大好き！＜イタズラなＫｉｓｓ＞ : 2022年08月

2022年08月30日10:35

カテゴリ: 秋桜の丘で

秋桜の丘で　３７

「離れろ・・・」
「ご・・・ごめんなさい・・・・」
何で謝らなければいけないの？
わざとぶつかったのじゃなくて・・・そう、この性格がねじれているペク・スンジョが急に立ち止まったから。

ハニの心の声が聞こえたのか、それともタイミングだったのか、スンジョは小馬鹿にした表情で鼻で笑った。
「勝手について来るのはいいが、オレはお前と一緒の家から出て一緒に学校に行く気はないから。」
ハニが何かを言う前にスンジョは先へ進んだ。
この時の気持ちは、この先何か月になるか分からないが、いつまでもペク家にいてはいけない気がした。
ただハニは嫌じゃなかった。
スンジョが自分に冷たくするのは、何か理由があるはずだ。
初めてであった頃の幼いスンジョは、今のように冷たく感情を見せない子供ではなかった。
無口で自分の方から話す事はなかったが、いつもキラキラと輝く瞳で笑顔も見られた。
ただ、思い起こせば時々悲しい表情をしていたのは気になった。
子供心にその表情を見てあまり気にはならなかったが、ソウルにいる友達と遊びたいのかもしれないと思ったのは事実だった。

一緒の家から出て一緒に学校に行く気はないと言われても、初めて登校する日の朝だけでも一緒に行かないと、慣れないソウルでの生活に戸惑う事になる。
「付いて来るなと言わなかったわ。」
ハニはスンジョの後姿に舌を出して悪戯っ子のように微笑んだ。

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2022年08月28日10:06

カテゴリ: 秋桜の丘で

秋桜の丘で　３６

わずかな沈黙の後、スンジョは無言で立ち上がった。
その顔は、心の中を見せないようにしていて、何を考えているのか分からなかった。

「ハニちゃんと一緒に行ってあげて。」
「嫌だ。」
「今日、初めて制服を着てパラン高校に行くのだから一緒に行ってあげて。」
グミがスンジョにそう言っても、全く無視をして玄関を出て行こうとしていた。
ハニは方向音痴。
同じ家から同じ学校まで誰かに付いて行ってもらえれば一番安心だ。
急いで自分で使った食器を片付け始めた。

「片付けはいいわ。ほら、早く行かないとスンジョに置いて行かれるわよ。」
嫌だと言っていたスンジョは既に玄関を出て、ポーチに立っている後姿が見えた。
「明日はもっと早く起きます。」
グミに片づけを任せて、ハニも急いで家を出た。
ポーチから門までの石段を下りた頃には、スンジョは既に同を駅に向かって歩いていた。

「待ってぇー」
分かっていたが、同じ学校まで行くのに置いて行ってもスピードは落して歩いてくれると思っていたが、わざと急いで歩いているのかと思うくらいに速く歩いていた。
「待ってよ！」
下り坂を転びそうになるくらいに、ハニはスンジョに追い着こうと駆け下りて行った。

追い付いた・・・・・と思った時、スンジョの背中にぶつかった。
その背中は制服越しとはいえ、表情と性格とは正反対に温かい温もりを感じた。

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2022年08月27日11:01

カテゴリ: 秋桜の丘で

秋桜の丘で　３５

幼い頃に出会った女の子は男の子で、人形のようにかわいい女の子は、この世にこんな素敵な人がいるのだろうかと思うくらいにカッコイイ男の子になっていた。
カッコイイ男の子になっていたのに、残念なのは性格が最悪な人間になっていた。
それなのに、気になるの・・・・ううん・・・・もしかして・・・運命の人なのかな？

「何見てるんだよ。」
「えっ？」
「食べこぼしをして・・・・汚い・・・」
食事をしているスンジョに気を取られ、テーブルの上に食べこぼしているのに気が付いていなかった。
ペク家の人と父ギドンの視線を感じながら、ハニは慌ててテーブルの食べこぼしを集め、恥ずかしい気持ちでいるのに小学生のウンジョに『食べこぼしをして・・・・汚い・・・』と言われたら、とても顔を上げられるはずはない。

「緊張しているのよね、ハニちゃんは。まだ慣れていない家で、向かい合って他人と食べるのも緊張するわよ。気にしなくていいわよ。」
「はい・・・・」
俯き加減で食べているスンジョの顔は、彫刻のように奇麗だった。
正直、その姿に胸がときめいていた。

「ごちそうさま・・・」
マグカップを置いてスンジョは立ち上がった。
「コーヒーが変わったのか？」
「どうして？変わらないわよ。」
ハニは気恥ずかしかった。
離れて暮らしていた父には、たまに会う時に甘やかされていたから、いつも何をしても褒められていたが、コーヒーの味を他人に褒められたのは初めてだった。

「バカハニ・・・なんでお前が照れているんだよ。」
ウンジョが皮肉っぽくハニをからかった。
「照れるわよね・・・ハニちゃんが淹れてくれたコーヒーを、不愛想なスンジョが美味しくて気になったみたいだからね。」
さらに照れるハニと、眉間に皺を寄せるスンジョの対照的な表情に、グミはイタズラな表情を見せていた。

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2022年08月19日14:32

カテゴリ: 秋桜の丘で

秋桜の丘で　３４

他人との同居は、家族以上に気を使う事になる。
親しい友人との同居でもなく、親せき知人でもないのならさらにい気持ちは落ち付かない。
同居を始めてから数日経っても、その生活に慣れないが、父親同士が親友で懐かしんで話をしている様子を見るのは気にならないが、賑やかに話す女二人が目の前にいるのは慣れるには時間がかかる。

「ママ、早く朝食の準備をしてよ。学校に遅れる！」
「ウンジョ、スンジョも起きて来たのね。ハニちゃん配膳をお願いね。」
まるで家族の一員のように、同居人のハニに朝食の配膳をグミは指示を出していた。
トースト・カリカリに焼いた刻んだベーコンの入ったサラダ・カットフルーツ・ヨーグルトにそれぞれの好みの飲み物。
スチャンには、コーヒーが入ったカップと一緒にフレッシュと砂糖、ウンジョには少し温めた牛乳。
ハニはスンジョの前にもスチャンと同じようにフレッシュと砂糖を置いた。

「スンジョはブラックで飲むのよ。」
「うわ！生意気！おじさんがミルクとお砂糖を使うのに！」
わずかにスンジョの眉間に皺が寄るのをグミは見ていた。
「生意気でしょ？朝食はずっと同じメニューだからハニちゃんも覚えてね。」
「毎日同じなのですか？」
「一日体調を崩さないで過ごすためなの。」
ハニはコーヒーが入ったポットをテーブルの真ん中に置くと、スンジョの向かい側の席に着いた。

「なんでお前がオレの向かい側なんだ。昨日の夜までは一番端に座っていただろう。」
「おばさんが・・・・ここにしてくれたから・・・・・」
不機嫌そうにスンジョが言うと、グミは何やら企んだような表情をしていた。
「いいじゃない。端に座るとハニちゃんも気遣って落ち着いて食べられないのだから。長く一緒に暮らすのに気を使って生活をしたら可哀想じゃない。」
長く一緒にいるつもりはスンジョは勿論ハニも、その場にいないギドンもこの時は思っていないし考えていなかった。

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2022年08月17日10:10

カテゴリ: 秋桜の丘で

秋桜の丘で　３３

なぜこんなに心が落ち着かないのだろう。
あの頃のあの子のままで変わらなかった。
心に裏表のない笑顔は、あの子の性格を表している。
純粋で素直な心のままで成長して大人になれる人は何人この世にいるのだろうか。

「お兄ちゃん、入ってもいい？」
スンジョの部屋の入り口から少し顔を覗かせてウンジョが様子を窺っていた。
「遠慮しなくてもいい、ここはウンジョの部屋でもあるのだから。」
ニコッと笑ってウンジョは勢いよく部屋に入って来た。
「いやだよね他人と同居って。あのハニは田舎の秋桜の花の中で走り回っていればいいのに。」
ブツブツと不満を口にするウンジョの顔を見ていると、ハニと同じようにまだ純粋な心のままのような気がした。
「ウンジョは、ハニが嫌いなのか？」
「嫌いって言うより、バカすぎてイライラする。お兄ちゃんもそうでしょ？」
「さぁ・・・他人の事は気にしないから、そのうちに新しい生活にも慣れるよ。」
「本当かなぁ・・・・」

その言葉にスンジョは何も返さなかった。
幼い頃より、何かあっても『そのうちに慣れる』と自分自身に言い聞かせていたのだから。
他人との同居はそれほど楽に慣れる事はなく、イライラする事は分かっていても想像はつかない。
想像がつくのは、母が欲しがっていた娘が出来たと思い込み、またとんでもない事をするのじゃないかという心配だった。
自分の人生を母の思い通りに動いて行くのは嫌だった。
だからと言って、自分の夢があってそこに向かって歩いて行く道が分からない。
道が分からないのは夢が分からないから。
ハニのように自分の思いをそのまま表す事が出来るのなら、それがイライラする原因でも何かを見つける事が出来るかもしれない。

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