パルボクが亡くなり無人になった店は、月日の経過と雨風で所々が傷んでいた。
古い店内の古い木の机の上に載せられた幾つもの書類に目を通しているスンジョは、自分の父親とハ二の両親と祖母の思い出が残っているこの店を手放すことをしてもいいのかと思っていた。
「スンジョ君、私はこの古い店を手放すことに後悔はしないよ。思い出は胸の中にしまっても消えることはないのだから。」
「ここでの思い出は自分の人生を変えてくれた場所です。」
すべての書類に目を通し、スンジョはサインをすると、封筒にそれを入れて封印した。
「改装もお義父さんが貸してくださった写真を参考に、あの頃と変わらないようにします。」
「そんなに気にしなくていいよ。おばあさんは、自分が亡くなったら処分してもいいと言っていたのだから。」
封印をした封筒をギドンに渡すと、窓を開けて別荘の庭を見上げた。
庭ではハニが二人の子供と楽しそうに秋桜の花を摘んでいた。
「それじゃあ、あとは役所に届けて手続きをしてくるよ。スチャンもグミさんも君達や孫と離れて住むことになって寂しいと行っていたから、時々は帰ってきておくれよ。」
「改修が終わっても機材が揃うまではソウルに何度か行くことになるので、その時はハニと子供たちを連れていきます。」
急いで帰って役所に書類を届けるから、ハ二立ちに挨拶をしないで帰るよと言って、ギドンの車が走り去ると、ハニが子供たちと一緒に元祖母の店だった裏口から入ってきた。
「パパは?」
「急いで書類を届けると言って帰っていかれた。」
「そうなんだ・・・残念。これからはあまり会えないから、今夜は泊まっていってくれると思って、スンハとスンリが一生懸命泊まる部屋を整えてくれたのに・・・・」
うんうんと大きくうなずく二人の子供たちは、ハ二の性格をそのまま受け継いだくらいに素直な子供たちだ。
寂しそうな顔をしているハ二を見て、スンジョは母親になってもいつまでも変わらないハ二の表情が好きだった。
「パパが恋しいか?それとも、ここで暮らすよりソウルのほうが良かったか?」
「二人の子供の母親よ。それよりもスンジョくんの妻だから、スンジョくんの手伝いをしてここで暮らすことに何の迷いもないのだから。」
ぷぅっと膨れた顔も、スンジョの好きな顔だった。
子供たちと摘んできた秋桜を花瓶に生けている姿を見て、ハニがここで見た二人の子供はいつの日か自分たちのところに来る子供だったのだと思うと、このパルボクの店を処分することはできなかった。
あの夢を見た日から8年。
自分たちの子供は3歳とまだ幼く、自分たちもまだ人から教えを乞うこともあるが、秋桜の丘の小さな診療所で医師と看護師として、ハ二の母が叶えることのできなかったことを叶えたいと思ったのは、ここに来ると心が楽になり本来の自分に帰ることができるからだ。
ハニが夢で見た子供たちが双子で生まれたのは、子供たちにハ二の母の思いを受け継いでいくことを助けてくれるのだろう。
毎年咲く秋桜の花は、この数年白もピンクも紫も不思議と同じ数だけ咲いていた。

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古い店内の古い木の机の上に載せられた幾つもの書類に目を通しているスンジョは、自分の父親とハ二の両親と祖母の思い出が残っているこの店を手放すことをしてもいいのかと思っていた。
「スンジョ君、私はこの古い店を手放すことに後悔はしないよ。思い出は胸の中にしまっても消えることはないのだから。」
「ここでの思い出は自分の人生を変えてくれた場所です。」
すべての書類に目を通し、スンジョはサインをすると、封筒にそれを入れて封印した。
「改装もお義父さんが貸してくださった写真を参考に、あの頃と変わらないようにします。」
「そんなに気にしなくていいよ。おばあさんは、自分が亡くなったら処分してもいいと言っていたのだから。」
封印をした封筒をギドンに渡すと、窓を開けて別荘の庭を見上げた。
庭ではハニが二人の子供と楽しそうに秋桜の花を摘んでいた。
「それじゃあ、あとは役所に届けて手続きをしてくるよ。スチャンもグミさんも君達や孫と離れて住むことになって寂しいと行っていたから、時々は帰ってきておくれよ。」
「改修が終わっても機材が揃うまではソウルに何度か行くことになるので、その時はハニと子供たちを連れていきます。」
急いで帰って役所に書類を届けるから、ハ二立ちに挨拶をしないで帰るよと言って、ギドンの車が走り去ると、ハニが子供たちと一緒に元祖母の店だった裏口から入ってきた。
「パパは?」
「急いで書類を届けると言って帰っていかれた。」
「そうなんだ・・・残念。これからはあまり会えないから、今夜は泊まっていってくれると思って、スンハとスンリが一生懸命泊まる部屋を整えてくれたのに・・・・」
うんうんと大きくうなずく二人の子供たちは、ハ二の性格をそのまま受け継いだくらいに素直な子供たちだ。
寂しそうな顔をしているハ二を見て、スンジョは母親になってもいつまでも変わらないハ二の表情が好きだった。
「パパが恋しいか?それとも、ここで暮らすよりソウルのほうが良かったか?」
「二人の子供の母親よ。それよりもスンジョくんの妻だから、スンジョくんの手伝いをしてここで暮らすことに何の迷いもないのだから。」
ぷぅっと膨れた顔も、スンジョの好きな顔だった。
子供たちと摘んできた秋桜を花瓶に生けている姿を見て、ハニがここで見た二人の子供はいつの日か自分たちのところに来る子供だったのだと思うと、このパルボクの店を処分することはできなかった。
あの夢を見た日から8年。
自分たちの子供は3歳とまだ幼く、自分たちもまだ人から教えを乞うこともあるが、秋桜の丘の小さな診療所で医師と看護師として、ハ二の母が叶えることのできなかったことを叶えたいと思ったのは、ここに来ると心が楽になり本来の自分に帰ることができるからだ。
ハニが夢で見た子供たちが双子で生まれたのは、子供たちにハ二の母の思いを受け継いでいくことを助けてくれるのだろう。
毎年咲く秋桜の花は、この数年白もピンクも紫も不思議と同じ数だけ咲いていた。
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