ハニは生まれ育った屋敷に向かって歩きながら、宮殿に入れなかった時のことを思い出し涙が出そういなっていた。
実家に戻ってももしかしたら門を入ることだ出来なかったらどうしよう。
仕えていた使用人も知っている人はいないかもしれない。
10歳で入宮するまで、お父様が帰ってくるのを一緒に待ってくれていた乳母は今もいるのだろうか。
滅多に弱音を口にすることのないスンが、半泣き顔でしゃがんでしまい本当に歩けないようだった。
「媽媽・・・食事をして少し休まれていますが、島を出てから長い時間体を休ませていないので、幼いスン様は疲れていらっしゃると・・・・」
もう少しなのに・・・もう少しで体を休めることができる場所に変える事ができるのに・・・
「スン様・・・私が背負っていきます。」
ジュングが屈むとスンは慣れたようにその背中にヒョイッと乗った。
生まれてからずっと父と慕ってきた人だ。
島で薬草を取りに行くときも手をつなぎ、疲れて帰ってくる時には背負われていた。
記憶を無くしていたこととはいえ二人には申し訳ない気持ちで、父親である世子に会えなかったことと合わせて悲しくて苦しくて、この先の人生を諦めなければいけないのかという気持ちもあった。
「この屋敷よ。」
変わっていなかった。
嫁いでからも時々帰ってきたのに、今ほど懐かしく暖かく思える時はなかった。
「スン・・・・お祖父様とお祖母様のお屋敷よ。」
ジュングの背中から降りると、ニコッと笑った。
その時、庭に出てきた一人の使用人が、ハ二立ちに気づき近づいた。
「お嬢様・・・・」
「ばあや・・・」
その人はハ二の乳母だった。
「生きていらしたのですね・・・・・この子は・・・」
「私の子供です・・・スン、ご挨拶なさい・・・母の乳母よ。」
スンは緊張しながら、丁寧に頭を下げてお辞儀をした。
「初めまして、スンです。」
「頭をお上げください。私等に頭を下げたら勿体のうございます。」
「お父様とお母様は・・・・」
乳母は涙を拭って頷くと、屋敷の中に入るようにハ二の背中に手を当てると、後ろにいたジュングにも一緒に来るように声をかけた。
「貴方もどうぞ一緒に入ってください。」
「ジュング、両親に紹介したいので一緒に・・・・」
「あ・・・ぁあ・・・」
もう自分の思いは叶わないが、どんな顔をしてハ二の両親に会えばいいのかわからなかった。
この三年、どう過ごしていたのか説明をうまく出来なければ、どんな罪に問われるのか見当もつかなかった。

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実家に戻ってももしかしたら門を入ることだ出来なかったらどうしよう。
仕えていた使用人も知っている人はいないかもしれない。
10歳で入宮するまで、お父様が帰ってくるのを一緒に待ってくれていた乳母は今もいるのだろうか。
滅多に弱音を口にすることのないスンが、半泣き顔でしゃがんでしまい本当に歩けないようだった。
「媽媽・・・食事をして少し休まれていますが、島を出てから長い時間体を休ませていないので、幼いスン様は疲れていらっしゃると・・・・」
もう少しなのに・・・もう少しで体を休めることができる場所に変える事ができるのに・・・
「スン様・・・私が背負っていきます。」
ジュングが屈むとスンは慣れたようにその背中にヒョイッと乗った。
生まれてからずっと父と慕ってきた人だ。
島で薬草を取りに行くときも手をつなぎ、疲れて帰ってくる時には背負われていた。
記憶を無くしていたこととはいえ二人には申し訳ない気持ちで、父親である世子に会えなかったことと合わせて悲しくて苦しくて、この先の人生を諦めなければいけないのかという気持ちもあった。
「この屋敷よ。」
変わっていなかった。
嫁いでからも時々帰ってきたのに、今ほど懐かしく暖かく思える時はなかった。
「スン・・・・お祖父様とお祖母様のお屋敷よ。」
ジュングの背中から降りると、ニコッと笑った。
その時、庭に出てきた一人の使用人が、ハ二立ちに気づき近づいた。
「お嬢様・・・・」
「ばあや・・・」
その人はハ二の乳母だった。
「生きていらしたのですね・・・・・この子は・・・」
「私の子供です・・・スン、ご挨拶なさい・・・母の乳母よ。」
スンは緊張しながら、丁寧に頭を下げてお辞儀をした。
「初めまして、スンです。」
「頭をお上げください。私等に頭を下げたら勿体のうございます。」
「お父様とお母様は・・・・」
乳母は涙を拭って頷くと、屋敷の中に入るようにハ二の背中に手を当てると、後ろにいたジュングにも一緒に来るように声をかけた。
「貴方もどうぞ一緒に入ってください。」
「ジュング、両親に紹介したいので一緒に・・・・」
「あ・・・ぁあ・・・」
もう自分の思いは叶わないが、どんな顔をしてハ二の両親に会えばいいのかわからなかった。
この三年、どう過ごしていたのか説明をうまく出来なければ、どんな罪に問われるのか見当もつかなかった。

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