ダニエルと一緒に最終列車に乗ると、車内は毛布を肩に掛けて眠っている人ばかりだった。
知らない人と一度きりの関係を持って、自分をとことん傷つけたいと思っていたのに、いざとなったらそんな勇気はなくなっていた。
「荷物はないの?」
「・・・・・・」
何も話さない私に、ダニエルはしつこく聞いたりはしなかった。
二人掛けの椅子の前後を向い合せにして、私に座るように合図をしてくれたけど、私はその場所から離れた所に座ろうとした。
「女の子の一人旅は危ないよ。特に夜眠っている時は、ヤバい奴らに狙われやすい。オレを用心棒だと思って、ここに座りなよ。」
どうにでもなれと思っていた割に、知らない人と隣同士に座るのは嫌だったけど、寝てしまっても私に何かするような人には見えなかった。
「何もしないよ。初めて会った女の子と、その場限りの関係なんてさ・・・好きじゃないんだ。君が思っている事がそうならだけどね・・・・好きでもない女の子とはしないから。」
口に出して言ってはいなかったけど、ずいぶん経ってからダニエルに言われた。
一度きりの関係をして、自分で自分を傷つけようと思っているように見えたと。
「ほら、綺麗じゃないけど枕変わりだ。カバンの上に足を乗せてもいいよ。座って眠るよりも、向かい側の座席に足を乗せて・・・これも掛けて。」
手慣れた感じで、向かい側の座席との間にカバンを置いて、まるでベッドの様にして私をそこで楽な姿勢で眠るようにしてくれた。
ダニエルは長い足を向かい側に乗せると、自分が来ていたコートを私に掛けてくれて、自分はパーカーのフードを被り、棚の上の毛布を私と自分の上に掛けた。
「余分に毛布は置いていないから、ふたりで一つだ。チョッと匂いがあるけど、毛布が無いと明け方冷えるから。でもさ・・・この方が温かいから・・・・眠れなくても目だけを瞑っていれば身体は休める。」
男の人と同じ布団で寝たのは、スンジョ君とダニエルだけ。
スンジョ君と同じ布団で眠った時も、緊張をしていたけどそれとは違う緊張があった。
思いつきで飛び出して、知らない人と知らない土地に行く。
片道分の料金だけしかなかったから、もう帰る事が出来ない。
この先の事がどうなるのかも判らないから、眠れることはないと思っていた。
毛布を掛けてから暫くすると、ふたりの体温で身体が温まると、眠れないと思っていたのに、知らない間に眠ってしまっていた。
早朝に終点の駅に付くと、ダニエルに起こされて一瞬そこがどこなのか判らなかった。
一瞬だけじゃない。
小さな駅の古びた駅舎。
冷たい空気が、ソウルの朝の空気よりも冷たかった。
駅前に商店があっても、萬屋みたいな店でコンビニどころか自販機も無かった。
改札を出ると、駅前のバス停に書いてある地名を見ても、一度も聞いたことも無ければ見たことも無い地名。
地図にも載っていないその村は、今まで自分が住んでいた所とは比べ物にならないくらい何もない所だった。

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知らない人と一度きりの関係を持って、自分をとことん傷つけたいと思っていたのに、いざとなったらそんな勇気はなくなっていた。
「荷物はないの?」
「・・・・・・」
何も話さない私に、ダニエルはしつこく聞いたりはしなかった。
二人掛けの椅子の前後を向い合せにして、私に座るように合図をしてくれたけど、私はその場所から離れた所に座ろうとした。
「女の子の一人旅は危ないよ。特に夜眠っている時は、ヤバい奴らに狙われやすい。オレを用心棒だと思って、ここに座りなよ。」
どうにでもなれと思っていた割に、知らない人と隣同士に座るのは嫌だったけど、寝てしまっても私に何かするような人には見えなかった。
「何もしないよ。初めて会った女の子と、その場限りの関係なんてさ・・・好きじゃないんだ。君が思っている事がそうならだけどね・・・・好きでもない女の子とはしないから。」
口に出して言ってはいなかったけど、ずいぶん経ってからダニエルに言われた。
一度きりの関係をして、自分で自分を傷つけようと思っているように見えたと。
「ほら、綺麗じゃないけど枕変わりだ。カバンの上に足を乗せてもいいよ。座って眠るよりも、向かい側の座席に足を乗せて・・・これも掛けて。」
手慣れた感じで、向かい側の座席との間にカバンを置いて、まるでベッドの様にして私をそこで楽な姿勢で眠るようにしてくれた。
ダニエルは長い足を向かい側に乗せると、自分が来ていたコートを私に掛けてくれて、自分はパーカーのフードを被り、棚の上の毛布を私と自分の上に掛けた。
「余分に毛布は置いていないから、ふたりで一つだ。チョッと匂いがあるけど、毛布が無いと明け方冷えるから。でもさ・・・この方が温かいから・・・・眠れなくても目だけを瞑っていれば身体は休める。」
男の人と同じ布団で寝たのは、スンジョ君とダニエルだけ。
スンジョ君と同じ布団で眠った時も、緊張をしていたけどそれとは違う緊張があった。
思いつきで飛び出して、知らない人と知らない土地に行く。
片道分の料金だけしかなかったから、もう帰る事が出来ない。
この先の事がどうなるのかも判らないから、眠れることはないと思っていた。
毛布を掛けてから暫くすると、ふたりの体温で身体が温まると、眠れないと思っていたのに、知らない間に眠ってしまっていた。
早朝に終点の駅に付くと、ダニエルに起こされて一瞬そこがどこなのか判らなかった。
一瞬だけじゃない。
小さな駅の古びた駅舎。
冷たい空気が、ソウルの朝の空気よりも冷たかった。
駅前に商店があっても、萬屋みたいな店でコンビニどころか自販機も無かった。
改札を出ると、駅前のバス停に書いてある地名を見ても、一度も聞いたことも無ければ見たことも無い地名。
地図にも載っていないその村は、今まで自分が住んでいた所とは比べ物にならないくらい何もない所だった。

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