ハニが一人で不安がっている
早く行かなければ・・・・・
ずっと泣いている下働きの女の子。
こんな夜中にひとりで暗い道を泣きながら走って来た。
若い両班の屋敷に沢山の雇い人を置くわけにもいかない。
私の屋敷にいるのはヘラの乳母と付き人が嫁いで来るときに一緒に来た二人。
ガンイさんが通いで食事等の事を世話をするために毎日通って、ギョンス様かギテ様が、時々来てはくれるが 使いを急に頼みたくても今はハニの具合の関係で私の屋敷には来ることが無い。
「スンリはどうしてる?」
しゃくり上げながら女の子は、息を整えようとしている。
「スンリ様はジュナ様を抱いて、奥様を見守っています。」
「そうですか・・・・」
スンリもショックを受けているに違いない。
もうすぐ生れる自分とヘラの子供よりも、ハニが生んでくれた双子たちの方が気がかりだ。
ヘラとは愛情のかけらもないお互い政略結婚で結ばれた。
生れてくる子供にはいけない事だとは思うが、私は一生ヘラを愛することはない。
それがハニと自分が何年か先に出会った時にヘラがそこにいたとしても愛するのはきっとハニだけだ。
静かな周囲とは反対に、ペク家の屋敷の中は慌ただしく感じた。
ハニが使っている部屋だけではなく、他のいくつかの部屋に明かりが灯り、裏口には汚れ物を運び出している女中がいた。
女の子は馬から下ろすとその女中の方に走って行き、スンジョにその女中は頭を下げた。
泣き腫らした目で間に合わなかったのかと思うと、自分の冷静さは無くなった。
廊下を急ぎ足で歩いて一番奥の南側のハニの部屋の前に来ると、戸がスッと開いた。
ジュリは大量に血が付いた白い布を抱え、震えながら涙を流していた。
「スンジョ・・・・・」
「ハニは・・・ハニは・・・・」
二度首を横に振った。
「もう・・・・・助からないと・・・・スンジョが帰って直ぐに沢山出血され、さっきは吐血して・・・・・・意識がもう・・・・ジュング様は旦那様と奥様をお迎えに行かれて明け方くらいには・・・・・ギテ様はスンハ様の養父母の所に向かわられて、お昼くらいに戻って来ます。」
涙を堪えながらジュリは汚れた白い布を持って、裏口の方に向かった。
スンジョの為に開けたままにされたハニの寝ている部屋。
毎日来ていた部屋なのに、淋しさが感じられるのはハニの命の灯が弱くなったからなのだろうか。
寝息さえ聞こえないハニ。
それでも胸は心臓が動いていることを証明するように上下していた。
青く白いハニの顔を見ると急に不安になって来た。
コは頭を下げてスンジョに告げた。
「明け方までは・・・・・・・何かありましたらお呼びください。」
それだけ告げて、部屋の中をスンジョとハニの二人だけにした。
コには、スンジョとハニの二人の思いはその空気の流れで理解していた。
もう手の施しようがない今のこの状態に、二人だけにしようとしてくれたのだ。
スンジョはハニの痩せた頬にそっと触れると、まだ温もりがあったが、大量の出血があったからなのだろうかなり低い体温だった。
「ハニ・・・・・・・一人じゃないから・・・大丈夫だよ。」
人は最後の時まで耳から音は聞く事は出来る。
一人じゃない事をハニに告げれば、もしかしたら目を開けたハニの顔を見ることが出来るかも知れない。
「二人だけだから・・・・
今ここには誰もいないから、あの幸せに暮らしていた二月の時の様にハニの唇に触れるよ。ハニはそうすると、いつも目を開けてくれたから。」
スンジョは心の中でそう囁いて、ハニの唇に自分の唇を合わせた。
まだ伝わる唇からの温もりに、涙がハニの顔にポトンと落ちた。
落ちるとわずかにハニの瞼が動いて、唇が開いた。

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早く行かなければ・・・・・
ずっと泣いている下働きの女の子。
こんな夜中にひとりで暗い道を泣きながら走って来た。
若い両班の屋敷に沢山の雇い人を置くわけにもいかない。
私の屋敷にいるのはヘラの乳母と付き人が嫁いで来るときに一緒に来た二人。
ガンイさんが通いで食事等の事を世話をするために毎日通って、ギョンス様かギテ様が、時々来てはくれるが 使いを急に頼みたくても今はハニの具合の関係で私の屋敷には来ることが無い。
「スンリはどうしてる?」
しゃくり上げながら女の子は、息を整えようとしている。
「スンリ様はジュナ様を抱いて、奥様を見守っています。」
「そうですか・・・・」
スンリもショックを受けているに違いない。
もうすぐ生れる自分とヘラの子供よりも、ハニが生んでくれた双子たちの方が気がかりだ。
ヘラとは愛情のかけらもないお互い政略結婚で結ばれた。
生れてくる子供にはいけない事だとは思うが、私は一生ヘラを愛することはない。
それがハニと自分が何年か先に出会った時にヘラがそこにいたとしても愛するのはきっとハニだけだ。
静かな周囲とは反対に、ペク家の屋敷の中は慌ただしく感じた。
ハニが使っている部屋だけではなく、他のいくつかの部屋に明かりが灯り、裏口には汚れ物を運び出している女中がいた。
女の子は馬から下ろすとその女中の方に走って行き、スンジョにその女中は頭を下げた。
泣き腫らした目で間に合わなかったのかと思うと、自分の冷静さは無くなった。
廊下を急ぎ足で歩いて一番奥の南側のハニの部屋の前に来ると、戸がスッと開いた。
ジュリは大量に血が付いた白い布を抱え、震えながら涙を流していた。
「スンジョ・・・・・」
「ハニは・・・ハニは・・・・」
二度首を横に振った。
「もう・・・・・助からないと・・・・スンジョが帰って直ぐに沢山出血され、さっきは吐血して・・・・・・意識がもう・・・・ジュング様は旦那様と奥様をお迎えに行かれて明け方くらいには・・・・・ギテ様はスンハ様の養父母の所に向かわられて、お昼くらいに戻って来ます。」
涙を堪えながらジュリは汚れた白い布を持って、裏口の方に向かった。
スンジョの為に開けたままにされたハニの寝ている部屋。
毎日来ていた部屋なのに、淋しさが感じられるのはハニの命の灯が弱くなったからなのだろうか。
寝息さえ聞こえないハニ。
それでも胸は心臓が動いていることを証明するように上下していた。
青く白いハニの顔を見ると急に不安になって来た。
コは頭を下げてスンジョに告げた。
「明け方までは・・・・・・・何かありましたらお呼びください。」
それだけ告げて、部屋の中をスンジョとハニの二人だけにした。
コには、スンジョとハニの二人の思いはその空気の流れで理解していた。
もう手の施しようがない今のこの状態に、二人だけにしようとしてくれたのだ。
スンジョはハニの痩せた頬にそっと触れると、まだ温もりがあったが、大量の出血があったからなのだろうかなり低い体温だった。
「ハニ・・・・・・・一人じゃないから・・・大丈夫だよ。」
人は最後の時まで耳から音は聞く事は出来る。
一人じゃない事をハニに告げれば、もしかしたら目を開けたハニの顔を見ることが出来るかも知れない。
「二人だけだから・・・・
今ここには誰もいないから、あの幸せに暮らしていた二月の時の様にハニの唇に触れるよ。ハニはそうすると、いつも目を開けてくれたから。」
スンジョは心の中でそう囁いて、ハニの唇に自分の唇を合わせた。
まだ伝わる唇からの温もりに、涙がハニの顔にポトンと落ちた。
落ちるとわずかにハニの瞼が動いて、唇が開いた。

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