スンジョが成均館の寮に入ってから幾日経ったのだろうか。
旅立ちの日は家族そろって見送ったが、ハニはスンジョの足元だけを見ていた。
スンジョが自分をどんな目で見ていたのか知らない。
知らなくても、いつも何も言わずに優しい眼差しで見守って来た時と同じ視線。
歩き出していく瞬間、懐からハニが黙ってスンジョのふみ机の上に置いた手巾が挟まれていた。
一人でスンジョの部屋を訪れて、ふみ机の引き出しを開けると許嫁から送られた手巾が残っていた。
兄の想いが急に桜の花の想いのような気がした。
報われる事はなくても、スンジョの想いが桜の花のように淡い。
ふとハニは遠い昔、たぶん物心つくかつかないかで記憶が無い時に、誰かが言っていたような気がした。
『多くを望んではいけない。その人が幸せなら、それは私の幸せなのだから』
それを自分に言われていたのではないと思うが、その言葉は何か特別に大切な人が言った言葉のような気がした。
「お嬢様・・・もうすぐ大奥様がいらっしゃいます。」
「そう・・・・」
初めての長期休暇でスンジョが帰って来るのに合わせて、祖母も屋敷に招いて食事をする事になっていた。
嬉しい反面、最近は少し優しくなった祖母に会うのが不安だった。
スンジョが成均館の寮に入り、ペク家の屋敷はウンジョとハニの二人の子供だけで、弟tのウンジョの世話をしているハニに何かを言う事はなかった。
屋敷に仕えている人たちの緊張した空気で、祖母が到着したのだろう。
急いで玄関まで行くと、母と父がウンジョを伴って迎えていた。
怒られる・・・・
「ハニ・・・・」
「はい・・」
「スンジョから手紙が来て、今日成均館の寮で一緒の人を連れて来るから、失礼がないようにしなさい。」
「はい・・・」
スンジョ以外の同年齢の人が訪ねて来る事はなかった。
「ご実家のお母様が赤ちゃんを出産されたばかりで、落ち着かないから数日泊まる事になっているの。」
何も聞かなくても分かっている。
表向きは実家に帰れないお兄様の友達をうちに泊めるのは、お兄様の友人なら問題ないからおばあ様がその人を見て、私の嫁ぐ相手に決めるのだ。
どんな人であっても、私の心はずっとお兄様に向いているのだけど、おばあ様には逆らえない。

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旅立ちの日は家族そろって見送ったが、ハニはスンジョの足元だけを見ていた。
スンジョが自分をどんな目で見ていたのか知らない。
知らなくても、いつも何も言わずに優しい眼差しで見守って来た時と同じ視線。
歩き出していく瞬間、懐からハニが黙ってスンジョのふみ机の上に置いた手巾が挟まれていた。
一人でスンジョの部屋を訪れて、ふみ机の引き出しを開けると許嫁から送られた手巾が残っていた。
兄の想いが急に桜の花の想いのような気がした。
報われる事はなくても、スンジョの想いが桜の花のように淡い。
ふとハニは遠い昔、たぶん物心つくかつかないかで記憶が無い時に、誰かが言っていたような気がした。
『多くを望んではいけない。その人が幸せなら、それは私の幸せなのだから』
それを自分に言われていたのではないと思うが、その言葉は何か特別に大切な人が言った言葉のような気がした。
「お嬢様・・・もうすぐ大奥様がいらっしゃいます。」
「そう・・・・」
初めての長期休暇でスンジョが帰って来るのに合わせて、祖母も屋敷に招いて食事をする事になっていた。
嬉しい反面、最近は少し優しくなった祖母に会うのが不安だった。
スンジョが成均館の寮に入り、ペク家の屋敷はウンジョとハニの二人の子供だけで、弟tのウンジョの世話をしているハニに何かを言う事はなかった。
屋敷に仕えている人たちの緊張した空気で、祖母が到着したのだろう。
急いで玄関まで行くと、母と父がウンジョを伴って迎えていた。
怒られる・・・・
「ハニ・・・・」
「はい・・」
「スンジョから手紙が来て、今日成均館の寮で一緒の人を連れて来るから、失礼がないようにしなさい。」
「はい・・・」
スンジョ以外の同年齢の人が訪ねて来る事はなかった。
「ご実家のお母様が赤ちゃんを出産されたばかりで、落ち着かないから数日泊まる事になっているの。」
何も聞かなくても分かっている。
表向きは実家に帰れないお兄様の友達をうちに泊めるのは、お兄様の友人なら問題ないからおばあ様がその人を見て、私の嫁ぐ相手に決めるのだ。
どんな人であっても、私の心はずっとお兄様に向いているのだけど、おばあ様には逆らえない。

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