王様と謁見し、世子様がスンジョが暫く漢陽を離れている間に自ら学んだ事を見て欲しいと言われ半日以上を宮殿で過ごした。
スンジョの様に優れた大人になりたいからあれ程嫌がっていた勉強を進んでしたことを目を輝かせて話すその様子が可愛かった。
兄妹のいない自分には、こんな風に努力したことを褒めた人はただ一人。
ハニも勉強が嫌いで女の子が学ぶ何もかもが好きではなく、いったい何が好きなのだろうと思ったことがあった。
身分の違う自分が聞いてはいけないと思い、自分から聞いたことはなかったが、ある時ハニ自身がスンジョに話したことがあった。
「私はね、幼馴染のミナの様に刺繍が好きだとか、楽器を上手に使って演奏するとかは無いし、付き人のジュリの様に、私の持ち物をきちんと片付けたり髪を結ってくれたりも出来ないし・・・・いったい何が出来るのかと考えたの。お父様やお母様は私が望むものは最小限は叶えてくれるし 、自由にさせてくださるの。でもね、それは私が恵まれた環境で育っただけの事。スンジョは何が出来るの?って聞いても、きっとスンジョは『特に・・・・』としか言ってくれないわよね?」
あの時私は何も答えなかった。
「スンジョのその頭の良い所が羨ましいわ。一緒に森に出かけても、何も目印もないけれど道にも迷わないし・・・・・・一度耳にしただけで、そのまま一文字も間違わずに紙に書き写せる・・・・・凄く羨ましい位に頭が良いのに、それを自慢したりもしない。自分の今の立場を恨んだりしないの?」
「どうにもならない事ですから。私はお嬢様がこうして道に迷わないようにお屋敷に戻れるように案内するのが仕事ですから。」
そう言ったけど、本当は自分の身分を恨んだ。
ポン家のジュング様の様に、婿養子になってお嬢様と結婚出来る事が羨ましかった。
生れた時からいつも一緒にいて、旦那様や奥様に可愛がられてもそれはお嬢様の遊び相手であり、危険から守るためだけが自分の役目だと判っていた。
幾ら記憶力が良くても、常民にはそれは意味のない物。
婚礼の朝、お嬢様は何も知らずに農機具小屋にいらした。
私はその前の日に父から、明日はお嬢様の婚礼があると聞かされていたから、小屋から出ないようにしていた。
お嬢様が私の唇にその柔らかな唇が重ならなかったら、一緒に逃げてと言われてもきっと逃げなかっただろう。
今は養子になってお嬢様の兄となっても変わらないことを今も言う事がないけれど、昔も今も私が出来る事はお嬢様が幸せになる事を願う事。
「とう様!」
気が付けばいつの間にか屋敷の前だった。
いまだにスンジョを慕っているジナを見ると、あの短い数ヶ月が三人の幸せな時間だったのだろう。
「外で待っていたの?」
「あのね、お父様がいらしたの。」
子供は日々成長している。
言葉を話せなかったジナが、実の両親の愛で思っている事を声に出すことが出来るようになっていた。
「ジナのお父様がいらしてるの?」
「うん、お父様がね、ジナの大好きなとう様に会いたいって。」
小さなジナの手が、スンジョの大きな手を掴むと家の中へ急ぐように引っ張って行った。
ジナの父親でガンイの夫は、スンジョが科挙試験を受ける事を知り、出来る事は協力をすると申し出てくれた。
娘を短い時間であっても、愛情を注いでくれたことへのお礼だと、何度もそう言ってくれた。
常民であったことを恨んだことはないとは言えないが、他人を思いやり自分が辛くても他人(ひと)が幸せだと思える事が自分の幸せなのだと感じた。
ジュングは、ジナにスンジョの屋敷に何人住んでいるのかを聞いてからは、あれほど毎日来ていたのにパタリと来なくなった。
科挙の試験の勉強の為、外に出ることもなく毎日勉強をしているスンジョは、ジュングが来なくなったことがどうしてなのかは特に気にすることもなかった。

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スンジョの様に優れた大人になりたいからあれ程嫌がっていた勉強を進んでしたことを目を輝かせて話すその様子が可愛かった。
兄妹のいない自分には、こんな風に努力したことを褒めた人はただ一人。
ハニも勉強が嫌いで女の子が学ぶ何もかもが好きではなく、いったい何が好きなのだろうと思ったことがあった。
身分の違う自分が聞いてはいけないと思い、自分から聞いたことはなかったが、ある時ハニ自身がスンジョに話したことがあった。
「私はね、幼馴染のミナの様に刺繍が好きだとか、楽器を上手に使って演奏するとかは無いし、付き人のジュリの様に、私の持ち物をきちんと片付けたり髪を結ってくれたりも出来ないし・・・・いったい何が出来るのかと考えたの。お父様やお母様は私が望むものは最小限は叶えてくれるし 、自由にさせてくださるの。でもね、それは私が恵まれた環境で育っただけの事。スンジョは何が出来るの?って聞いても、きっとスンジョは『特に・・・・』としか言ってくれないわよね?」
あの時私は何も答えなかった。
「スンジョのその頭の良い所が羨ましいわ。一緒に森に出かけても、何も目印もないけれど道にも迷わないし・・・・・・一度耳にしただけで、そのまま一文字も間違わずに紙に書き写せる・・・・・凄く羨ましい位に頭が良いのに、それを自慢したりもしない。自分の今の立場を恨んだりしないの?」
「どうにもならない事ですから。私はお嬢様がこうして道に迷わないようにお屋敷に戻れるように案内するのが仕事ですから。」
そう言ったけど、本当は自分の身分を恨んだ。
ポン家のジュング様の様に、婿養子になってお嬢様と結婚出来る事が羨ましかった。
生れた時からいつも一緒にいて、旦那様や奥様に可愛がられてもそれはお嬢様の遊び相手であり、危険から守るためだけが自分の役目だと判っていた。
幾ら記憶力が良くても、常民にはそれは意味のない物。
婚礼の朝、お嬢様は何も知らずに農機具小屋にいらした。
私はその前の日に父から、明日はお嬢様の婚礼があると聞かされていたから、小屋から出ないようにしていた。
お嬢様が私の唇にその柔らかな唇が重ならなかったら、一緒に逃げてと言われてもきっと逃げなかっただろう。
今は養子になってお嬢様の兄となっても変わらないことを今も言う事がないけれど、昔も今も私が出来る事はお嬢様が幸せになる事を願う事。
「とう様!」
気が付けばいつの間にか屋敷の前だった。
いまだにスンジョを慕っているジナを見ると、あの短い数ヶ月が三人の幸せな時間だったのだろう。
「外で待っていたの?」
「あのね、お父様がいらしたの。」
子供は日々成長している。
言葉を話せなかったジナが、実の両親の愛で思っている事を声に出すことが出来るようになっていた。
「ジナのお父様がいらしてるの?」
「うん、お父様がね、ジナの大好きなとう様に会いたいって。」
小さなジナの手が、スンジョの大きな手を掴むと家の中へ急ぐように引っ張って行った。
ジナの父親でガンイの夫は、スンジョが科挙試験を受ける事を知り、出来る事は協力をすると申し出てくれた。
娘を短い時間であっても、愛情を注いでくれたことへのお礼だと、何度もそう言ってくれた。
常民であったことを恨んだことはないとは言えないが、他人を思いやり自分が辛くても他人(ひと)が幸せだと思える事が自分の幸せなのだと感じた。
ジュングは、ジナにスンジョの屋敷に何人住んでいるのかを聞いてからは、あれほど毎日来ていたのにパタリと来なくなった。
科挙の試験の勉強の為、外に出ることもなく毎日勉強をしているスンジョは、ジュングが来なくなったことがどうしてなのかは特に気にすることもなかった。

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