何も考えていなかった。
事故に遭って、スンジョ君と離れて暮らした二か月の間に、ただスンジョ君を思っていただけ。
その時は、スンジョ君と再会できることが私の夢だった。
スンジョ君を中心に私の心臓は動いていた。
ソウルに戻って来て、ミン先生に診察してもらい、自分で見ても気味の悪い痣を看護師さんは、何も気にしないで片方だけの目しか見ることが出来なかった私が怪我をしないように誘導してくれた。
こんな仕事をしてみたいと初めて思った。

ほんの少し、ほんの少しだけ、本当はスンジョ君と同じ職場で仕事をしてみたいと思った。
ナイショだよ。
スンジョ君にもナイショだよ。
本当はずっとそばにいたいから、看護師になりたいということは。

「もう、寝るか？」
「・・・・・・ん・・・ズルッ。」
知らない間に居眠りしていたのか涎が出ていた。
スンジョ君はきっと私が居眠りをしていたから、声を掛けてくれたんだ。

布団に先に入ったスンジョ君は、私が髪を纏めている間、優しく見つめてくれる。
これが結婚してからというより、私がこの家に戻ってから毎日そうしてくれるから、今日はお風呂から出てすぐに纏めた。
掛け布団を上げてスンジョ君の横に入ると、本当に幸せな気分になる。
もう離れないようにスンジョ君の身体にピッタリと寄せると、スンジョ君はもう離さないと言うようにギュッと抱きしめてくれる。
そうすると、私かスンジョ君のどちらかが先に寝息を立てて・・・・・・・・・・眠ってしまう。
・・・・・・・それが当たり前で・・・・・・当たり前すぎて出来なかったこと。



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