動かなくなった夫を見ても涙が出なかった。
頬に触れても、温もりも弾力も感じない。
夫と宿ったばかりの子供を同時に亡くした。
置き去りにされた感じがして、寂しさばかりが胸に広がった。
「奥さん、お子さんは小児科病棟に移しました。特に異常もなく、食欲もあるのでいつでも退院が出来ます。」
コクンと頷くハニの後姿はスンジョが手を伸ばさなくてもすぐ近くにあった。
数時間前は、夫の状況に驚いていたがふっくらとしていた。
車椅子に座っていると、こんなに小柄だったのかと思うくらいにやつれていた。
「ユシムの所に・・・・・先生、ユシムの様子を見て来てもいいですか?」
先生とハニは夫の事を呼んでいたのだろう。
自分の後ろにいる医師のスンジョに対して言っているのではない。
「先生・・・いつもみたいに、オレよりもユシムが大切かって聞いてくれないの?」
立ち上がろうとしたのか、ハニは中腰になるとフラッとした。
スンジョはハニの身体を抱き寄せて支えると、小刻みに足が震えてとても立っていられそうにもない。
「流産の処置をしたばかりだ。立ち上がったり歩いたりしては・・・」
スンジョの声に抑えていた感情が溢れ出し、ハニは話す事が出来ないくらいに大きな声でしがみ付くようにして泣き出した。
ハニには死というものが一番辛いものだ。
実の母親と夫を病気と事故で違うが、亡くしてしまったのだから。
「スンジョ君・・・スンジョ君・・・・スンジョ君・・・・」
ハニの細い腕がスンジョの体に巻き付けられるように、しっかりとしがみ付いて来た。
自分を見て怯えてばかりいたハニが、助けを求めるようにスンジョの身体に自分自身を預けて泣いている。
医師としてしてはいけないと思いながら、スンジョは自分の心を押さえられず、身体に廻されているハニの腕を感じながら自分もまたハニの身体に両腕を回してしっかりと抱き寄せた。
ハニが好きだ
ハニが愛おしい
何もいらないから、ただ守っていきたい
心の中でスンジョは、絶対に声にして出さないように何度も叫んだ。

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頬に触れても、温もりも弾力も感じない。
夫と宿ったばかりの子供を同時に亡くした。
置き去りにされた感じがして、寂しさばかりが胸に広がった。
「奥さん、お子さんは小児科病棟に移しました。特に異常もなく、食欲もあるのでいつでも退院が出来ます。」
コクンと頷くハニの後姿はスンジョが手を伸ばさなくてもすぐ近くにあった。
数時間前は、夫の状況に驚いていたがふっくらとしていた。
車椅子に座っていると、こんなに小柄だったのかと思うくらいにやつれていた。
「ユシムの所に・・・・・先生、ユシムの様子を見て来てもいいですか?」
先生とハニは夫の事を呼んでいたのだろう。
自分の後ろにいる医師のスンジョに対して言っているのではない。
「先生・・・いつもみたいに、オレよりもユシムが大切かって聞いてくれないの?」
立ち上がろうとしたのか、ハニは中腰になるとフラッとした。
スンジョはハニの身体を抱き寄せて支えると、小刻みに足が震えてとても立っていられそうにもない。
「流産の処置をしたばかりだ。立ち上がったり歩いたりしては・・・」
スンジョの声に抑えていた感情が溢れ出し、ハニは話す事が出来ないくらいに大きな声でしがみ付くようにして泣き出した。
ハニには死というものが一番辛いものだ。
実の母親と夫を病気と事故で違うが、亡くしてしまったのだから。
「スンジョ君・・・スンジョ君・・・・スンジョ君・・・・」
ハニの細い腕がスンジョの体に巻き付けられるように、しっかりとしがみ付いて来た。
自分を見て怯えてばかりいたハニが、助けを求めるようにスンジョの身体に自分自身を預けて泣いている。
医師としてしてはいけないと思いながら、スンジョは自分の心を押さえられず、身体に廻されているハニの腕を感じながら自分もまたハニの身体に両腕を回してしっかりと抱き寄せた。
ハニが好きだ
ハニが愛おしい
何もいらないから、ただ守っていきたい
心の中でスンジョは、絶対に声にして出さないように何度も叫んだ。

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