大好き!<イタズラなKiss>

韓国版イタズラなKissが大好きです。 切ないお話しか書いていないので、お好みではない方はスルーしてください。

2016年07月

今でも 153

ハンダイ保養所の医務室のベッドではなく、総合病院のベッドの上に横たわって、お腹に手を触れると数時間前までそこにいた我が子は今となりの部屋のNICU にいる。
「ハニ、見て来たよ。」
「ふふ・・・ダニエル、3分おきに見て来ている・・・」
「だってさ、可愛くて・・・こぉんな小さな手を、ギュッと握って・・・もう少ししたら、ハニが授乳に行く時に付いて行っていいってさ。」
総合病院に来てからずっと興奮状態のダニエルは、頬が高揚して赤くなっていた。
「名前さ・・・どんな名前がいい?」
「私が決めていいの?」
「女の子だし、オレよりもハニの方が年上だし・・・ここは年長者であるハニが付けた方がいいと思って。」
「そう言う時だけ、年長者扱いなんだ・・・・いつもはオレがやるからって、言っているのはどこの誰なんでしょう?」
「はは・・・・・」
ふとその時私の頭の中で、その名前が思い浮かんだ。

「スンハ・・・・・」
「スンハ?」
どうしてその名前を思いついたのか判らないけど、その名前は子供がお腹にいると判った時から、心の中で呼びかけていた。
「スンハか・・・・可愛い響きだ・・・」
携帯で写してきた写真をハニの前に出すと、ハニのベッドに腰掛けてダニエルはそっと肩を抱いた。
「子どもの顔を見ていたら、お母さんがどうしてオレを置き去りにしたのか知りたくなった。そして、22年前に迎えに来た時にどうしてオレはお母さんの手を取らなかったのかを話したい。」
「ダニエル・・・お母さんと話をすると言う事?」
「あぁ・・・・オレは怖かったのかもしれない。親子関係がよくない人たちが言うじゃないか。『お前さえ産まれなかったら』ってさ・・・オレのお母さんは高校生の時にオレを産んだ。きっと悩んで、産むことを決意したと思う。園長から聞いた話では、オレのお父さんは留学生で帰国してしまったから、誰にも相談をする事も知らずきっと不安だったと思う・・・・・・・」

自分の子供が産まれたからそう言う考えになったのかもしれない。
ハニが陣痛で苦しんでいる時の、あんなに大変な思いをして女性は子供を産む。
男のオレが、産まれた子供を見てこれほど気持ちが温かくなるのなら、きっとお母さんはオレの顔を見てもっと温かい気持ちになったはずだ。
『迎えに来た時に分かるように、大好きな人の名前を付けた』
あの本に27年前に一度オレを置いて行った時に書いた言葉で、その5年後に来た時の為に書いたものだと知っていたらもっと違っていたのかもしれない。
医務室であった時のあの人は、オレが知っているお母さんとは随分と変わっていた。

「どうしたの?」
「ん?」
「さっきから黙っている。」
「子供の親になったと思ったら、初恋の人を思い出していた。」
「ダニエルの初恋の人?」
「今度話すよ・・・・初恋の人の話し。」
ただ、何も考えずに今はハニを抱きしめていたかった。







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今でも 152

「そんな写真を見せて、いつもオレの事を思っていたと言いたいのか?そんな言い訳で、捨てられた事に付いて、オレが許せると思うのか?」
「ダニエル、そんな事を言ったらお母さんが・・・」
「いいのよ。いくら私がどんな理由を付けても、産んだ子供を手元に置いていないのだから、そう思われても仕方がない。いつも後悔ばかりしていたわ。あなたがどんなに私を睨みつけていても、泣いて叫んでも腕を引っ張って連れてこれば良かった・・・・・と。」
ジニは沢山話したい事があった。
22年間どんな様子で暮らしていたのか、それも聞きたかった。
でも、今はそんな状況でもない。

辺りを看護師が片付け終わると、救急隊員と一緒に医師が入って来ると移動する事を伝えた。
「病院に搬送します。どなたが、この女性と赤ちゃんと一緒に行きますか?」
「夫のオレが行きます。」
開け放たれたドアから見える廊下に、医務室の医師のスンジョがいないかダニエルは様子を伺った。
ハニの想いがまだスンジョにあることはなんとなく判っていた。
判っていたが、会わせたいと言う思いは無かった。
自分の人生で生れて初めて守りたいと思った女性(ひと)がハニで、やっと家庭と言う場所を自分の手で持つことが出来たから、ハニと産まれたばかりの娘を手放したいとは思わなかった。

「判りました。それではすぐに移動します。」
救急隊員がそう言うと、ハニはストレッチャーに移乗された。
医師と話しているダニエルに気が付かれない様に、ジニはハニの手を握った。
「後から主人と一緒に、病院に行きます。会ってくれますね?」
「勿論です・・・・医務室の先生にも会ってお礼の挨拶をしたい・・・」
「私が伝えておきます。一緒に病院に行く事が出来れば、一緒に行きますね・・」
「ありがとうございます。」
ストレッチャーが動き始めると、ジニは持っていた古い産まれたばかりのダニエルが写っている写真を、ハニの手に握らせた。

会いたくて仕方の無かった息子と再会が出来たから、もうこの写真は息子の妻に渡したい。
今度はあの時とは違って、どんなに嫌がってもちゃんと話をしよう。
大人になり家族を持って過ごしている今は、もう一緒に暮らすことはなくても、母と父と息子としてこれからはいつでも会ってくれるかと聞きたかった。

自分が置き去りにした息子は、夫と出会ったばかりの頃のように立派な青年になっていた。
出産を終えたばかりの妻を気遣って、一緒に歩いて行くその後ろ姿は、ダニエルの弟と妹が生れた時の夫の姿と重なっていた。




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今でも 151

自分がした結果じゃないか。
オレを一途に思っていてくれたハニを散々泣かせた挙句、ハニの気持ちを知っているのに、ハニが苦手としているヘラと政略結婚を選んだのは誰だ?
親父やお袋にも反対され、それでも自分の気持ちを曲げることなく結婚して・・・・
その結果がこんな結果じゃないか。
好きじゃなくても、趣味や好みが似ているからそのうちに好きになる?
よくそんな立派な事を、まだ小学生だったウンジョに言ったものだ。
趣味や好みが似ていて気が合うのは、友達として付き合っていくのにはいいが、生涯を共にする伴侶は心の中で奏でる言葉では表せない物の波長が合わなければ、今のオレみたいに苦しいだけじゃないか。

医務室に何かあったのか、ハニが苦しんでいる声は聞こえなくなり、誰かが話している声と小さく聞こえる声があった。
「産まれたみたいですね。」
ダニエル・アンダーソン夫人のチョ・ジニが、医務室のドアを見てそう言った。
「そうですね・・・・」
スンジョはあえて、ジニにダニエルとの関係を聞く事はしなかった。
「息子なんです・・・・ペク先生の奥様に、人探しの依頼をした息子のダニエルなんです。あの子が産まれた時は、私はまだ高校生で・・・・この先の人生を送ることに不安になって、他人の噂で聞いたキョンエ園にあの子を捨てに行ったのです・・・・5歳になるまで、主人の居所を探しながら、時々あの子に会いに言ったのですけど、あの子は私を憎んで・・・仕方がないですよね・・・・迎えに来るつもりとはいえ、置いて自分の家に独りで帰ったのですから・・・・」
ガチャンと医務室のドアが開いて、中から看護師が出て来た。

「女の子が産まれましたよ。運ばれて来た女性の旦那様に良く似た、とても綺麗な顔の女の子です。」
「会えますか?産まれた子供は、私の孫になる子供です。」
「申し訳ありません。早産でしたので、直ぐに保育器に入れました。保育器からの対面になりますが、ご本人に聞いて来ますね。」
産まれた事を報告に来た看護師は、またすぐに医務室に入って行き、暫くすると出て来てドアを開けた。
「ペク先生も行かれますか?」
「いえ・・・私は、医師と言うだけで無関係の人間ですから。」
この医務室を管理している医師として入って行く事も出来たが、オレが顔を出し場ハニはいい気がしないだろう。
ここに来ている事も知らないのだから、ハニの幸せを壊してしまってはいけないから。

「ダニエルの・・・お母様・・・・」
ジニが入って来ると、ハニは身体を起こして挨拶をしようとした。
そんなハニを見て、ジニは駆け寄って来た。
「安静にして・・・」
「ハニが、お母さんが孫に会いたいと言っているのなら会わせてあげようって・・・さ。」
ハニのベッドの横に保育器の中に入っている産まれたばかりの小さな孫がいた。
27年前、まだ高校生の時に産んだダニエルとよく似た顔をしている。
「ダニエルとよく似ている・・・・・細くて絹糸のような髪に、白い肌・・・・・産まれたばかりなのに長いまつ毛・・・・ダニエルは持っていないわよね?」
「何が?」
「産まれたばかりの時の写真・・・・」
「あるわけないだろう・・・」
ジニは持っていたバックの中から、革の手帳を出して、その中に挟んである一枚のボロボロになった写真を取り出した。




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今でも 150

「大丈夫か?辛いか?」
心配そうにハニを見下ろすダニエルは目が潤んでいた。
人前で涙を見せたことも無いダニエルが、陣痛の痛みに耐えているハニを見て、6年前のあの時に産まれることが出来なかった息子を思い出していた。
あの時はまだダニエルが21歳でハニが25歳。
若いと言えば若い年齢かも知れないが、あの時ハニもダニエルも新しい命と共に普通の家庭生活を夢見ていた。
「ご主人、奥さんに声を掛けてあげてください。安心させてください。」
「ダニエル・・・・あの女の人・・・・」
「後から話すから・・・・今は・・・頑張れ・・・・」
声を掛けて励ます事しか今のダニエルには出来なかった。
医務室の外にいるふたりの事を、落ち付いたら話さないといけない。

痛みの間隔が、だんだん狭まって来ている。
ダニエルがこの医務室に来た時に、私を助けてくれた人をお母さんと言っていた。
綺麗な人だった・・・・
「い・・・痛い・・・」
傍に付いている看護師が、ハニの足元に回った時に、腰が砕けるくらい強い痛みで息が出来なくなりそうだった。
「頭が見えて来ましたよ・・・もうすぐです。」
その声と同時に何かがはじけた様な気がしたが、もうハニには話す事も出来ない程、気持ちに余裕が無かった。

何かが聞こえたが、ハニは急に身体が楽になり、荒い呼吸が徐々に落ち着いて来ると状況が理解できた。
「はぁ・・・はぁ・・・・ダニエル、赤ちゃん・・・・」
ダニエルの目から今にも涙が落ちそうで、嬉しいのか悲しいのかも判らない表情だった。
無事に生まれたのなら、泣き声が聞こえる物だと思っていたが分娩室に変わった医務室は泣き声が聞こえなかった。
ほんの数分静かな時間が過ぎると、小さいが自分の存在を伝える泣き声が聞こえて来た。

「月足らずで小さいけど、可愛い女の子ですよ。すぐに総合病院に行く手配になっているので、保育器に入れますね。」
保育器に入れる前に、ダニエルとハニに産まれたばかりの女の子を見せてくれた。
思った以上に小さくて、痩せている赤ちゃんは弱々しくても必死に泣いていた。

「サルみたい・・・・」
ハニは思わず、声として出していた。
「本当だ、サルみたいだ。」
「オッパイを飲んで、よく眠れば直ぐにムチムチした赤ちゃんになりますよ。寒くて震えているから保育器に入れますね。」
手に触れた柔らかな肌と絹糸のように細くて光る髪の毛。
数時間前の痛みが嘘のように幸せな気持ちになった。
今のけだるい感じが、またそれさえも幸せに思えた。

ここがハンダイの医務室だから、総合病院に搬送されると言う事を伝えられ、ハニは救急車が来るのをダニエルと一緒に、保育器の中で眠っている我が子を見て待っていた。
廊下にいるスンジョのことはハニは知らないし、スンジョがどんな気持ちで運び込まれて来たハニを見ていたのかは誰も知らなかった。





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今でも 149

お互い間近で会うのは初めてだった。
スンジョはあの孤児院に向かう時と、済州島の空港で見かけた時の2回。
ダニエルは、ハニの携帯の中に保存されていた画像でしか見た事がないが、自分と同じように心の奥に深い傷を持っている事があると気がついた。

この男が昔ハニが好きだった男で、ハニを悲しませて傷つけた男
と、ダニエルが心の中で言えば、スンジョはスンジョでまた心の中でダニエルに向かって話した。
あなたが、ハニを救って愛してくれた夫。

先にスンジョが挨拶をした。
「初めまして、この保養所の医務室に常勤しています、ペク・スンジョと申します。」
「社長のお兄さんですよね・・・・社長には妻の体調の事を考えていただき、従業員が居住する施設ではなく、個人的に借りた家に住むことを許可していただき感謝しています。お蔭で、妻の体調もかなり良くなりました。」
「良くなった?貧血には気が付かなかったのですか?それに、今の状態なら、朝から軽い陣痛はあったはずですよ。」
こんな言い方をするつもりはなかった。
この男と出会わなかったら、ハニはもしかしたら自ら命を絶っていた可能性もあったじゃないか。
オレ中心で回っている、惑星の様なハニだから。

「あんたに言われたくないよ。それに医師が、患者の家族にそんな言い方をするのか?ハニは6年前に一度流産をしていたから、ちゃんと産婦人科の医師に診察はして貰っていたよ。」
「ダニエル・・・先生が点滴をしてくださったから、貧血の方は落ち付いているのよ・・・お礼を・・・・」
「お知り合いですか?」
「22年前に生き別れた息子です・・・」
「捨てられた息子だろ・・・」
ジニに説明を受けなくても判るくらいに、ダニエル・アンダーソンと似ていた。
ダニエルの心の傷は、母親に捨てられた事なのだろう。
ジニの病も、母国に置いて来た息子を想っての病だと夫から聞いていた。

あの孤児院に置いて来た息子とは、ハニの夫のダニエルなのだとはっきりと判った。
「ご主人は、息子さんの事を・・・」
と、スンジョがそう言いかけた時、医務室のドアが開いて看護師が出て来た。
医務室から聞こえるハニが苦しんでいる声。
ここに誰もいなくて、自分が医師と言う立場では無かったら駆け寄って手を握ってあげたかった。
「産まれるのか?」
「ええ・・・あと1時間くらいです・・」
「まだ1時間も・・・」
ダニエルのその呟きはスンジョも同じ思いだった。

「ペク先生、直ぐに病院に搬送しないといけないので、救急車の手配を・・・」
まだ月足らずで小さい胎児と、衰弱しているハニをこの医務室で治療をするわけにはいかない。
直ぐに携帯を手にして、救急車での搬送をする手配をした。
ダニエルは白衣を着て帽子をかぶると、看護師と一緒に医務室に中に入って行った。




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