『一緒に帰ろう』特別な言葉でもなく、また特別な言葉でもあった。
ハニは通用口近くのベンチに座り、スンジョが来る方向を見て待っていた。
挨拶をしてハニの前を通りすぎる人を見送り、人の出入りが無くなってもイライラとしたり不安になったり不思議としなかった。
まだ誰の姿も見えない廊下の先を見てほほ笑むと、すくっと立ち上がった。
その方向に走り出したい気持ちを押さえて待っているのは、とても長く感じたがこの一週間の事を思うとどうって事ないと思った。
スンジョの姿が見えると、ハニは大きく手を振った。
いつもは嫌がるスンジョも、今日は小さく手を上げてそれに応えて小走りに近づいた。
「珍しい・・・」
「なにが?」
「スンジョ君が手を振ったのに応えてくれたから。初めてだよね?どうして?・・・ねぇ・・・・」
「行くぞ。」
子犬の用に纏わりつくハニがこんなに安心する存在だと思わなかった。
「家に帰る方じゃないよ。」
「よくわかったな。」
「だって、家に帰るのなら左に行くのに、右に廻ったじゃない。いくら方向音痴の私でも、家がどっちの方向かくらいわかるわよ。」
いつものハニの話し方に戻った。
少し黙れといつも冗談めかして言っていたが、今日はその話し方が聞いていたかった。
「グアムに行く。」
「グアムって・・・新しいカフェとか?」
「違う、空港から飛行機に乗ってグアムに行く。」
「だめだよ。明日は休みだけど、明後日から仕事だから。」
「ずっと当直だったから休暇を取った。ついでにお前の分も取ったから安心しろ。」
「安心しロッテ・・・パスポートも着替えも何も準備をしていないよ。」
右手でスンジョが後部座席を指すと、二人のスーツケースが置いてあった。
「全部用意してある。パスポートはオレの上着のポケットに入っている。」
助手席でブツブツと言っているハニを見ながら、スンジョはニヤッと笑った。
「ふたりだけの旅行も、新婚旅行以来だ。今回はお袋たちも来ないから、一週間ずっと二人で過ごせば
きっと何かが変わるよ。」
「何かって?」
「何か・・・だよ。」
何が変わるかなんて知らない。
この一週間が口を利かない顔を見ないで過ごしたから長く感じたのなら、これからの一週間はずっと一緒に過ごすからきっと長く感じるはず。
でもこの日から10ヶ月後にはきっと二人の関係が変わっているはずだった。

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ハニは通用口近くのベンチに座り、スンジョが来る方向を見て待っていた。
挨拶をしてハニの前を通りすぎる人を見送り、人の出入りが無くなってもイライラとしたり不安になったり不思議としなかった。
まだ誰の姿も見えない廊下の先を見てほほ笑むと、すくっと立ち上がった。
その方向に走り出したい気持ちを押さえて待っているのは、とても長く感じたがこの一週間の事を思うとどうって事ないと思った。
スンジョの姿が見えると、ハニは大きく手を振った。
いつもは嫌がるスンジョも、今日は小さく手を上げてそれに応えて小走りに近づいた。
「珍しい・・・」
「なにが?」
「スンジョ君が手を振ったのに応えてくれたから。初めてだよね?どうして?・・・ねぇ・・・・」
「行くぞ。」
子犬の用に纏わりつくハニがこんなに安心する存在だと思わなかった。
「家に帰る方じゃないよ。」
「よくわかったな。」
「だって、家に帰るのなら左に行くのに、右に廻ったじゃない。いくら方向音痴の私でも、家がどっちの方向かくらいわかるわよ。」
いつものハニの話し方に戻った。
少し黙れといつも冗談めかして言っていたが、今日はその話し方が聞いていたかった。
「グアムに行く。」
「グアムって・・・新しいカフェとか?」
「違う、空港から飛行機に乗ってグアムに行く。」
「だめだよ。明日は休みだけど、明後日から仕事だから。」
「ずっと当直だったから休暇を取った。ついでにお前の分も取ったから安心しろ。」
「安心しロッテ・・・パスポートも着替えも何も準備をしていないよ。」
右手でスンジョが後部座席を指すと、二人のスーツケースが置いてあった。
「全部用意してある。パスポートはオレの上着のポケットに入っている。」
助手席でブツブツと言っているハニを見ながら、スンジョはニヤッと笑った。
「ふたりだけの旅行も、新婚旅行以来だ。今回はお袋たちも来ないから、一週間ずっと二人で過ごせば
きっと何かが変わるよ。」
「何かって?」
「何か・・・だよ。」
何が変わるかなんて知らない。
この一週間が口を利かない顔を見ないで過ごしたから長く感じたのなら、これからの一週間はずっと一緒に過ごすからきっと長く感じるはず。
でもこの日から10ヶ月後にはきっと二人の関係が変わっているはずだった。

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