ハニは病院を出ると、携帯をカバンから取り出した。
着信記録に、ギテ先輩の名前が出ていた。
リダイヤルして、数回の呼び出し音ですぐに明るい声でギテ先輩が応えた。
<ハニ、今日は何時に来てくれるんだ?>
「先輩、今日は病院に行っていたから行けなくて・・・・・・ごめんなさい。これからお店を手伝わないと・・・・・・」
ふと風に懐かしい香りがして、ハニは辺りを見回した。
<・・・・・・よ・・・・ハニ?・・・・・ハニ?>
ギテ先輩の呼びかけに、ハニはその香りが気のせいかと思った。
「ごめんなさい・・・何でした?」
<気を付けて帰れよ。暗くなったら、足元が見えないだろう?ハニは片方の目だけが頼りなんだからって、言ったんだよ>
ギテ先輩は、軽い感じの人だが本気でハニが好きだと言うことは、ハニ自身は知らない。
電話を切ってハニはバンスンおばさんの店に急いだ。
「待って・・・・」
ハニは小走りで先を急いでいたら、急に誰かに呼び止められた。
その声は、心臓がドキドキとときめくほどに聞きたくて聞きたくて仕方のなかった懐かしい声。
ハニは栗色の長い髪を靡かせて振り向いた。
白い肌に反比例するように、顔の右半分に酷い痣を見てその声の持ち主は驚いた顔でハニを見ていた。
いつものように、ハニは髪の毛を取ってサッと顔の痣を隠した。
「なぁに?」
ハニは出来る限り普通に話せたことが嬉しかった。
嬉しかったけどその男性(ひと)は、ハニを初めて見るような顔をしていて、どこか不安そうにしていた。
一瞬目が合ったけど、その男性の痣を直視している。
ハニはその男性・・・・スンジョが自分の事を忘れているのが判り、直ぐに視線を外した。
スンジョ君、私の事を忘れてるの?
そんなにじっと見ないで・・・・・・・、スンジョ君は一度見たり聞いたりするだけで覚えてしまうでしょ?
スンジョは苦しそうに頭を押さえて、一度目を閉じて考えているようで、何かを思い出すように聞いて来た。
「オレの部屋の写真の女の子に似ている。会ったこと無いかな?」
「・・・ヤ・・・ヤダ・・・古いね、そのナンパの仕方。君・・・・・イケメンでもナンパの仕方も知らないんだ。・・・・・は・・・初めて会ったよ。」
気の所為か・・・・・・
「ペク・スンジョというんだけど・・・・君の名前は?」
「私?私も・・・・不思議だね、私の苗字もペクって言うの。名前はアニ・・・・ペク・アニ。母と二人暮らしなの・・・・・今から母を迎えに行かないといけないから・・・・ごめんなさい。」
ハニはクルッと向きを変えて歩き出した。
「また逢えないかな・・・・・・。」
振り向けば堪えていた涙がこぼれそうで、一度瞬きをして応えた。
「来週・・・・・来週になったらまたここに来るね。」
そう来週も、ミンさんの診察がある。
「連絡先は・・・・・・・・。」
スンジョ君から連絡先を聞かれたけど、胸が苦しくて張り裂けそうで声を出して答えたら今までの思いが爆発して私自身が可笑しくなりそう。
記憶を無くして不安そうに見ているスンジョ君が、可哀想で・・・・・・・・・。
私の所為。私がわがままを言わなかったら事故も起きなかった。
泣きたくて、声に出して、言葉にしたくて私はその場にいるのが辛くて、逃げ出してしまった。
一番近くて隠れやすい脇道に隠れるようにして入り込んだ。
行きかう人とぶつかりながら、スンジョ君が私を追って来て、脇道に入ったことに気が付かなくて通り過ぎてしまった。
「スンジョ君・・・・・・・生きていたんだ。良かった・・・でも・・・・記憶が無くなってた・・・・。ううん、きっと私はこんな顔だから・・・・・・気が付かなかったんだ。今の私は右目も良く見えないし・・・・・・。」
ハニは建物の陰に入り、声を押し殺してしゃがみ込んで泣いた。
人がたくさん歩いていても、脇道の建物の陰で泣いているハニに誰も気づかないで通って行く。
町の騒音の中でも聞こえるスンジョ君が私を探して呼んでいる声だけが聞こえる。
見つめてほしい、抱きしめてほしい、キスしてほしい。
スンジョ君が私の事を忘れていてもいいから・・・・・・・私を呼んで欲しい。

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着信記録に、ギテ先輩の名前が出ていた。
リダイヤルして、数回の呼び出し音ですぐに明るい声でギテ先輩が応えた。
<ハニ、今日は何時に来てくれるんだ?>
「先輩、今日は病院に行っていたから行けなくて・・・・・・ごめんなさい。これからお店を手伝わないと・・・・・・」
ふと風に懐かしい香りがして、ハニは辺りを見回した。
<・・・・・・よ・・・・ハニ?・・・・・ハニ?>
ギテ先輩の呼びかけに、ハニはその香りが気のせいかと思った。
「ごめんなさい・・・何でした?」
<気を付けて帰れよ。暗くなったら、足元が見えないだろう?ハニは片方の目だけが頼りなんだからって、言ったんだよ>
ギテ先輩は、軽い感じの人だが本気でハニが好きだと言うことは、ハニ自身は知らない。
電話を切ってハニはバンスンおばさんの店に急いだ。
「待って・・・・」
ハニは小走りで先を急いでいたら、急に誰かに呼び止められた。
その声は、心臓がドキドキとときめくほどに聞きたくて聞きたくて仕方のなかった懐かしい声。
ハニは栗色の長い髪を靡かせて振り向いた。
白い肌に反比例するように、顔の右半分に酷い痣を見てその声の持ち主は驚いた顔でハニを見ていた。
いつものように、ハニは髪の毛を取ってサッと顔の痣を隠した。
「なぁに?」
ハニは出来る限り普通に話せたことが嬉しかった。
嬉しかったけどその男性(ひと)は、ハニを初めて見るような顔をしていて、どこか不安そうにしていた。
一瞬目が合ったけど、その男性の痣を直視している。
ハニはその男性・・・・スンジョが自分の事を忘れているのが判り、直ぐに視線を外した。
スンジョ君、私の事を忘れてるの?
そんなにじっと見ないで・・・・・・・、スンジョ君は一度見たり聞いたりするだけで覚えてしまうでしょ?
スンジョは苦しそうに頭を押さえて、一度目を閉じて考えているようで、何かを思い出すように聞いて来た。
「オレの部屋の写真の女の子に似ている。会ったこと無いかな?」
「・・・ヤ・・・ヤダ・・・古いね、そのナンパの仕方。君・・・・・イケメンでもナンパの仕方も知らないんだ。・・・・・は・・・初めて会ったよ。」
気の所為か・・・・・・
「ペク・スンジョというんだけど・・・・君の名前は?」
「私?私も・・・・不思議だね、私の苗字もペクって言うの。名前はアニ・・・・ペク・アニ。母と二人暮らしなの・・・・・今から母を迎えに行かないといけないから・・・・ごめんなさい。」
ハニはクルッと向きを変えて歩き出した。
「また逢えないかな・・・・・・。」
振り向けば堪えていた涙がこぼれそうで、一度瞬きをして応えた。
「来週・・・・・来週になったらまたここに来るね。」
そう来週も、ミンさんの診察がある。
「連絡先は・・・・・・・・。」
スンジョ君から連絡先を聞かれたけど、胸が苦しくて張り裂けそうで声を出して答えたら今までの思いが爆発して私自身が可笑しくなりそう。
記憶を無くして不安そうに見ているスンジョ君が、可哀想で・・・・・・・・・。
私の所為。私がわがままを言わなかったら事故も起きなかった。
泣きたくて、声に出して、言葉にしたくて私はその場にいるのが辛くて、逃げ出してしまった。
一番近くて隠れやすい脇道に隠れるようにして入り込んだ。
行きかう人とぶつかりながら、スンジョ君が私を追って来て、脇道に入ったことに気が付かなくて通り過ぎてしまった。
「スンジョ君・・・・・・・生きていたんだ。良かった・・・でも・・・・記憶が無くなってた・・・・。ううん、きっと私はこんな顔だから・・・・・・気が付かなかったんだ。今の私は右目も良く見えないし・・・・・・。」
ハニは建物の陰に入り、声を押し殺してしゃがみ込んで泣いた。
人がたくさん歩いていても、脇道の建物の陰で泣いているハニに誰も気づかないで通って行く。
町の騒音の中でも聞こえるスンジョ君が私を探して呼んでいる声だけが聞こえる。
見つめてほしい、抱きしめてほしい、キスしてほしい。
スンジョ君が私の事を忘れていてもいいから・・・・・・・私を呼んで欲しい。

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