プルルル・・・・♫
「はい、外科病棟です・・・・ペク先生ですか?今、回診に行ってます・・・はい・・えっ・・そうですか分かりました。すぐに戻って来ると思いますので、そう伝えます。」
誰もいない詰め所にいたのはギョルだけだった。
真剣に愛したハニへの想いを完全に吹っ切れたわけではなかったが、ハニが選んだスンジョを同じ職場で働く医師として尊敬し、年齢もさほど変わらないのに冷静な判断が出来るその余裕を羨ましく思っていた。
「ギョル、どうしたの?」
「ヒスン・・・ペク先生は一緒じゃなかったのか?」
「事故で救急搬送されて来ると連絡があって、オペ室に向かったの。」
「もう中に入ったのか?」
「入ったと思うわ。そんなにひどい怪我ではないから2時間もすれば戻って来られると思うわ。」
困った顔をして腕時計を見ているギョルを、ヒスンは不思議そうに見ていた。
「ハニが、産科に来たからペク先生に来るようにと連絡があった。」
昨日の申し送りの時は変わりなく、ヒスンとヘウンから送られて来た子供の写真を見て話をしていた。
予定日より早く生まれるとは、ヒスンは勿論ギョルも思っていなかったし、夫であるスンジョもそんな事に気が付いていないはずだった。
「ヒスン、一人で大丈夫だと思うけど何かあったら連絡してくれるか?」
そう言うとギョルはスンジョが入っているオペ室に向かった。
ハニはグミに付き添ってもらい病院に付いてからすぐに陣痛室から分娩室に移された。
『すぐにには生まれます』と看護師から告げられてすでに一時間が過ぎていた。
「ママ、ギドンと来たけど・・・・生まれた?」
首を横に振って、予想よりも時間が掛かっているのを心配そうな顔をしていた。
「スンジョにも連絡をしたのだけど、事故で運ばれた人がいるみたいで・・もうすぐとは言われているけど・・・・」
微かに声が聞こえたような気がして3人はドアの方を見た。
靴音が近づいてくるとドアが開き看護師が、3人を見てニコリと笑った。
「おめでとうございます、男の子が生まれました。」
手を叩いて喜ぶギドンとスチャンとは対照的に、グミは真剣な顔をして看護師に近づいた。
「男の子ですって?」
噛みつかれそうにグイっと近づいたグミに引き気味に冷静に看護師は対応した。
「ペク先生とよく似た男の子です。」
一瞬ガッカリした顔をしたグミは、分娩室に駆け込んでいくスンジョの表情を見てニコッと笑った。
男の子でも女の子でもスンジョにはどっちでもいいのよね。
毎日がつまらなそうにしていたあの子が、一人の普通の女の子と出会って毎日を楽しく過ごせるようになって本当に良かったと思うわ。
「オ看護師、ペク先生が見えたみたいですよ。」
ハニに付き添っていた看護師がそう告げると、入れ替わるようにスンジョがハニのそばに近づいた。
「ごめん、立ち会えなくて。」
「ううん・・予定日より早かったから。」
新生児用のベッドで眠る生まれたばかりの息子の顔を見ながら、スンジョはまた一つ守りたいと思える人が増えた事に幸せを感じていた。
「スンジョ君と似ているって言われたけど、よく分からないね。でもね、私と似ていない方が頭のいい子に育つよね。」
「頭がいいとかはそれほど生きて行く上では重要じゃない。素直になれる事、嬉しい、悲しいという感情を自分で認める事の方が重要だ。ハニがオレに教えてくれた事が、人として一番必要な事だと思うよ。オレに取ってハニが運命の人だと思える相手を見つけられるよう、スンハニもこの子にもそう願いたい。」
「この子の名前・・・スンジョ君が考えてくれたのだよね?」
「ああ・・・スンリ(勝利)だ。」
「スンリ・・・・どうしてその名前にしたの?」
深い意味はないが、もしかしてそれが一番深い意味なのかもしれない。
「競争に勝利するのじゃなく、自分自身の迷いに負けないで勝利できるようにという願いだよ。」
ハニがスンジョに教えてくれた事は、人として一番大切な事。
冷めていた高校時代まではハニのような人が、目の前に『運命の人』として現れて来るのを、待っていたのかもしれない。
スンハとスンリという子供を育てながら、運命の相手のハニと幸せで過ごしていく計画をスンジョの頭の中に組み込まれ始めている。

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「はい、外科病棟です・・・・ペク先生ですか?今、回診に行ってます・・・はい・・えっ・・そうですか分かりました。すぐに戻って来ると思いますので、そう伝えます。」
誰もいない詰め所にいたのはギョルだけだった。
真剣に愛したハニへの想いを完全に吹っ切れたわけではなかったが、ハニが選んだスンジョを同じ職場で働く医師として尊敬し、年齢もさほど変わらないのに冷静な判断が出来るその余裕を羨ましく思っていた。
「ギョル、どうしたの?」
「ヒスン・・・ペク先生は一緒じゃなかったのか?」
「事故で救急搬送されて来ると連絡があって、オペ室に向かったの。」
「もう中に入ったのか?」
「入ったと思うわ。そんなにひどい怪我ではないから2時間もすれば戻って来られると思うわ。」
困った顔をして腕時計を見ているギョルを、ヒスンは不思議そうに見ていた。
「ハニが、産科に来たからペク先生に来るようにと連絡があった。」
昨日の申し送りの時は変わりなく、ヒスンとヘウンから送られて来た子供の写真を見て話をしていた。
予定日より早く生まれるとは、ヒスンは勿論ギョルも思っていなかったし、夫であるスンジョもそんな事に気が付いていないはずだった。
「ヒスン、一人で大丈夫だと思うけど何かあったら連絡してくれるか?」
そう言うとギョルはスンジョが入っているオペ室に向かった。
ハニはグミに付き添ってもらい病院に付いてからすぐに陣痛室から分娩室に移された。
『すぐにには生まれます』と看護師から告げられてすでに一時間が過ぎていた。
「ママ、ギドンと来たけど・・・・生まれた?」
首を横に振って、予想よりも時間が掛かっているのを心配そうな顔をしていた。
「スンジョにも連絡をしたのだけど、事故で運ばれた人がいるみたいで・・もうすぐとは言われているけど・・・・」
微かに声が聞こえたような気がして3人はドアの方を見た。
靴音が近づいてくるとドアが開き看護師が、3人を見てニコリと笑った。
「おめでとうございます、男の子が生まれました。」
手を叩いて喜ぶギドンとスチャンとは対照的に、グミは真剣な顔をして看護師に近づいた。
「男の子ですって?」
噛みつかれそうにグイっと近づいたグミに引き気味に冷静に看護師は対応した。
「ペク先生とよく似た男の子です。」
一瞬ガッカリした顔をしたグミは、分娩室に駆け込んでいくスンジョの表情を見てニコッと笑った。
男の子でも女の子でもスンジョにはどっちでもいいのよね。
毎日がつまらなそうにしていたあの子が、一人の普通の女の子と出会って毎日を楽しく過ごせるようになって本当に良かったと思うわ。
「オ看護師、ペク先生が見えたみたいですよ。」
ハニに付き添っていた看護師がそう告げると、入れ替わるようにスンジョがハニのそばに近づいた。
「ごめん、立ち会えなくて。」
「ううん・・予定日より早かったから。」
新生児用のベッドで眠る生まれたばかりの息子の顔を見ながら、スンジョはまた一つ守りたいと思える人が増えた事に幸せを感じていた。
「スンジョ君と似ているって言われたけど、よく分からないね。でもね、私と似ていない方が頭のいい子に育つよね。」
「頭がいいとかはそれほど生きて行く上では重要じゃない。素直になれる事、嬉しい、悲しいという感情を自分で認める事の方が重要だ。ハニがオレに教えてくれた事が、人として一番必要な事だと思うよ。オレに取ってハニが運命の人だと思える相手を見つけられるよう、スンハニもこの子にもそう願いたい。」
「この子の名前・・・スンジョ君が考えてくれたのだよね?」
「ああ・・・スンリ(勝利)だ。」
「スンリ・・・・どうしてその名前にしたの?」
深い意味はないが、もしかしてそれが一番深い意味なのかもしれない。
「競争に勝利するのじゃなく、自分自身の迷いに負けないで勝利できるようにという願いだよ。」
ハニがスンジョに教えてくれた事は、人として一番大切な事。
冷めていた高校時代まではハニのような人が、目の前に『運命の人』として現れて来るのを、待っていたのかもしれない。
スンハとスンリという子供を育てながら、運命の相手のハニと幸せで過ごしていく計画をスンジョの頭の中に組み込まれ始めている。

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