「ウンジョ、お帰り・・お兄ちゃんが話があるって。」
「兄貴、帰って来たのか。」
「今は疲れたからって眠っているわ。」
「保養所の医務室に患者が来る事はないけど、この十数年兄貴は仕事漬けの毎日だったから、暇でも疲れるのかもしれないね。」
「でね・・・夕食の後に話があるって。パパもその頃には返って来ると思うけど、ハニちゃんと再婚する話でもなさそうよ。」
ウンジョは、ハニが結婚して子供がいる事を知っている母が、まだ兄と結婚させたがっている事にいい加減呆れて来ていた。
「お袋ぉ~兄貴は離婚したけど、ハニは可愛い子供と妻を愛する夫と幸せに暮らしているんだ。人が幸せに暮らしているのに、不幸にすることを望むものじゃない。」
「でも・・・・・・」
グミも判っていた。
ハニがスンハを産んでしばらく経ってからギドンに頼み込んで会いに行く時に、スチャンと一緒に付いて行った。
どこかスンジョと似ているダニエルと、夫によく似た可愛い赤ちゃんと迎えてくれたあの時、確かにハニは幸せそうに笑っていた。
幸せだと言っていたけど、それは自分でそう思おうとしているのだとグミには思えた。
スチャンにも、もうハニとスンジョを一緒にさせる事は諦めるようにも言われた。
自分が欲しかった娘は、ハニの様に明るい女の子。
自分の娘が嫁いで、幸せに暮らしているのならそれでいいと何度も自分に言い聞かせていたが、諦めきれなかった。
心の底から笑った事のなかったスンジョが、体育祭で見せたあの笑顔を、親の自分でもなくハニの純粋な心がそうしてくれた事で、スンジョの運命の人がハニだと思った。
「そうよね・・・・諦めないといけないのよね・・・・幸せな人を不幸にしてはいけない・・・・辛いけど・・・・」
久しぶりの兄弟そろっての夕食も、子供の頃の様に賑やかなものではないが、それなりにその空気が普通の様に、グミはもうすっかり大人の子供に食事を用意するのが仕事になっていた。
ウンジョが結婚をし、一児の父となりその嫁であるミアともいい嫁姑の関係でも、ハニの事を口に出すことも無いが、いつもハニの事を考えていた。
数年前に再会するまでは、スンジョがヘラと結婚生活を続けていたのもあるが、その名前を口にする事はなかったが、今は抑えていた名前を言うのを声に出して言う事を抑えられなかった。
ふたりの息子の前では、あまり言う事はなかったが、たった一人の同性のミアには『以前一緒に暮らしていたハニ』の事を、どんな女の子だったのかと教えていた。
「で・・・兄貴、話って?」
「親父にも話したいけど・・・・・・」
「ん?すまんな。」
スチャンは読んでいた新聞を脇に置くと、スンジョの方に顔を向けた。
「実は、昨日付でパラン大病院を辞めたんだ。」
「辞めた?」
「正確には保留されたけど。」
「医者を辞めてどうするんだ?お前のなりたかった医者だろ?」
グミは何も言わなかった。
体調も戻って、これからまた頑張って行く息子が、また何を考えているのかよく解らなかった。
解らないのは、グミばかりではない、スチャンもウンジョも解らない。
「また体調が良くないのか?」
「体調はもう問題ない。パラン大病院を辞めたと言っても、まだ医師と言う仕事は続けるし、病院側もそのまま席を置いて欲しいと、退職を受理されなかった。その代り、出向という形で無医村に行く事にした。」
「無医村・・・・どこに行くんだ?」
「それは言えない・・・・危険地帯ではない事は、確かだから何も心配はしなくてもいい。」
危険地帯ではないと聞いても、親として兄弟としてどうしてスンジョがそんな事を考えたのかが、ますます解らなくなった。

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「兄貴、帰って来たのか。」
「今は疲れたからって眠っているわ。」
「保養所の医務室に患者が来る事はないけど、この十数年兄貴は仕事漬けの毎日だったから、暇でも疲れるのかもしれないね。」
「でね・・・夕食の後に話があるって。パパもその頃には返って来ると思うけど、ハニちゃんと再婚する話でもなさそうよ。」
ウンジョは、ハニが結婚して子供がいる事を知っている母が、まだ兄と結婚させたがっている事にいい加減呆れて来ていた。
「お袋ぉ~兄貴は離婚したけど、ハニは可愛い子供と妻を愛する夫と幸せに暮らしているんだ。人が幸せに暮らしているのに、不幸にすることを望むものじゃない。」
「でも・・・・・・」
グミも判っていた。
ハニがスンハを産んでしばらく経ってからギドンに頼み込んで会いに行く時に、スチャンと一緒に付いて行った。
どこかスンジョと似ているダニエルと、夫によく似た可愛い赤ちゃんと迎えてくれたあの時、確かにハニは幸せそうに笑っていた。
幸せだと言っていたけど、それは自分でそう思おうとしているのだとグミには思えた。
スチャンにも、もうハニとスンジョを一緒にさせる事は諦めるようにも言われた。
自分が欲しかった娘は、ハニの様に明るい女の子。
自分の娘が嫁いで、幸せに暮らしているのならそれでいいと何度も自分に言い聞かせていたが、諦めきれなかった。
心の底から笑った事のなかったスンジョが、体育祭で見せたあの笑顔を、親の自分でもなくハニの純粋な心がそうしてくれた事で、スンジョの運命の人がハニだと思った。
「そうよね・・・・諦めないといけないのよね・・・・幸せな人を不幸にしてはいけない・・・・辛いけど・・・・」
久しぶりの兄弟そろっての夕食も、子供の頃の様に賑やかなものではないが、それなりにその空気が普通の様に、グミはもうすっかり大人の子供に食事を用意するのが仕事になっていた。
ウンジョが結婚をし、一児の父となりその嫁であるミアともいい嫁姑の関係でも、ハニの事を口に出すことも無いが、いつもハニの事を考えていた。
数年前に再会するまでは、スンジョがヘラと結婚生活を続けていたのもあるが、その名前を口にする事はなかったが、今は抑えていた名前を言うのを声に出して言う事を抑えられなかった。
ふたりの息子の前では、あまり言う事はなかったが、たった一人の同性のミアには『以前一緒に暮らしていたハニ』の事を、どんな女の子だったのかと教えていた。
「で・・・兄貴、話って?」
「親父にも話したいけど・・・・・・」
「ん?すまんな。」
スチャンは読んでいた新聞を脇に置くと、スンジョの方に顔を向けた。
「実は、昨日付でパラン大病院を辞めたんだ。」
「辞めた?」
「正確には保留されたけど。」
「医者を辞めてどうするんだ?お前のなりたかった医者だろ?」
グミは何も言わなかった。
体調も戻って、これからまた頑張って行く息子が、また何を考えているのかよく解らなかった。
解らないのは、グミばかりではない、スチャンもウンジョも解らない。
「また体調が良くないのか?」
「体調はもう問題ない。パラン大病院を辞めたと言っても、まだ医師と言う仕事は続けるし、病院側もそのまま席を置いて欲しいと、退職を受理されなかった。その代り、出向という形で無医村に行く事にした。」
「無医村・・・・どこに行くんだ?」
「それは言えない・・・・危険地帯ではない事は、確かだから何も心配はしなくてもいい。」
危険地帯ではないと聞いても、親として兄弟としてどうしてスンジョがそんな事を考えたのかが、ますます解らなくなった。

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