スンジョが朝起きて朝食を食べてから、ハニの姿がリビングになかった。
日曜日の今日は昼食を取ってから二人で車に乗って、片道一時間の場所にある小さなショッピングモールに買い物に行く事になっていた。
確かに子供たちがこの家から出て行き二人だけの時間は増えたが、その分ハニはいつも何か忙しく動いていた。
「どこに行ったんだアイツは・・・・」
書斎にいる時は静かにして欲しいとは言ったが、昼の時間が過ぎても食事の準備もしないで、一人でどこかに黙って行くはずはない。
特別に空腹ではないが、冷蔵庫にある物で二人分の食材があれば、スンジョの方が手際よく食事を作る事が出来る。
ハニがカフェで忙しくしている時は代わって作った事はあったが、日曜日はカフェの定休日だから滅多にスンジョがキッチンに立つことはなかった。
手を洗っていると二階からハニが慌てた様子で降りて来た。
「どこにいたんだ?」
「スンリが小学校まで大切にしていたパパから貰った図鑑を送ってほしいと電話があったから探していたの。部屋にもないからどこに片付けたのかって聞いたら、二階の物置にしている部屋にあるって・・・・」
「だから、昼食も作らず探していたのか?」
「ごめんなさい・・・」
ハニが手に持っている物は、どう見ても図鑑には見えない。
チラッとスンジョがハニの手元を見たのに気が付いたのか、ハニはそれをスンジョに見せた。
「これ・・・私が産まれた時のカルテみたい・・ママが里帰り出産したと聞いた事もなかったし、私も聞く事がなかったけど、ここが診療所だった時にここで産まれたみたい。」
古いカルテの束は、紙が変色して埃っぽいが、手書きで書かれている文字はとても読みやすかった。
普通のカルテにはスナップ写真を一緒にする事はないが、ここの土地柄なのかそれとも特別に医師とハニの母親が親しかったのかは、それを聞くのはギドンも亡くなりハニの伯父夫婦も亡くなった今は出来なかった。
「お義母さんがハニをここに呼んだんだな。偶然とはいえハニはこの元診療所が気に入った理由がわかるよ。」
「ママが生きていた時は夏休みにどこにも旅行に連れて行けないから、ママが一人で連れて来られる実家に帰っていたけど、ママが亡くなってからはあまり来なくなって・・・・」
スンジョの見合いの事がなければ来なかった場所。
なぜここに来たのか不思議ではあるが、この場所がハニにとってもスンジョにとってもお互いの距離が一番近くなった場所ではあった。
「あれから20年・・・・20年が過ぎたんだね・・・」
「そうだな。ハニがスンリを妊娠してから20年が過ぎた。」
「ママにどうしても二人目の子供を産みたいと、毎晩眠る時にお願いをして・・・・スンジョ君に無理を言って喧嘩をしたね。」
「オレは喧嘩だと思っていないよ。ハニの身体に負担をかけてまではいらないと言っただけだ。」
「ママのお陰でスンリを妊娠する事が出来て・・・・」
「スンリは色々な意味で本当にオレたち家族を幸せにしてくれたよ。だからクリニックを閉鎖してもこの家だけは残しておきたい。」
家があれば子供は帰って来る。
スンハがそうだったように、傷ついた心を休める場所が家で、その傷を癒してくれるのは母であり父だ。
ハニの心の傷と身体の傷を治したのも、ここで生まれ育ったハニの母の想いがこの古い診療所だった家を覆っていたのかもしれない。
月曜日になったらハニはまたスンジョと一緒に、グミがいるペク家の家で過ごす一週間が始まる。

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日曜日の今日は昼食を取ってから二人で車に乗って、片道一時間の場所にある小さなショッピングモールに買い物に行く事になっていた。
確かに子供たちがこの家から出て行き二人だけの時間は増えたが、その分ハニはいつも何か忙しく動いていた。
「どこに行ったんだアイツは・・・・」
書斎にいる時は静かにして欲しいとは言ったが、昼の時間が過ぎても食事の準備もしないで、一人でどこかに黙って行くはずはない。
特別に空腹ではないが、冷蔵庫にある物で二人分の食材があれば、スンジョの方が手際よく食事を作る事が出来る。
ハニがカフェで忙しくしている時は代わって作った事はあったが、日曜日はカフェの定休日だから滅多にスンジョがキッチンに立つことはなかった。
手を洗っていると二階からハニが慌てた様子で降りて来た。
「どこにいたんだ?」
「スンリが小学校まで大切にしていたパパから貰った図鑑を送ってほしいと電話があったから探していたの。部屋にもないからどこに片付けたのかって聞いたら、二階の物置にしている部屋にあるって・・・・」
「だから、昼食も作らず探していたのか?」
「ごめんなさい・・・」
ハニが手に持っている物は、どう見ても図鑑には見えない。
チラッとスンジョがハニの手元を見たのに気が付いたのか、ハニはそれをスンジョに見せた。
「これ・・・私が産まれた時のカルテみたい・・ママが里帰り出産したと聞いた事もなかったし、私も聞く事がなかったけど、ここが診療所だった時にここで産まれたみたい。」
古いカルテの束は、紙が変色して埃っぽいが、手書きで書かれている文字はとても読みやすかった。
普通のカルテにはスナップ写真を一緒にする事はないが、ここの土地柄なのかそれとも特別に医師とハニの母親が親しかったのかは、それを聞くのはギドンも亡くなりハニの伯父夫婦も亡くなった今は出来なかった。
「お義母さんがハニをここに呼んだんだな。偶然とはいえハニはこの元診療所が気に入った理由がわかるよ。」
「ママが生きていた時は夏休みにどこにも旅行に連れて行けないから、ママが一人で連れて来られる実家に帰っていたけど、ママが亡くなってからはあまり来なくなって・・・・」
スンジョの見合いの事がなければ来なかった場所。
なぜここに来たのか不思議ではあるが、この場所がハニにとってもスンジョにとってもお互いの距離が一番近くなった場所ではあった。
「あれから20年・・・・20年が過ぎたんだね・・・」
「そうだな。ハニがスンリを妊娠してから20年が過ぎた。」
「ママにどうしても二人目の子供を産みたいと、毎晩眠る時にお願いをして・・・・スンジョ君に無理を言って喧嘩をしたね。」
「オレは喧嘩だと思っていないよ。ハニの身体に負担をかけてまではいらないと言っただけだ。」
「ママのお陰でスンリを妊娠する事が出来て・・・・」
「スンリは色々な意味で本当にオレたち家族を幸せにしてくれたよ。だからクリニックを閉鎖してもこの家だけは残しておきたい。」
家があれば子供は帰って来る。
スンハがそうだったように、傷ついた心を休める場所が家で、その傷を癒してくれるのは母であり父だ。
ハニの心の傷と身体の傷を治したのも、ここで生まれ育ったハニの母の想いがこの古い診療所だった家を覆っていたのかもしれない。
月曜日になったらハニはまたスンジョと一緒に、グミがいるペク家の家で過ごす一週間が始まる。

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