出勤途中にある保育園に二人を預けて、仕事先までは短い二人だけの時間になる。
運転するスンジョをそっと盗み見るのが、二人だけの時間になった時のハニの楽しみだった。
「よく飽きる事がないな。」
自分の顔を見ているハニにそう言うが、ハニにみられることは嫌ではない。
「仕事中は見られないから、二人だけの時間に見ておくの。」
「どうぞご自由に。」
保育園から『まったりクリニック』までは、車で数分の所にある。
駐車スペースに停めて、クリニックのドアを開けるか開けないかで聞こえて来た、いつものスヨンと老医師の漫才のような掛け合い。
「飽きないのはここにいる人も同じか・・・・」
待合室には毎日来ている常連の人の面々。
「くそ親父!ここは老人のサロンじゃないと言っているだろう。」
「サロンのつもりで来ていない。隠居した老人の情報交換の場に使わせてもらっているだけだ。」
「だからぁ、ここはサロンじゃないって言ってるだろう。」
「老人はいつ具合が悪くなるか分からないから、温度管理がしっかりしているここで話をした方が家族が心配せんだろう。お前のおじいさんで先代の院長は、そういうクリニックを目指していたんだ。」
ハニが勤め始めた時と比べれば、ここは新しい機材が増えているが、手術を行える設備はない。
スヨンと老医師の親子喧嘩を止めるのは、色々な人生を歩んでいる人たちの、何事にも動じない物の言い方。
弁の発つスヨンでも老医師には叶わず、それよりも血縁のない老人たちに逆らう事を言えずにいる。
「スンジョとハニさん、またくそ親父が老人の集いを始めていたよ。クリニックの鍵を付けかえた方がいい。」
「そう思ったらお前が換えればいいだろう。ペク先生の考えにオレは反対はしないよ。」
「変人のお前に話しても無駄だったか。」
スヨンと老医師の親子の関係も、このクリニックを新たに開院してから、口喧嘩は絶えなくてもお互いに十分話し合った事で蟠りも消えた。
毎日クリニックに訪れる老人たち同様、人には色々な思いを抱える時を乗り越えなければいけない。
心を軽くするために、踏み出す一歩の敷居が高くても人間にはそれを超える力はある。
心のバランスを崩したハニを見て、スンジョは自分の心に素直になろうとして、心を軽くする事が出来た。
目の前でまだ言い合っている二人を見ていると、スンジョはパラン大病院で整った環境で仕事をしていた時とは違う思いを感じた。
「人生は紆余曲折・・・・か・・・」
ハニという人間を知ってから、スンジョはそれまでの人生とは違う道を見つける事が出来た。
この先何十年も一緒に生活をして行くうちに、意見が違う事も出てくるかもしれないが、今のスンジョは完璧を考えない人生を過ごしていきたいと考えていた。

人気ブログランキング
運転するスンジョをそっと盗み見るのが、二人だけの時間になった時のハニの楽しみだった。
「よく飽きる事がないな。」
自分の顔を見ているハニにそう言うが、ハニにみられることは嫌ではない。
「仕事中は見られないから、二人だけの時間に見ておくの。」
「どうぞご自由に。」
保育園から『まったりクリニック』までは、車で数分の所にある。
駐車スペースに停めて、クリニックのドアを開けるか開けないかで聞こえて来た、いつものスヨンと老医師の漫才のような掛け合い。
「飽きないのはここにいる人も同じか・・・・」
待合室には毎日来ている常連の人の面々。
「くそ親父!ここは老人のサロンじゃないと言っているだろう。」
「サロンのつもりで来ていない。隠居した老人の情報交換の場に使わせてもらっているだけだ。」
「だからぁ、ここはサロンじゃないって言ってるだろう。」
「老人はいつ具合が悪くなるか分からないから、温度管理がしっかりしているここで話をした方が家族が心配せんだろう。お前のおじいさんで先代の院長は、そういうクリニックを目指していたんだ。」
ハニが勤め始めた時と比べれば、ここは新しい機材が増えているが、手術を行える設備はない。
スヨンと老医師の親子喧嘩を止めるのは、色々な人生を歩んでいる人たちの、何事にも動じない物の言い方。
弁の発つスヨンでも老医師には叶わず、それよりも血縁のない老人たちに逆らう事を言えずにいる。
「スンジョとハニさん、またくそ親父が老人の集いを始めていたよ。クリニックの鍵を付けかえた方がいい。」
「そう思ったらお前が換えればいいだろう。ペク先生の考えにオレは反対はしないよ。」
「変人のお前に話しても無駄だったか。」
スヨンと老医師の親子の関係も、このクリニックを新たに開院してから、口喧嘩は絶えなくてもお互いに十分話し合った事で蟠りも消えた。
毎日クリニックに訪れる老人たち同様、人には色々な思いを抱える時を乗り越えなければいけない。
心を軽くするために、踏み出す一歩の敷居が高くても人間にはそれを超える力はある。
心のバランスを崩したハニを見て、スンジョは自分の心に素直になろうとして、心を軽くする事が出来た。
目の前でまだ言い合っている二人を見ていると、スンジョはパラン大病院で整った環境で仕事をしていた時とは違う思いを感じた。
「人生は紆余曲折・・・・か・・・」
ハニという人間を知ってから、スンジョはそれまでの人生とは違う道を見つける事が出来た。
この先何十年も一緒に生活をして行くうちに、意見が違う事も出てくるかもしれないが、今のスンジョは完璧を考えない人生を過ごしていきたいと考えていた。

人気ブログランキング