ジュングはスンに会わずに帰ることにした。
今のスンは、木に登ったり川に入って魚を手づかみして遊んだり、薬草を一緒に摘んでいたジュングの子供ではない。
宮殿での生活に馴染んで、妃を迎えた世子として座っているその姿は、そこが居場所なのだと思うと、ジュングの息子として過ごしていたスンはもうこの世にはいない。
絹の服は柔らかくても、体になじまない。

世子様・・・末永くお幸せに・・・
王妃様・・・暖かく過ごした日々を与えてくださりありがとうございます。記憶が戻って自分の所からいなくなることはわかっていました。お会いして美しく輝くその御姿は、王様の隣りにいる場所が王妃様の居場所だとわかりました。

ジュングは正殿を振り返り深く頭を下げて、隣りにいる妻のジュリの手を取って門を出た。


「父さんが・・・帰ってしまった・・・」
側仕えの内官に、ジュングが帰ったことを知らされると、スンリはがっくりと肩を落とした。
「世子様、王様が時々はお会いできるようにしてくださっています。」
それは知っていたが、島に静養のために訪れるときは身分がわからないように着替えていたが、正装している自分の姿を見てほしかった。
「世子様・・・」
「疲れたから寝たい・・・」
「すぐにお休みの用意をします。」
東宮殿付きの女官が急いで寝所を整えるために動くと、妃を迎えた事に気が付き向かい側に座っている世子妃が緊張した顔で見ていた。

婚礼の儀からの解放と、ジュングと話ができなかったことで一気に疲れが出たが、今まで通り人払いをしてゴロンと部屋の中で寝転ぶことができない。

「妃はまだ13歳だろ?」
「今日で14歳になりました。入宮が決まってから教えを受けていますので、こんな私でも心得ています。」
「そうじゃない・・・・そうじゃないけど・・・」
これからは一人ではない。
いずれは王になるのだから、自分の意志で自由にできないことも増えてくる。
でも、ここが自分のほんとうの居場所で、生まれたときに過ごしていたあの島は、ただのふるさとの一つにしかならない。



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