ギョルと暮らしたこの部屋から出て行く日がついに来てしまった。
数日前に妊娠していない事が決まった事をギョルに伝えた。
淋しそうで悲しそうな顔で私の言葉を聞いたギョルの顔を、今でも忘れられないほど切なく感じた。
「妊娠していたらハニを引き止めたのに・・・・」
「ごめんね・・ギョルの事を本当に好きだよ。」
「知っているよ。ハニは好きでもない男と、結婚を約束して一緒に暮らそうという言葉に乗らないから。お父さんにはオレが話をしておくから、ハニが出て行きたい時にここから出て行っていいよ。」
優しかった。
ギョルはいつも私に優しくしてくれた。
勉強の時は鬼みたいと言って、私が間違えたり覚えれなかった時に厳しくされるとそう言っていた。
荷物をまとめながら、ハニはギョルと付き合い始めた頃や、初めてのキスや初めて結ばれた日の事を思い出していた。
いつも初めての思い出になっている場所は、この部屋の中だった。
別れるつもりはなく、大学を出て落ち着いたら結婚するつもりでいたから、一緒に買い物に行くたびに増やしていった小物たちがまだ並んでいる。
自分の分だけを丁寧に割れないようにハンカチで包み、キャリーバックやリュックに入れた。
数か月前に持って来た洋服類は、部屋が狭いから季節に合わせた物しか運び込まなかった。
それでも買い揃え始めたペアの小物が増えた分だけ荷物も多い。
この部屋を出て行く時は、荷物を運ぶのを手伝うと言っていた。
妊娠をしていないと告げたあの日のギョルの顔を思うと、そんな事をとても頼めなかった。
朝から用事があると言って出て行ったギョルを見送ってからすぐに荷物をまとめ始めた。
ギョルが出かけている間に、手紙を置いて出て行くつもりでずっといた。
「これで一応全部だよね・・・・」
ふたりで並んで勉強をしたテーブルの上に、一枚の紙を置いた。
『残っているものは処分してね』
同じ大学にまだ通っているし、何事もなければこのままパラン大病院の看護部に行く事になる。
ヘウンやミンジュにヒスン達にもいつかは言わなければいけない。
ギョルと別れた理由をどう伝えようか。
「ギョルが好きだけど、心の中で別の人を思い続けていた・・・・」
誰がそう言ったのか、ハニはその声に驚いて部屋の中を見回した。
「そうだよね・・・スンジョ君と再会してから、私の中で何かが変わっていた。最初からスンジョ君と会うと思っていなかったと言い切れない。だって・・・だって・・ギョルがパラン大病院に実習希望を出したと言った時、私は別の所を選択すればできたのにギョルと一緒の希望を出してしまった。外科の希望は多いから大丈夫、他の診療科になるから・・・勝手にそう思っていた。スンジョ君が下かにいる事だって知らなかったのだから、希望診療科を外科にするのは簡単に決めた・・・でも、心のどこかでスンジョ君に会いたい思いがあったのかもしれない・・・」
ハニの心の中は、自分が選んだ道が原因で別れる事になったのかもしれないと、深い後悔ばかりが上がって来た。
「よいしょ・・・」
リュックを背負い、キャリーバックのレバーを上げて思い出のある部屋を出てドアに鍵をかけると、その鍵をドアポストの中に入れた。

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数日前に妊娠していない事が決まった事をギョルに伝えた。
淋しそうで悲しそうな顔で私の言葉を聞いたギョルの顔を、今でも忘れられないほど切なく感じた。
「妊娠していたらハニを引き止めたのに・・・・」
「ごめんね・・ギョルの事を本当に好きだよ。」
「知っているよ。ハニは好きでもない男と、結婚を約束して一緒に暮らそうという言葉に乗らないから。お父さんにはオレが話をしておくから、ハニが出て行きたい時にここから出て行っていいよ。」
優しかった。
ギョルはいつも私に優しくしてくれた。
勉強の時は鬼みたいと言って、私が間違えたり覚えれなかった時に厳しくされるとそう言っていた。
荷物をまとめながら、ハニはギョルと付き合い始めた頃や、初めてのキスや初めて結ばれた日の事を思い出していた。
いつも初めての思い出になっている場所は、この部屋の中だった。
別れるつもりはなく、大学を出て落ち着いたら結婚するつもりでいたから、一緒に買い物に行くたびに増やしていった小物たちがまだ並んでいる。
自分の分だけを丁寧に割れないようにハンカチで包み、キャリーバックやリュックに入れた。
数か月前に持って来た洋服類は、部屋が狭いから季節に合わせた物しか運び込まなかった。
それでも買い揃え始めたペアの小物が増えた分だけ荷物も多い。
この部屋を出て行く時は、荷物を運ぶのを手伝うと言っていた。
妊娠をしていないと告げたあの日のギョルの顔を思うと、そんな事をとても頼めなかった。
朝から用事があると言って出て行ったギョルを見送ってからすぐに荷物をまとめ始めた。
ギョルが出かけている間に、手紙を置いて出て行くつもりでずっといた。
「これで一応全部だよね・・・・」
ふたりで並んで勉強をしたテーブルの上に、一枚の紙を置いた。
『残っているものは処分してね』
同じ大学にまだ通っているし、何事もなければこのままパラン大病院の看護部に行く事になる。
ヘウンやミンジュにヒスン達にもいつかは言わなければいけない。
ギョルと別れた理由をどう伝えようか。
「ギョルが好きだけど、心の中で別の人を思い続けていた・・・・」
誰がそう言ったのか、ハニはその声に驚いて部屋の中を見回した。
「そうだよね・・・スンジョ君と再会してから、私の中で何かが変わっていた。最初からスンジョ君と会うと思っていなかったと言い切れない。だって・・・だって・・ギョルがパラン大病院に実習希望を出したと言った時、私は別の所を選択すればできたのにギョルと一緒の希望を出してしまった。外科の希望は多いから大丈夫、他の診療科になるから・・・勝手にそう思っていた。スンジョ君が下かにいる事だって知らなかったのだから、希望診療科を外科にするのは簡単に決めた・・・でも、心のどこかでスンジョ君に会いたい思いがあったのかもしれない・・・」
ハニの心の中は、自分が選んだ道が原因で別れる事になったのかもしれないと、深い後悔ばかりが上がって来た。
「よいしょ・・・」
リュックを背負い、キャリーバックのレバーを上げて思い出のある部屋を出てドアに鍵をかけると、その鍵をドアポストの中に入れた。

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