それが私だ・・・・
「パパ、その子供って私だよね?」
「いや・・・違うよ。その子は生まれなかったというか生まなかった。」
「どうして?」
父の表情が曇って聞いてはいけないことなのかもしれないと思ったが、それを聞きたい気持ちの方が強かった。
「強い薬で治療中だったからね・・・担当の医師に相談して、今回はあきらめようという事になった。ママは泣いていたよ。この先いつまで生きられるかわからないのに、母親になることができないのは辛いって・・・ばあちゃんは、医学の進歩はめまぐるしいから大丈夫だと言ってね。ばあちゃんはパパに聞いたんだ『ハナは何年生きられるかわからない。もしまた次に子供が出来たときに、その子の成長を見届けることが出来ないが、それでもハナを嫁にもらってくれるか?』ってね。物心ついているころからいつも一緒にいたから、これからも一緒にいたい。もしかしたら、いい治療が見つかって病気が治るかもしれない。ハナ以外の人とは結婚はしないって・・・・」
父の想いは母との思い出が少ないハニの心に響いた。
母が亡くなってから父と離れて暮らしていたが、一度も一緒に暮らせないことに不満を持ったことはなかった。
父と亡くなった母と祖母の想いが、理解できなくてもハニには伝わっていたのだ。
「ソウルは都会で、新しい治療法も国からの援助で負担なく続けられた。盛大な式は挙げられなかったけど、花嫁衣裳を生まれ育った土地で皆に披露もできた。担当の医師と相談して、どうしても子供が欲しいからと何度も頼んだけど、あまりいい返事はなかった。子供がおなかに出来たときに治療を中断しないといけない。その場合いい方に行くか悪い方に行くか判断ができないからね・・・でもママは、一つの夢は叶えられなくてもいいから、母親になりたい方を選んだ。結婚して7年後にハニが生まれたんだよ。」
父の涙が水晶のようにきれいに光って頬を伝っていた。
その涙は、きっと母への想いと同じくらいに尊い物だった。
「ハニがママのお腹にいるときは、仕事でパパの帰りが遅くなるからばあちゃんの家に戻って暮らしていた。何もしないよりは何かしていたいといつもママはそう言って、スチャンの家の別荘の庭をいつも手入れして、あの広い土地で秋桜がたくさん咲くようになったんだよ。」
秋桜の丘の花は、パパやママとスンジョ君のお父さんの思い出の場所なんだ。
そしてその思い出の場所は、また私の思い出の場所で・・・・・だから、私はスンジョ君と出会ったのかもしれない。
「ママの叶わないあきらめた夢って何?」
「ハニの成長だよ。いつか素敵な人と出会って、素敵な家庭を持って自分が叶えられなかった夢をハニに叶えてもらいたい。ママが亡くなる時のその願いがあるから、亡くなった後にばあちゃんの家に預けたんだ。」
一度も聞いたことのなかった、自分が父と離れて暮らした理由。
両親の想いは、ハニの心に深く残った。

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「パパ、その子供って私だよね?」
「いや・・・違うよ。その子は生まれなかったというか生まなかった。」
「どうして?」
父の表情が曇って聞いてはいけないことなのかもしれないと思ったが、それを聞きたい気持ちの方が強かった。
「強い薬で治療中だったからね・・・担当の医師に相談して、今回はあきらめようという事になった。ママは泣いていたよ。この先いつまで生きられるかわからないのに、母親になることができないのは辛いって・・・ばあちゃんは、医学の進歩はめまぐるしいから大丈夫だと言ってね。ばあちゃんはパパに聞いたんだ『ハナは何年生きられるかわからない。もしまた次に子供が出来たときに、その子の成長を見届けることが出来ないが、それでもハナを嫁にもらってくれるか?』ってね。物心ついているころからいつも一緒にいたから、これからも一緒にいたい。もしかしたら、いい治療が見つかって病気が治るかもしれない。ハナ以外の人とは結婚はしないって・・・・」
父の想いは母との思い出が少ないハニの心に響いた。
母が亡くなってから父と離れて暮らしていたが、一度も一緒に暮らせないことに不満を持ったことはなかった。
父と亡くなった母と祖母の想いが、理解できなくてもハニには伝わっていたのだ。
「ソウルは都会で、新しい治療法も国からの援助で負担なく続けられた。盛大な式は挙げられなかったけど、花嫁衣裳を生まれ育った土地で皆に披露もできた。担当の医師と相談して、どうしても子供が欲しいからと何度も頼んだけど、あまりいい返事はなかった。子供がおなかに出来たときに治療を中断しないといけない。その場合いい方に行くか悪い方に行くか判断ができないからね・・・でもママは、一つの夢は叶えられなくてもいいから、母親になりたい方を選んだ。結婚して7年後にハニが生まれたんだよ。」
父の涙が水晶のようにきれいに光って頬を伝っていた。
その涙は、きっと母への想いと同じくらいに尊い物だった。
「ハニがママのお腹にいるときは、仕事でパパの帰りが遅くなるからばあちゃんの家に戻って暮らしていた。何もしないよりは何かしていたいといつもママはそう言って、スチャンの家の別荘の庭をいつも手入れして、あの広い土地で秋桜がたくさん咲くようになったんだよ。」
秋桜の丘の花は、パパやママとスンジョ君のお父さんの思い出の場所なんだ。
そしてその思い出の場所は、また私の思い出の場所で・・・・・だから、私はスンジョ君と出会ったのかもしれない。
「ママの叶わないあきらめた夢って何?」
「ハニの成長だよ。いつか素敵な人と出会って、素敵な家庭を持って自分が叶えられなかった夢をハニに叶えてもらいたい。ママが亡くなる時のその願いがあるから、亡くなった後にばあちゃんの家に預けたんだ。」
一度も聞いたことのなかった、自分が父と離れて暮らした理由。
両親の想いは、ハニの心に深く残った。

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