「話は聞きました。娘が行方不明になっても表立って探すこともできず、皇室から時々報告はあって創作の状況は分かっていても、行方不明だった時に懐妊中でも娘は県主しか生んでおらず、皇位継承者である皇子のために側室を迎えることになった時に、それはもう生存を諦めよと思っていた・・・」
身分の上下をわきまえている宰相が、世子嬪を救った礼ではなく、娘を救ってくれた礼を親の気持ちを言葉にしていた。
「ヒュルさん・・」
ギドンは使用人を呼ぶと、盆をジュングの前に置いた。
「ジュングさんは行商人をされているとお聞きしました。」
「はい。」
「礼の品にこんな物は失礼かと思いますが、行商をされているあなたの目から見ると価値がわかるかと思います。」
ジュングは、一目見ただけで木綿のその生地の価値がわかった。
漢陽でしか見ることはなく、ましてや自分たちが使うことのない上質な木綿の生地だった。
「絹よりも木綿の方が服を仕立てるにも都合の良いだろう。それを自分の住む地に持ち帰っても良い値で売れる。」
ゴワゴワとした木綿の生地で作った服を母は着ていた。
破れたら何度も直していた。
もうあれ以上は直しようがないくらいに生地は古びれていた。
だが・・・・自分にもらう価値があるのだろうか。
「旦那様、これは頂けません。頂くことはできません。」
「そうだな・・・・世子嬪様とスン様を無事にここまで連れてきてくださったのだから・・・木綿の生地と僅かばかりだが銀子も用意させていただいた。」
ギドンは小さな包をジュングの前に置いて、ゆっくりと開いた。
「こんなに・・・・頂けないです。自分のせいで世子嬪様は苦労をなさって・・・貧しい家で満足な食事も摂れず・・・スン様も・・・」
ギドンは感謝の気持の表した笑みをジュングに向けた。
「スン様が申しておられた。『父さんは、海で泳ぐことも木に登ることも、狩りをすることも教えてくれた。いつも怪我をしないように注意をしないといけないと教えてくれた。僕が大人になったら母さんを守れる男になるように』と・・・宮殿で育っていたら知ることがないことを教えてくださったことは世子邸下にお伝えします。自然の中で覚えたことはいつかはスン様にも役立つことでしょう。」
いつも一緒にいて、遊んでほしいとせがんでいたスンが可愛くて離れがたいが、いるべき場所に帰っていくのを見るのは自分のこれからの生活の励みになる。
「受け取ってくれないか?」
この人は貧しい人だからと木綿の生地を用意したのではないし、銀子も受け取る側が困らない程度の数を用意してくれた。
身分の低い自分が絹を貰っても使うことはもちろん、売ることもできないから使いやすい木綿の生地を用意してくれた。
「ありがとうございます。」
ジュングはこれ以上拒んではいけないと思い手をついて、額を床に付けて礼の言葉を述べた。

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身分の上下をわきまえている宰相が、世子嬪を救った礼ではなく、娘を救ってくれた礼を親の気持ちを言葉にしていた。
「ヒュルさん・・」
ギドンは使用人を呼ぶと、盆をジュングの前に置いた。
「ジュングさんは行商人をされているとお聞きしました。」
「はい。」
「礼の品にこんな物は失礼かと思いますが、行商をされているあなたの目から見ると価値がわかるかと思います。」
ジュングは、一目見ただけで木綿のその生地の価値がわかった。
漢陽でしか見ることはなく、ましてや自分たちが使うことのない上質な木綿の生地だった。
「絹よりも木綿の方が服を仕立てるにも都合の良いだろう。それを自分の住む地に持ち帰っても良い値で売れる。」
ゴワゴワとした木綿の生地で作った服を母は着ていた。
破れたら何度も直していた。
もうあれ以上は直しようがないくらいに生地は古びれていた。
だが・・・・自分にもらう価値があるのだろうか。
「旦那様、これは頂けません。頂くことはできません。」
「そうだな・・・・世子嬪様とスン様を無事にここまで連れてきてくださったのだから・・・木綿の生地と僅かばかりだが銀子も用意させていただいた。」
ギドンは小さな包をジュングの前に置いて、ゆっくりと開いた。
「こんなに・・・・頂けないです。自分のせいで世子嬪様は苦労をなさって・・・貧しい家で満足な食事も摂れず・・・スン様も・・・」
ギドンは感謝の気持の表した笑みをジュングに向けた。
「スン様が申しておられた。『父さんは、海で泳ぐことも木に登ることも、狩りをすることも教えてくれた。いつも怪我をしないように注意をしないといけないと教えてくれた。僕が大人になったら母さんを守れる男になるように』と・・・宮殿で育っていたら知ることがないことを教えてくださったことは世子邸下にお伝えします。自然の中で覚えたことはいつかはスン様にも役立つことでしょう。」
いつも一緒にいて、遊んでほしいとせがんでいたスンが可愛くて離れがたいが、いるべき場所に帰っていくのを見るのは自分のこれからの生活の励みになる。
「受け取ってくれないか?」
この人は貧しい人だからと木綿の生地を用意したのではないし、銀子も受け取る側が困らない程度の数を用意してくれた。
身分の低い自分が絹を貰っても使うことはもちろん、売ることもできないから使いやすい木綿の生地を用意してくれた。
「ありがとうございます。」
ジュングはこれ以上拒んではいけないと思い手をついて、額を床に付けて礼の言葉を述べた。

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