気が付けば、ハニがこの家に来てから20年が経っていた。
お互いに一度は別の相手との結婚生活をしていた時期があったが、この家で聞こえるハニの声が心地よく感じる事が出来たのは、ハニがオレにとって隣にいつもいなければいけない大切な人だと言う事だ。
今オレの目の前で遊んでいる4人の子供達は、とても仲が良くてスンハが弟のビクトルと双子の妹と弟の世話をしてくれる。
ヘラとの結婚生活では、オレの子供を持つ事は出来なかったが、それはそれで良かったのかもしれない。
あの時の状態で、もし空がオレの子供として産まれていたら、お互いに愛情の無い関係の両親のもとで育ったら、可哀想な子供になってしまう。
ペク・スチャンとファン・グミはお互いに信頼し愛し合っている夫婦で、その子供としてオレとウンジョがいた。
そう言う両親の間で育ったから、人に興味を持たないまま成長したオレが、ハニと出会って人を信じ愛する事に気が付いたのは割と早い時期だった。
ハニだから、オレは人間らしい感情を持つ事が出来たのかもしれない。
長い間空席だった場所は、ハニがいなければいけない場所なのかもしれない。
「先生アッパ。」
スンハはまだ【先生アッパ】とスンジョの事を呼ぶ。
それを止めさせることは、スンジョにも勿論ハニにも出来ない。
「ん?」
「夏休みになったら、イギリスのおばあちゃんの所に行ってもいい?」
「いいよ。オンマと一緒に行くのか?」
「ううん、スンハ一人で行く。」
琥珀色の明るい大きな瞳はハニの瞳の様に見えるし、ダニエルがハニを大切にして欲しいと言っているようにも見える。
「スンジョ君、スンハが中学はイギリスの学校に行きたいって・・・」
「イギリスの?」
「うん、メアリーおばさんが行っていた学校に行きたいの。」
双子のスンミとスンスクが産まれた年の夏休みに、ビクトルと一緒にイギリスのアンダーソン家で休暇を取った事があった。
その時に、メアリーの母校に一緒に行って来たと嬉しそうに話していた。
「スンハは、英語が話せるし、行きたいのなら言ってもいいよ。」
「でも・・・」
ハニはスンハが一人で行く事に、あまり気乗りがしない。
自分の人生でふたりの大切な人が去ったから。
「行かせて・・・メアリーおばさんの行った学校を卒業したら、イギリスの大学を出て医者になるの。」
「医者になりたいのなら、この国の大学でも・・・・」
なんとか引き留めようとしているハニを、スンジョはそれ以上言わないようにと止めた。
「いいよ。」
スンジョがスンハを引き留めないのは、スンハが言っている事はダニエルが言っている事だと思ったから。
彼は、貧しい孤児院で育ったから、大学に行きたい気持ちはあっても断念した。
もし、イギリスに行くジニに付いて行ったらスンハと同じように未来を見ていたかもしれない。
最後のあの日に言ったダニエルの言葉と、覚悟を決めた瞳を忘れる事が今でも出来ない。
『ハニには絶対に言わないで欲しい。あんたは、オリエントコーポレーションの関係の人だった。今は、縁が切れていると思っているかもしれないが、恨んでいる人がいる。もうオレは自分の夢を掴んだ。一生愛して行ける女性を見つけて、その女性との間にふたりの子供を持つ事が出来た。でも、その女性の心には、あんたしかいない。オレは、オレの想いを子供に伝えたから、ハニをあんたが幸せにして欲しい。ハニの幸せは、オレの願いだから。オレがもし命を亡くしたのなら、それは身体が無くなるだけで、心は永遠にハニと子供達と共にいる。いなくなるのじゃなくて、母親の元に帰ると思って欲しい。両親にも、ハニをあんたと一緒になる事には反対しないように頼んであるから』
最後の最後まで、ダニエルはハニを愛していた。
彼の為に、可愛い子供とハニを、ずっと大切にして行きたいから、スンハの夢を叶えてあげたい。
今でも、ダニエルはオレの隣で一緒にハニとスンハとビクトルを見ているような気がする。

人気ブログランキングへ
お互いに一度は別の相手との結婚生活をしていた時期があったが、この家で聞こえるハニの声が心地よく感じる事が出来たのは、ハニがオレにとって隣にいつもいなければいけない大切な人だと言う事だ。
今オレの目の前で遊んでいる4人の子供達は、とても仲が良くてスンハが弟のビクトルと双子の妹と弟の世話をしてくれる。
ヘラとの結婚生活では、オレの子供を持つ事は出来なかったが、それはそれで良かったのかもしれない。
あの時の状態で、もし空がオレの子供として産まれていたら、お互いに愛情の無い関係の両親のもとで育ったら、可哀想な子供になってしまう。
ペク・スチャンとファン・グミはお互いに信頼し愛し合っている夫婦で、その子供としてオレとウンジョがいた。
そう言う両親の間で育ったから、人に興味を持たないまま成長したオレが、ハニと出会って人を信じ愛する事に気が付いたのは割と早い時期だった。
ハニだから、オレは人間らしい感情を持つ事が出来たのかもしれない。
長い間空席だった場所は、ハニがいなければいけない場所なのかもしれない。
「先生アッパ。」
スンハはまだ【先生アッパ】とスンジョの事を呼ぶ。
それを止めさせることは、スンジョにも勿論ハニにも出来ない。
「ん?」
「夏休みになったら、イギリスのおばあちゃんの所に行ってもいい?」
「いいよ。オンマと一緒に行くのか?」
「ううん、スンハ一人で行く。」
琥珀色の明るい大きな瞳はハニの瞳の様に見えるし、ダニエルがハニを大切にして欲しいと言っているようにも見える。
「スンジョ君、スンハが中学はイギリスの学校に行きたいって・・・」
「イギリスの?」
「うん、メアリーおばさんが行っていた学校に行きたいの。」
双子のスンミとスンスクが産まれた年の夏休みに、ビクトルと一緒にイギリスのアンダーソン家で休暇を取った事があった。
その時に、メアリーの母校に一緒に行って来たと嬉しそうに話していた。
「スンハは、英語が話せるし、行きたいのなら言ってもいいよ。」
「でも・・・」
ハニはスンハが一人で行く事に、あまり気乗りがしない。
自分の人生でふたりの大切な人が去ったから。
「行かせて・・・メアリーおばさんの行った学校を卒業したら、イギリスの大学を出て医者になるの。」
「医者になりたいのなら、この国の大学でも・・・・」
なんとか引き留めようとしているハニを、スンジョはそれ以上言わないようにと止めた。
「いいよ。」
スンジョがスンハを引き留めないのは、スンハが言っている事はダニエルが言っている事だと思ったから。
彼は、貧しい孤児院で育ったから、大学に行きたい気持ちはあっても断念した。
もし、イギリスに行くジニに付いて行ったらスンハと同じように未来を見ていたかもしれない。
最後のあの日に言ったダニエルの言葉と、覚悟を決めた瞳を忘れる事が今でも出来ない。
『ハニには絶対に言わないで欲しい。あんたは、オリエントコーポレーションの関係の人だった。今は、縁が切れていると思っているかもしれないが、恨んでいる人がいる。もうオレは自分の夢を掴んだ。一生愛して行ける女性を見つけて、その女性との間にふたりの子供を持つ事が出来た。でも、その女性の心には、あんたしかいない。オレは、オレの想いを子供に伝えたから、ハニをあんたが幸せにして欲しい。ハニの幸せは、オレの願いだから。オレがもし命を亡くしたのなら、それは身体が無くなるだけで、心は永遠にハニと子供達と共にいる。いなくなるのじゃなくて、母親の元に帰ると思って欲しい。両親にも、ハニをあんたと一緒になる事には反対しないように頼んであるから』
最後の最後まで、ダニエルはハニを愛していた。
彼の為に、可愛い子供とハニを、ずっと大切にして行きたいから、スンハの夢を叶えてあげたい。
今でも、ダニエルはオレの隣で一緒にハニとスンハとビクトルを見ているような気がする。

人気ブログランキングへ