病院に到着をするとすぐに母の身体を抱えるように院内に入って行く父を、スンハは車から荷物を降ろすと黙って後ろを付いて行った。
近すぎると見えない事があると分かっていたが、少し離れて父と母の二人の姿を見ていると、決して雄弁ではない父が言葉には表さなくてもその視線に母への愛がとても深くて大きくて温かく見えた。
スンハはそんな二人を見て『パパのような人と結婚をして、ママのように愛されたい』と思っていた。
物心ついた時には、同じ年頃の友達の家庭とはどこか違っている事は理解していた。
だからと言って自分にどうして父親がいないのかを知りたかったが、決して器用ではない母親が一生懸命にカフェで仕事をして少しでも時間が空けば自分の手を引いてよくバスに乗って出かけていた。
出掛ける時は『お弁当に何を持って行こう』と必ず聞き、スンハは『おかあさんの卵焼きが食べたい』と毎回言っていた。
本数の少ないバスを待つバス停で、しっかりと自分の手を繋いで『迷子にならないでね』と母が言えば『迷子になるのはいつもおかあさんだよ』と言って二人でよく笑っていた。
その様子が写真に写されていたのはハニもスンハも今も知らない事だが、スンジョはその写真に小さく写っている二人を見て仮名田主見つけ出すと決めていた事も二人は知らない。
母の出産に立ち会う父に何か声を掛けようと思ったが、何もいい言葉が思い浮かばない。
「パパ・・・」
「ん?」
「ママを・・・頼むね。」
マスクをしているスンジョがクスッと笑ったのが頬の筋肉で分かったが、スンハはおかしなことを言ってしまった事に苦笑いをした。
何も言わないで手を上げてハニの出産に立ち会うために分娩室に入って行った。
静かになった廊下のなぜか一番陰になるような場所にあるソファーに、スンハは荷物を持って緊張しながらきょうだいの誕生を待つことにした。
耳を澄ませても聞こえるはずがなく、空気の流れさえも分からないのに、父と母の声が聞こえるような気がした。
一時間に時間と経ってもまだドアは開かない。
自分の時とは違って、父が付いているのなら大丈夫だと思っても不安だった。
「そうだ・・・おばあちゃんとおじいちゃんたちに連絡をしないと・・・・」
ソファーから立ち上がって電話をかけようとした時にドアが開いた。
「スンハ!」
「産まれたの?」
「まだ・・まだだけど、お前も立ち会うか?」
「いいの?」
「ママがスンハにも、いて欲しいと言っている。」
「うん!」
スンジョはまだスンハは子供でも、きっとこの娘は冷静に判断してきょうだいの誕生を見る事が出来るだろうと信じていた。

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近すぎると見えない事があると分かっていたが、少し離れて父と母の二人の姿を見ていると、決して雄弁ではない父が言葉には表さなくてもその視線に母への愛がとても深くて大きくて温かく見えた。
スンハはそんな二人を見て『パパのような人と結婚をして、ママのように愛されたい』と思っていた。
物心ついた時には、同じ年頃の友達の家庭とはどこか違っている事は理解していた。
だからと言って自分にどうして父親がいないのかを知りたかったが、決して器用ではない母親が一生懸命にカフェで仕事をして少しでも時間が空けば自分の手を引いてよくバスに乗って出かけていた。
出掛ける時は『お弁当に何を持って行こう』と必ず聞き、スンハは『おかあさんの卵焼きが食べたい』と毎回言っていた。
本数の少ないバスを待つバス停で、しっかりと自分の手を繋いで『迷子にならないでね』と母が言えば『迷子になるのはいつもおかあさんだよ』と言って二人でよく笑っていた。
その様子が写真に写されていたのはハニもスンハも今も知らない事だが、スンジョはその写真に小さく写っている二人を見て仮名田主見つけ出すと決めていた事も二人は知らない。
母の出産に立ち会う父に何か声を掛けようと思ったが、何もいい言葉が思い浮かばない。
「パパ・・・」
「ん?」
「ママを・・・頼むね。」
マスクをしているスンジョがクスッと笑ったのが頬の筋肉で分かったが、スンハはおかしなことを言ってしまった事に苦笑いをした。
何も言わないで手を上げてハニの出産に立ち会うために分娩室に入って行った。
静かになった廊下のなぜか一番陰になるような場所にあるソファーに、スンハは荷物を持って緊張しながらきょうだいの誕生を待つことにした。
耳を澄ませても聞こえるはずがなく、空気の流れさえも分からないのに、父と母の声が聞こえるような気がした。
一時間に時間と経ってもまだドアは開かない。
自分の時とは違って、父が付いているのなら大丈夫だと思っても不安だった。
「そうだ・・・おばあちゃんとおじいちゃんたちに連絡をしないと・・・・」
ソファーから立ち上がって電話をかけようとした時にドアが開いた。
「スンハ!」
「産まれたの?」
「まだ・・まだだけど、お前も立ち会うか?」
「いいの?」
「ママがスンハにも、いて欲しいと言っている。」
「うん!」
スンジョはまだスンハは子供でも、きっとこの娘は冷静に判断してきょうだいの誕生を見る事が出来るだろうと信じていた。

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