ジュングの足音が遠くなると、スンジョは書物を広げて手巾を手にした。
誰にも言えない想い。
両親や祖母には気が付かれていたが、どれくらいハニが大切なのは隠していた。
桜の木の下で泣いていたハニは、まだ幼くて覚えていないかもしれないが、つい昨日のことのようにスンジョは記憶していた。
産まれた時からずっと一緒だった。
本当の兄妹じゃない事も、随分前に気が付いていたが敢えて知らないふりをしていた。
当たり前のようにハニがそばにいたから、ずっと傍にいてくれると思っていた。
ユン家のヘラとの事は突然ではあったが、自分を兄と慕うハニの為に自分の気持ちを閉じ込めた。
ヘラは自分の許嫁となっているが、そんな関係だとは一度もなかった。
父からも許嫁の事は聞いていなかったが、ただ成均館に入るためにユン家に赴いていた事がいつの間にかそうなっていた。
ハニが施した刺繍を指でなぞり、それを口づけるとハニの気持ちが伝わってくる気がした。
ジュングに嫁ぐのか?
大人になって自分に力が付いたらはっきりとするつもりでいた。
兄としか思っていなくても、一度も妹と思った事はなかった。
傍にいてくれるだけで、心が幸せに感じていたのは、ハニが自分だけを信じてくれていたから。
ポン家のジュングに嫁げば、もうその役割を自分がしなくなるのは・・・・・・
スンジョは書物を閉じると、思い立ったように立ち上がった。
部屋の戸を開けるとまだ陽は高く、寮生たちは外出をしているのか静かだった。
ジュングはハニに会うのだろうか。
ハニがジュングに笑いかけているのを見るのは辛いが、ジュングと会う前にハニと会いたかった。
「スンジョ・・・出かけるのか?」
そう声を掛けられたがスンジョの耳には聞こえない。
「珍しいな、あいつがこの時間に出かけるのは。」
「人の話に返事をしないくらい慌てているのも珍しい。」
いつも部屋で勉強ばかりをしているスンジョを悪く言う人はいなかった。
文武両道の模範生を、やっかむ人はいるかもしれないが、完璧すぎるスンジョに誰も対抗する人はいなかった。

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誰にも言えない想い。
両親や祖母には気が付かれていたが、どれくらいハニが大切なのは隠していた。
桜の木の下で泣いていたハニは、まだ幼くて覚えていないかもしれないが、つい昨日のことのようにスンジョは記憶していた。
産まれた時からずっと一緒だった。
本当の兄妹じゃない事も、随分前に気が付いていたが敢えて知らないふりをしていた。
当たり前のようにハニがそばにいたから、ずっと傍にいてくれると思っていた。
ユン家のヘラとの事は突然ではあったが、自分を兄と慕うハニの為に自分の気持ちを閉じ込めた。
ヘラは自分の許嫁となっているが、そんな関係だとは一度もなかった。
父からも許嫁の事は聞いていなかったが、ただ成均館に入るためにユン家に赴いていた事がいつの間にかそうなっていた。
ハニが施した刺繍を指でなぞり、それを口づけるとハニの気持ちが伝わってくる気がした。
ジュングに嫁ぐのか?
大人になって自分に力が付いたらはっきりとするつもりでいた。
兄としか思っていなくても、一度も妹と思った事はなかった。
傍にいてくれるだけで、心が幸せに感じていたのは、ハニが自分だけを信じてくれていたから。
ポン家のジュングに嫁げば、もうその役割を自分がしなくなるのは・・・・・・
スンジョは書物を閉じると、思い立ったように立ち上がった。
部屋の戸を開けるとまだ陽は高く、寮生たちは外出をしているのか静かだった。
ジュングはハニに会うのだろうか。
ハニがジュングに笑いかけているのを見るのは辛いが、ジュングと会う前にハニと会いたかった。
「スンジョ・・・出かけるのか?」
そう声を掛けられたがスンジョの耳には聞こえない。
「珍しいな、あいつがこの時間に出かけるのは。」
「人の話に返事をしないくらい慌てているのも珍しい。」
いつも部屋で勉強ばかりをしているスンジョを悪く言う人はいなかった。
文武両道の模範生を、やっかむ人はいるかもしれないが、完璧すぎるスンジョに誰も対抗する人はいなかった。

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