「あら、まぁ!」
ペク家にハニとギドンがスンジョと一緒に来た時に、グミが最初に発した言葉はこれだった。
『ハニちゃん、会いたかったわ』とか『寂しくて仕方がなかったの』などの言葉は聞かれなかった。
一応驚いたような表情と言葉だったが、ハニがスンジョと来ることをまるで知っていたと取る事が出来る雰囲気でもあった。
「親父もいる?」
「リビングにいるわよ。」
大騒ぎをするわけでもなく、グミはリビングにいるスチャンの方に行くと、玄関の方を向いてスチャンが立ち上がった。
「ギドン、ハニちゃん・・いらっしゃい。ささっ、こっちに座って。」
ペク家にいた時にいつもギドンが座っていた場所を開けると、スチャンも三人そろって来た事の意味を知っているようにも見えた。
ウンジョもなんとなく、この場にいてもいいようないない方がいいような顔をしていたが、二階の部屋に行こうともしなかった。
ギドンがスチャンの横に座り、その横にハニが座ろうとした時に、スンジョはハニの手を引いた。
「スンジョ君?」
小さくスンジョは頷くと、両親たちに向かって背筋を伸ばして姿勢を正した。
「親父・・そしてお袋・・ウンジョも聞いてほしい。」
自分の名前を呼ばれたウンジョは、自分も大人の話に加えてもらえると思って、少し嬉しそうな顔をして両親の間に座った。
「オレ・・・自分の気持ちを信じて決心した事がある。」
ハニの手を握っている手に力が加わった。
スンジョが『結婚』を口にするんだと、そのわずかな動きでハニは緊張して来た。
「ハニと結婚します。」
その言葉にグミもスチャンもウンジョも驚かなかった。
それが普通の事で、その言葉を待っていて、その言葉をスンジョが言ってくれることを信じていたようにも感じた。
ベランダの椅子に深く腰掛けて新聞を読んでいると、深入りのコーヒーを入れたマグカップがコトンと音をさせて置かれた。
「もう5年か・・・・」
「何が?」
「ハニと結婚してから。」
「そうだね・・でも恋人としてデートをした事がなかったから、デートをたくさんしたかったな。」
「春になる前に有給休暇を取ってたくさんデートをしようか?」
スンジョが自分の椅子の横にハニが座れるように椅子を引っ張ると、それがいつもそうしていたようにハニは静かに腰かけた。
「ダメだよ、そんな事に使ったら。デートはスンジョ君の仕事が休みの時でいいから、子供が生まれたら育休を取るって言ってくれたじゃない。」
「そうだな・・・オレらしくなくハニが妊娠したと言った時に、生まれたら育休を取って生まれたばかりの子供といたいと約束したからな。」
「本当にその言葉を信じていいの?」
「信じていいさ。春になればまた若い医師も増えるし、看護師だって増える。人手不足は変わらないけど、それくらい許してもらえるように仕事をして来たのだから。」
沢山の人に信じてもらえなくても、ハニだけが信じてくれればスンジョはそれでいいと思っていた。
ハニがいてくれたから、今の自分の幸せがある。
自分が信じていた物は、型にはまったような生活ではなく、家族を信じて行く事が幸せなのだと隣であくびをしているハニを見て、そう思っている事も一生ハニにも誰にも言わないでいようと考えていた。
そしてもうひとつハニにここ先も言わないで行こうと思っていることは、このマンションのハニたちが来る前の契約者がお袋だと言うこと。
子供部屋がふたつ用意されていたことは、双子をハニが宿したことを知ってからお袋に先見の目があるとは思わないが、お袋の作ったレールに乗ることになった今は、それさえも信じられるような気がしていた。

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ペク家にハニとギドンがスンジョと一緒に来た時に、グミが最初に発した言葉はこれだった。
『ハニちゃん、会いたかったわ』とか『寂しくて仕方がなかったの』などの言葉は聞かれなかった。
一応驚いたような表情と言葉だったが、ハニがスンジョと来ることをまるで知っていたと取る事が出来る雰囲気でもあった。
「親父もいる?」
「リビングにいるわよ。」
大騒ぎをするわけでもなく、グミはリビングにいるスチャンの方に行くと、玄関の方を向いてスチャンが立ち上がった。
「ギドン、ハニちゃん・・いらっしゃい。ささっ、こっちに座って。」
ペク家にいた時にいつもギドンが座っていた場所を開けると、スチャンも三人そろって来た事の意味を知っているようにも見えた。
ウンジョもなんとなく、この場にいてもいいようないない方がいいような顔をしていたが、二階の部屋に行こうともしなかった。
ギドンがスチャンの横に座り、その横にハニが座ろうとした時に、スンジョはハニの手を引いた。
「スンジョ君?」
小さくスンジョは頷くと、両親たちに向かって背筋を伸ばして姿勢を正した。
「親父・・そしてお袋・・ウンジョも聞いてほしい。」
自分の名前を呼ばれたウンジョは、自分も大人の話に加えてもらえると思って、少し嬉しそうな顔をして両親の間に座った。
「オレ・・・自分の気持ちを信じて決心した事がある。」
ハニの手を握っている手に力が加わった。
スンジョが『結婚』を口にするんだと、そのわずかな動きでハニは緊張して来た。
「ハニと結婚します。」
その言葉にグミもスチャンもウンジョも驚かなかった。
それが普通の事で、その言葉を待っていて、その言葉をスンジョが言ってくれることを信じていたようにも感じた。
ベランダの椅子に深く腰掛けて新聞を読んでいると、深入りのコーヒーを入れたマグカップがコトンと音をさせて置かれた。
「もう5年か・・・・」
「何が?」
「ハニと結婚してから。」
「そうだね・・でも恋人としてデートをした事がなかったから、デートをたくさんしたかったな。」
「春になる前に有給休暇を取ってたくさんデートをしようか?」
スンジョが自分の椅子の横にハニが座れるように椅子を引っ張ると、それがいつもそうしていたようにハニは静かに腰かけた。
「ダメだよ、そんな事に使ったら。デートはスンジョ君の仕事が休みの時でいいから、子供が生まれたら育休を取るって言ってくれたじゃない。」
「そうだな・・・オレらしくなくハニが妊娠したと言った時に、生まれたら育休を取って生まれたばかりの子供といたいと約束したからな。」
「本当にその言葉を信じていいの?」
「信じていいさ。春になればまた若い医師も増えるし、看護師だって増える。人手不足は変わらないけど、それくらい許してもらえるように仕事をして来たのだから。」
沢山の人に信じてもらえなくても、ハニだけが信じてくれればスンジョはそれでいいと思っていた。
ハニがいてくれたから、今の自分の幸せがある。
自分が信じていた物は、型にはまったような生活ではなく、家族を信じて行く事が幸せなのだと隣であくびをしているハニを見て、そう思っている事も一生ハニにも誰にも言わないでいようと考えていた。
そしてもうひとつハニにここ先も言わないで行こうと思っていることは、このマンションのハニたちが来る前の契約者がお袋だと言うこと。
子供部屋がふたつ用意されていたことは、双子をハニが宿したことを知ってからお袋に先見の目があるとは思わないが、お袋の作ったレールに乗ることになった今は、それさえも信じられるような気がしていた。

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