夕方になり仕事から帰宅をすると聞こえる子供たちの笑い声。
ドラマや映画で見るようなごく普通の家庭の様子の一つがこれなのだろう。
玄関のドアを開けて靴を脱ぎ、スリッパに履き替えてリビングの入り口のドアノブに手をかけると、ガラス越しに見える楽しそうに笑っている幼いわが子たち。
その傍らにいるのは子供たちの母親ではなく、その子供たちの父親が仕事に行く日に世話をするために着ている祖母。
「ただいま。」
「おかえりなさい。パパが帰ってきたから、お夕食にしましょうね。」
グミは膝の上にのせていたヘスをソファーに下ろし、その華奢な体を安定させるとキッチンに向かった。
少しずつ明るい顔になっているスウォンとヘス。
何も罪がない子供たちに、早く母親と一緒に過ごす時間が来るといいと思っていた。
「ヘラは?」
「起きていると思うわ・・・今日は少しだけ4人でマンション近くの公園に出掛けたの。疲れたみたいだからスンジョが帰ってくるまで部屋で休んでもらっているの。」
スンジョのジャケットの裾を引っ張るヘスも、最近は顔色もよく笑顔があるようになったが、まだ話すことも普通に歩くこともできない。
『ママと公園に行ったのか?」
スンジョの言う言葉がわかるのか、ニコッと笑ったかわいらしい口元からよだれが流れた。
言葉を発しないヘスの、精いっぱいの気持ちの伝わりが、自分たち家族がいい方向に向かっていると感じていた。
「ぼくね・・ママにお勉強を見てもらったよ。」
「そうか・・・」
その声が聞こえたのか、グミが食器に夕食を盛りつけながらスウォンの幼稚園での話をした。
「スウォンはさすがにあなたたちの子供ね。絵本を読むのがとても上手で、クラスで一人だけすらすらと読めたのですって。」
嬉しそうに笑っている息子の頭をなぜると、自分が幼いころも笑ったらこんな顔をしたのだと分かるくらいに、自分と最近は似てきていると思った。
「部屋に行って着替えてくる。」
「じゃあ、ヘラと一緒に来てね・・・」
寝室のドアを開けると、窓側のカーテンは閉められ、ベッドのサイドテーブルのスタンドだけを付けた暗い部屋でヘラはこちらを見ていた。
「ごめんなさい、疲れて横になっていたの・・・」
起きようとするヘラの背中を支え、スンジョは妻を抱きカーディガンを羽織らせた。
「私ね・・・・公園に行ったのはいったいいつ以来だろうと思ったの。」
「オレと見合いをしたあの時以来だろ?」
「そう・・・今まで自然に触れる機会もなく、子供たちにも愛情を持っていなかった・・・あなたのことがだれにも負けないくらい愛しているのに、どうして子供を好きになれなかったのかわかったの・・・」
「いいよ言わなくても。みんなオレが悪いのだから。」
「違うわ・・・私が悪いの・・」
自分の非を口にすることがなかったヘラが、どうしてそう認めることができるようになったのかは、当人だけしかわからない。
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ドラマや映画で見るようなごく普通の家庭の様子の一つがこれなのだろう。
玄関のドアを開けて靴を脱ぎ、スリッパに履き替えてリビングの入り口のドアノブに手をかけると、ガラス越しに見える楽しそうに笑っている幼いわが子たち。
その傍らにいるのは子供たちの母親ではなく、その子供たちの父親が仕事に行く日に世話をするために着ている祖母。
「ただいま。」
「おかえりなさい。パパが帰ってきたから、お夕食にしましょうね。」
グミは膝の上にのせていたヘスをソファーに下ろし、その華奢な体を安定させるとキッチンに向かった。
少しずつ明るい顔になっているスウォンとヘス。
何も罪がない子供たちに、早く母親と一緒に過ごす時間が来るといいと思っていた。
「ヘラは?」
「起きていると思うわ・・・今日は少しだけ4人でマンション近くの公園に出掛けたの。疲れたみたいだからスンジョが帰ってくるまで部屋で休んでもらっているの。」
スンジョのジャケットの裾を引っ張るヘスも、最近は顔色もよく笑顔があるようになったが、まだ話すことも普通に歩くこともできない。
『ママと公園に行ったのか?」
スンジョの言う言葉がわかるのか、ニコッと笑ったかわいらしい口元からよだれが流れた。
言葉を発しないヘスの、精いっぱいの気持ちの伝わりが、自分たち家族がいい方向に向かっていると感じていた。
「ぼくね・・ママにお勉強を見てもらったよ。」
「そうか・・・」
その声が聞こえたのか、グミが食器に夕食を盛りつけながらスウォンの幼稚園での話をした。
「スウォンはさすがにあなたたちの子供ね。絵本を読むのがとても上手で、クラスで一人だけすらすらと読めたのですって。」
嬉しそうに笑っている息子の頭をなぜると、自分が幼いころも笑ったらこんな顔をしたのだと分かるくらいに、自分と最近は似てきていると思った。
「部屋に行って着替えてくる。」
「じゃあ、ヘラと一緒に来てね・・・」
寝室のドアを開けると、窓側のカーテンは閉められ、ベッドのサイドテーブルのスタンドだけを付けた暗い部屋でヘラはこちらを見ていた。
「ごめんなさい、疲れて横になっていたの・・・」
起きようとするヘラの背中を支え、スンジョは妻を抱きカーディガンを羽織らせた。
「私ね・・・・公園に行ったのはいったいいつ以来だろうと思ったの。」
「オレと見合いをしたあの時以来だろ?」
「そう・・・今まで自然に触れる機会もなく、子供たちにも愛情を持っていなかった・・・あなたのことがだれにも負けないくらい愛しているのに、どうして子供を好きになれなかったのかわかったの・・・」
「いいよ言わなくても。みんなオレが悪いのだから。」
「違うわ・・・私が悪いの・・」
自分の非を口にすることがなかったヘラが、どうしてそう認めることができるようになったのかは、当人だけしかわからない。

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