部屋の外に聞こえるハニの笑い声。
声が聞こえるだけで、公務の疲れなど忘れてしまうほどに癒やされる。
戸が開くと少女のような笑みで立ち上がって、スンジョを迎え入れた。
スンジョは心の中で『独狐尚宮がいなければ』と言っていた言葉が伝わったのか一言だけ告げて部屋を出ていった。
「それは何だ?」
文机の横に置かれている部屋に似つかわしくない行李が視界に入ると見当はついたが、いつもなら聞かれる前に話すハニが言わないことに、妙に気になった。
「キョンに渡す物です。」
「キョンに?」
王族が使う物にしては粗末に見える行李。
その行李にスンジョが何か言うのかとハニはドキドキした。
「平安寺の僧侶になるのに、贅沢はいけないと思い・・・王族だから・・いけないですか?」
「いや・・・恵景妃は知っているのか?」
「はい・・・今日、部屋まで来てくださって・・・」
「部屋に来てくれた?」
驚きだった。
位の下の恵景妃から王妃であるハニに挨拶に来るのは珍しいことではないが、正室になれると思っていた矢先にハニが自ら宮殿の自分のいるべき場所に帰きた事が、ハニを避けるきっかけになり儀礼的な挨拶以外顔を合わせ無いようにしていた。
キョンの妹が生まれる頃に、継母として引取世話をしていた。
「ええ、来てくださいました。実は・・・この暑さで昼間に具合が悪くなって見舞いに来てくれました。その時に、この行李を見てもらったの。とても喜んでくれたわ。今まで会話らしい会話をしたことはないけど、キョンのことでお互い子を思う母の気持ちで通じるものがあって、これからはお互いに助け合って行くことにしようと話したのよ。」
ハニは子供の頃からそうだった。
苦手と思っていても、自分でそれを乗り越える。
だが、夏の暑さの克服はできず、今年の夏は今までにないくらいに暑い。
御医からハニの貧血も改善の兆しがあり、血の巡りも問題ないと言ってもいいくらいになっていると聞いていたが、夏の暑さはそれでもやはり辛いだろう。
「今年の夏は暑い。まだ上奏書がたくさん残っているから一緒にはい行けないけど、キョンを送り出したら涼しい環境の夏の別宮で静養に行くと良い。」
ハニはスンジョのその提案に、少し迷ったように俯いて首を横に振りポツリと呟いた。
「それは無理かもしれない・・・・御医はしばらくは安静にするようにと・・・・」

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声が聞こえるだけで、公務の疲れなど忘れてしまうほどに癒やされる。
戸が開くと少女のような笑みで立ち上がって、スンジョを迎え入れた。
スンジョは心の中で『独狐尚宮がいなければ』と言っていた言葉が伝わったのか一言だけ告げて部屋を出ていった。
「それは何だ?」
文机の横に置かれている部屋に似つかわしくない行李が視界に入ると見当はついたが、いつもなら聞かれる前に話すハニが言わないことに、妙に気になった。
「キョンに渡す物です。」
「キョンに?」
王族が使う物にしては粗末に見える行李。
その行李にスンジョが何か言うのかとハニはドキドキした。
「平安寺の僧侶になるのに、贅沢はいけないと思い・・・王族だから・・いけないですか?」
「いや・・・恵景妃は知っているのか?」
「はい・・・今日、部屋まで来てくださって・・・」
「部屋に来てくれた?」
驚きだった。
位の下の恵景妃から王妃であるハニに挨拶に来るのは珍しいことではないが、正室になれると思っていた矢先にハニが自ら宮殿の自分のいるべき場所に帰きた事が、ハニを避けるきっかけになり儀礼的な挨拶以外顔を合わせ無いようにしていた。
キョンの妹が生まれる頃に、継母として引取世話をしていた。
「ええ、来てくださいました。実は・・・この暑さで昼間に具合が悪くなって見舞いに来てくれました。その時に、この行李を見てもらったの。とても喜んでくれたわ。今まで会話らしい会話をしたことはないけど、キョンのことでお互い子を思う母の気持ちで通じるものがあって、これからはお互いに助け合って行くことにしようと話したのよ。」
ハニは子供の頃からそうだった。
苦手と思っていても、自分でそれを乗り越える。
だが、夏の暑さの克服はできず、今年の夏は今までにないくらいに暑い。
御医からハニの貧血も改善の兆しがあり、血の巡りも問題ないと言ってもいいくらいになっていると聞いていたが、夏の暑さはそれでもやはり辛いだろう。
「今年の夏は暑い。まだ上奏書がたくさん残っているから一緒にはい行けないけど、キョンを送り出したら涼しい環境の夏の別宮で静養に行くと良い。」
ハニはスンジョのその提案に、少し迷ったように俯いて首を横に振りポツリと呟いた。
「それは無理かもしれない・・・・御医はしばらくは安静にするようにと・・・・」

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