二度目の訪問。
前に来た時からひと月くらい経ったのかな。
あの時はこんな風になるとは思っていなかった。
私とスンジョ君の向かい側に座っているサンウは、スンハがこの家に連れて来られた時にすごく面倒を見てくれたとお手伝いさんが言っていた。
知らない家で怖がっているスンハが、何も口にしなかったりした時に、アイスクリームを含ませてくれたと言っていた。
「あの・・・・おばさん・・・・・」
インウとよく似ているようで似ていない。
「なぁに?」
「これ・・・・スンハちゃんにあげてください。たった一日一緒にいただけですけど、このボードを使って会話をしたの。」
このハングルボードを使って、スンハが怖がらないようにと相手をしてくれていた。
家に持っている物と似ているから、スンハはそれを使っていたのだろう。
それを眺めていると、ドアがノックされてドンウと一緒にインウが入って来た。
病院に運ばれて来た時に比べると、かなり痩せて顔色もよくないが、落ち着いているように見えた。
「お待たせしました。」
サンウが少し横にずれて、インウとドンウはスンジョとハニたちの前に座ると同時に頭を下げた。
「スンジョ・・・・・ハニ・・・・・ゴメンなさい・・・・・・・・落ち着いたら、私のしたことの恐ろしさに・・・なんて言っていいのか。昨日スンジョに電話をして謝ろうと思って、病院のロビーで待っていたけど・・・・・来てくれなかった。ドンウに何もかも話したは、高校時代に片想いをしていたって。偶然、最近ハニと再会をして、スンジョが嫌っていたハニと結婚していたことを知って・・・・・・負けたと思って・・・・悔しくて・・・・負けたっておかしいよね。最初っからスンジョは私の事なんて、眼中になかったから・・・・ただのクラスメートだったのに、それでも再開した時に言って欲しかった。『綺麗になったね』って・・・・。だって、成績は上位にいたけど、スンジョにお似合いになる為に、整形をしたの・・・・・・・」
インウは自分の今までの事を話した。
数日前まで、現実を見ていなかった。
スンハは自分とスンジョの子供で、サンウの事は可愛がって育てたのに、興味がなかったと。
犯罪をした認識もなかったが、サンウが自分に抱き付い手訴えて来て目が覚めた。
歳の離れた姉は、インウの父の前の奥さんの子供で、一度も会ったことはなかったが、偶然にドンウと出会い人としては間違った恋愛をしてしまった。
そのことが原因で、自分は親から縁を切られドンウは離婚をしてしまった。
自分を裏切った夫のドンウの血を引いたサンウを連れて行くのは嫌だと言って、子供を引き取らなかった。
気性の激しかったインウは、精神状態が不安定になり治療をしなくてはいけなかったが、妊娠していてはその治療が出来ないと言うことで、子供を諦めた。
「子供を生めなくてもいい、小さいサンウを私は立派に育てると決めたのに・・・・・小さな子供を連れている人を見ると羨ましくて・・・・・・ごめんなさい・・・・・・・」
インウが一通り話をしたところで、秘書が大きな包みを持って現れそれをスンジョ達の前のテーブルに置いた。
「何ですか?」
「私は弁護士ですが、これは弁護士という肩書を切り離して、インウの夫ドンウからのお願いです。足りなければご希望の金額をおっしゃってください。」
包みをスンジョ達の方にずらすと、スンジョはそれを押し戻した。
「無かったことにしてくれと・・・・・そういう事ですか?」
「簡単に言えば・・・・そうです。そちらのお嬢様の治療費と・・・・」
スンジョはドンウをギロリと睨んだ。
「オレ達はお金は要りません。あなたはきっと今まで妻の為に、このように内密に済ませたのですね。それでは何も変わらないではないですか!」
「そちらのお嬢さんもまだ幼いですから、内密に済ませた方がいいと思いますよ。家内も反省していますし、病気を持っているので、内密にした方が・・・・・・・」
それまで黙っていたハニが口を開いた。
「間違った愛・・・・・・・お金で解決をすることは、本当の愛ではないです。インウが事実をちゃんと認めているのだから、これからどうするのかを決めればいいじゃないですか。お金では人の心を落ち着かすことは出来ない、もしインウが自分の子供が欲しかったら、もう一度考えればいいじゃない?私もインウと同じで・・・・・二人目の子供を生むことが出来なくて、ずっと自分を責めていた。でも、一番悲しむのは大人ではなくて子供。今生きている子供に目を向け話をしてあげないと、いつまでも亡くした子供の事で泣いていたらかわいそう。」
ハニはスンジョから聞いて、インウは自分で刺した傷の所為で、もう子供を生むことが難しいと教えてもらった。
それでも可能性はゼロではないことも知っている。
「そうだね。私はずっとサンウを見ていなかった。昨日そう言われて気が付いた。私もサンウも母親に捨てられたって・・・・・・・亡くした子供も私が捨てたことと同じ。それなら、その子供の為に、サンウを大切にし生きて行くわ。まだ私の心の治療は長くかかるけど、もっと強くなって必ず次にハニたちに会ったら、元気になったよと言えるように頑張るわ。」
ドンウの間違った愛は、彼の愛だけれどそれはスンジョやハニもそうした愛を与えてしまうこともある。
愛の裏返しは、自分で気が付かないこともあるけれど、気が付いたのなら今度は本当の愛に出会うことが出来るはず。
5人で会ってからは、サンウからは時々スンハの様子を聞く電話が入り、インウとはメールでのやり取りをしていた。
2ヶ月くらいした時のインウのメールで、ドンウとの子供が出来たことを知った。
その時もまだスンハは言葉が出なかったが、筆談のお蔭なのか文字を書く事が他の4歳児と比べられない程に良くできた。
春の桜の咲くころに、インウが無事に男の子を生んだことを知って、ハニは自分の事のように喜んだ。
「スンハ、あのね、サンウおねえちゃんに弟が生まれたの・・・赤ちゃんが生まれたんだよ。」
「あぁあ?」
「そう・・・赤ちゃん・・・・・・。」
「スンハも欲しいよね、妹が・・・・アッパとオンマにお願いをしてみないとね。」
暫くスンハは黙っていたが、そっと小さな手をハニのお腹に当てた。
「・・・・る・・・・・・あぁちゃ・・・・・」
「えっ?」
「スンハ、今・・・・・・・・」
小さな声で確かに聞こえた。
「いる・・・・赤ちゃん・・・・・・オンマのお腹に・・・・・・」
グミはビックリしてハニの顔を見た。
「ハニちゃん?」
「多分・・・・・・・・明日、スンジョ君と病院に行く予定なんです。」
ハニにもようやく新しい命が宿った。
もうあれから時間も経ち、スンハは7月には5歳になる。
子供にしか判らないテレパシーでもあるのか、スンジョもハニも診断を受けてから家族に話すつもりだった。
今度は絶対にハニもお腹の子供もオレが守るからと、スンジョに言われてハニは今度こそはと願っていた。
*・゜゚・*:.。..。.:*・゜*・゜゚・*:.。..。.:*・゜*・゜゚・*:.。..。.:*・゜*・゜゚・*:.。..。.:*・゜*・゜゚・*:.。..。.:*・゜完*・゜゚・*:.。..。.:*・゜*・゜゚・*:.。..。.:*・゜

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前に来た時からひと月くらい経ったのかな。
あの時はこんな風になるとは思っていなかった。
私とスンジョ君の向かい側に座っているサンウは、スンハがこの家に連れて来られた時にすごく面倒を見てくれたとお手伝いさんが言っていた。
知らない家で怖がっているスンハが、何も口にしなかったりした時に、アイスクリームを含ませてくれたと言っていた。
「あの・・・・おばさん・・・・・」
インウとよく似ているようで似ていない。
「なぁに?」
「これ・・・・スンハちゃんにあげてください。たった一日一緒にいただけですけど、このボードを使って会話をしたの。」
このハングルボードを使って、スンハが怖がらないようにと相手をしてくれていた。
家に持っている物と似ているから、スンハはそれを使っていたのだろう。
それを眺めていると、ドアがノックされてドンウと一緒にインウが入って来た。
病院に運ばれて来た時に比べると、かなり痩せて顔色もよくないが、落ち着いているように見えた。
「お待たせしました。」
サンウが少し横にずれて、インウとドンウはスンジョとハニたちの前に座ると同時に頭を下げた。
「スンジョ・・・・・ハニ・・・・・ゴメンなさい・・・・・・・・落ち着いたら、私のしたことの恐ろしさに・・・なんて言っていいのか。昨日スンジョに電話をして謝ろうと思って、病院のロビーで待っていたけど・・・・・来てくれなかった。ドンウに何もかも話したは、高校時代に片想いをしていたって。偶然、最近ハニと再会をして、スンジョが嫌っていたハニと結婚していたことを知って・・・・・・負けたと思って・・・・悔しくて・・・・負けたっておかしいよね。最初っからスンジョは私の事なんて、眼中になかったから・・・・ただのクラスメートだったのに、それでも再開した時に言って欲しかった。『綺麗になったね』って・・・・。だって、成績は上位にいたけど、スンジョにお似合いになる為に、整形をしたの・・・・・・・」
インウは自分の今までの事を話した。
数日前まで、現実を見ていなかった。
スンハは自分とスンジョの子供で、サンウの事は可愛がって育てたのに、興味がなかったと。
犯罪をした認識もなかったが、サンウが自分に抱き付い手訴えて来て目が覚めた。
歳の離れた姉は、インウの父の前の奥さんの子供で、一度も会ったことはなかったが、偶然にドンウと出会い人としては間違った恋愛をしてしまった。
そのことが原因で、自分は親から縁を切られドンウは離婚をしてしまった。
自分を裏切った夫のドンウの血を引いたサンウを連れて行くのは嫌だと言って、子供を引き取らなかった。
気性の激しかったインウは、精神状態が不安定になり治療をしなくてはいけなかったが、妊娠していてはその治療が出来ないと言うことで、子供を諦めた。
「子供を生めなくてもいい、小さいサンウを私は立派に育てると決めたのに・・・・・小さな子供を連れている人を見ると羨ましくて・・・・・・ごめんなさい・・・・・・・」
インウが一通り話をしたところで、秘書が大きな包みを持って現れそれをスンジョ達の前のテーブルに置いた。
「何ですか?」
「私は弁護士ですが、これは弁護士という肩書を切り離して、インウの夫ドンウからのお願いです。足りなければご希望の金額をおっしゃってください。」
包みをスンジョ達の方にずらすと、スンジョはそれを押し戻した。
「無かったことにしてくれと・・・・・そういう事ですか?」
「簡単に言えば・・・・そうです。そちらのお嬢様の治療費と・・・・」
スンジョはドンウをギロリと睨んだ。
「オレ達はお金は要りません。あなたはきっと今まで妻の為に、このように内密に済ませたのですね。それでは何も変わらないではないですか!」
「そちらのお嬢さんもまだ幼いですから、内密に済ませた方がいいと思いますよ。家内も反省していますし、病気を持っているので、内密にした方が・・・・・・・」
それまで黙っていたハニが口を開いた。
「間違った愛・・・・・・・お金で解決をすることは、本当の愛ではないです。インウが事実をちゃんと認めているのだから、これからどうするのかを決めればいいじゃないですか。お金では人の心を落ち着かすことは出来ない、もしインウが自分の子供が欲しかったら、もう一度考えればいいじゃない?私もインウと同じで・・・・・二人目の子供を生むことが出来なくて、ずっと自分を責めていた。でも、一番悲しむのは大人ではなくて子供。今生きている子供に目を向け話をしてあげないと、いつまでも亡くした子供の事で泣いていたらかわいそう。」
ハニはスンジョから聞いて、インウは自分で刺した傷の所為で、もう子供を生むことが難しいと教えてもらった。
それでも可能性はゼロではないことも知っている。
「そうだね。私はずっとサンウを見ていなかった。昨日そう言われて気が付いた。私もサンウも母親に捨てられたって・・・・・・・亡くした子供も私が捨てたことと同じ。それなら、その子供の為に、サンウを大切にし生きて行くわ。まだ私の心の治療は長くかかるけど、もっと強くなって必ず次にハニたちに会ったら、元気になったよと言えるように頑張るわ。」
ドンウの間違った愛は、彼の愛だけれどそれはスンジョやハニもそうした愛を与えてしまうこともある。
愛の裏返しは、自分で気が付かないこともあるけれど、気が付いたのなら今度は本当の愛に出会うことが出来るはず。
5人で会ってからは、サンウからは時々スンハの様子を聞く電話が入り、インウとはメールでのやり取りをしていた。
2ヶ月くらいした時のインウのメールで、ドンウとの子供が出来たことを知った。
その時もまだスンハは言葉が出なかったが、筆談のお蔭なのか文字を書く事が他の4歳児と比べられない程に良くできた。
春の桜の咲くころに、インウが無事に男の子を生んだことを知って、ハニは自分の事のように喜んだ。
「スンハ、あのね、サンウおねえちゃんに弟が生まれたの・・・赤ちゃんが生まれたんだよ。」
「あぁあ?」
「そう・・・赤ちゃん・・・・・・。」
「スンハも欲しいよね、妹が・・・・アッパとオンマにお願いをしてみないとね。」
暫くスンハは黙っていたが、そっと小さな手をハニのお腹に当てた。
「・・・・る・・・・・・あぁちゃ・・・・・」
「えっ?」
「スンハ、今・・・・・・・・」
小さな声で確かに聞こえた。
「いる・・・・赤ちゃん・・・・・・オンマのお腹に・・・・・・」
グミはビックリしてハニの顔を見た。
「ハニちゃん?」
「多分・・・・・・・・明日、スンジョ君と病院に行く予定なんです。」
ハニにもようやく新しい命が宿った。
もうあれから時間も経ち、スンハは7月には5歳になる。
子供にしか判らないテレパシーでもあるのか、スンジョもハニも診断を受けてから家族に話すつもりだった。
今度は絶対にハニもお腹の子供もオレが守るからと、スンジョに言われてハニは今度こそはと願っていた。
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