一人でいる病室は嫌だった。
小さなころに亡くなった、ママを思い出してしまう。
お見舞いに行くとママはこうして外を見ていた。あの時は何を考えていたのか判らなかったけど、今は判るような気がする。
ママはもう治らない病気で、会えなくなるパパや私を思っていた。
私は治るけど会うことが出来なくなるスンジョ君を思っていた。
「ハニ~・・・・ハニ~。」
小さな声で遠慮しがちに呼んでいる声の方を見ると、ミナとジュリが病室のドアの隙間から覗いていた。
「ミナ、ジュリ・・・・・入って。」
ハニにそう言われると、なんだかほっとしたように息を吐いて二人は病室に入って来た。
「全然知らなかったよ・・・・・妊娠したなんて・・・・・。」
「相手って・・・・ジュングが言っていたけど、ペク・スンジョなの?ハニに全く無関心だったのに、何時そういう事をしたのよ。」
ハニは何と言っていいのか判らずしばらく考えて一言だけ言った。
「家を出る前に・・・・・・・・一度だけ・・・・・。
二人は一応ジュングから聞いていたが、スンジョを嫌いなジュングの言葉を信じられなかった。
「たった一度で妊娠しちゃうなんて・・・・・・ハニって本当に不思議な子だよ。」
ジュリの明るい言い方は、嫌味にも聞こえず普段通りに元気づけてくれている。
「ペク・スンジョには言ったの?あんたの子を妊娠しちゃったって。」
静かにハニは首を振った。
「言ってない・・・・・だってスンジョ君はヘラが大学を出たら結婚するんだよ。言えないし言わないよ。」
「金持ちなんだからたくさんお金を貰えばいいじゃん!」
ジュリの言うことも判るけど、そんなことをしたらお金が欲しくてオレを誘ったのかと言われてしまう。
「ハニ・・・・ここに来るまでジュリと話したんだけど、出来ればジュングとの結婚をやめた方がいいよ。あんたの事だから、ペク・スンジョへの思いは断ち切れないでしょ?おまけに彼の子供を妊娠しちゃったんだから。今のハニでジュングと結婚しても、二人が不幸になるよ。最初はスンジョの子供でも受け入れると言っても、成長すればジュングとは親子じゃないのも気が付くし子供の顔も父親と似ていない時が付くよ。もし・・・もしもだよ、ジュングとの子供が出来たら、いくらハニの事が好きなジュングでも、疎ましく思うようになるよ。」
「判ってる・・・・でもこの子を生みたいから・・・・・・・・」
「ハニは、その子を生みたいからジュングと結婚するって言うんだよね。結婚するってただ一緒に住むだけじゃないんだよ。」
「そんなこと判ってるよ。」
「スンジョしか好きになれないハニが、隣にジュングが寝ていて夫婦として・・・・・・・その・・・・・・・・出来る?」
「出来るって?」
さすがに何でも言える二人でもまだ未婚だ。口に出してストレートには言いにくい。
「だからぁ・・・・・・・・ハニが妊娠するようなこと!スジョとしたことよ。」
そう言われてその時は二人に出来ると言った。
でも、ジュングが毎日お見舞いに来てくれて座っている場所も近くなって、顔も近くなって私にキスをしようとした。
私はジュングと結婚するんだから、我慢して我慢して気が付いたら目をギュッと閉じて唇を固く結んで身体を緊張させていた。
「ジュング?」
「そんなに緊張して、身構えたらしたらいかんってことだろ?」
ジュングを傷つけてしまった。
キス一つも身構えてしまうのなら、結婚なんてやっぱり出来ない。
ジュングはずっと待つと言ってくれた。
そんなことが有って体調も安定して退院したけど、相変わらず悪阻が酷くて店の手伝いどころか学校で講義を受けることが難しくて休学した。
巷でスンジョ君とヘラが正式に婚約して、私が休学届を出したその日の夕方に医学部に復学届を出したと聞いた。
あれは退院して店の二階で安静にしている時だった。
そしてあれが最初だった。

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小さなころに亡くなった、ママを思い出してしまう。
お見舞いに行くとママはこうして外を見ていた。あの時は何を考えていたのか判らなかったけど、今は判るような気がする。
ママはもう治らない病気で、会えなくなるパパや私を思っていた。
私は治るけど会うことが出来なくなるスンジョ君を思っていた。
「ハニ~・・・・ハニ~。」
小さな声で遠慮しがちに呼んでいる声の方を見ると、ミナとジュリが病室のドアの隙間から覗いていた。
「ミナ、ジュリ・・・・・入って。」
ハニにそう言われると、なんだかほっとしたように息を吐いて二人は病室に入って来た。
「全然知らなかったよ・・・・・妊娠したなんて・・・・・。」
「相手って・・・・ジュングが言っていたけど、ペク・スンジョなの?ハニに全く無関心だったのに、何時そういう事をしたのよ。」
ハニは何と言っていいのか判らずしばらく考えて一言だけ言った。
「家を出る前に・・・・・・・・一度だけ・・・・・。
二人は一応ジュングから聞いていたが、スンジョを嫌いなジュングの言葉を信じられなかった。
「たった一度で妊娠しちゃうなんて・・・・・・ハニって本当に不思議な子だよ。」
ジュリの明るい言い方は、嫌味にも聞こえず普段通りに元気づけてくれている。
「ペク・スンジョには言ったの?あんたの子を妊娠しちゃったって。」
静かにハニは首を振った。
「言ってない・・・・・だってスンジョ君はヘラが大学を出たら結婚するんだよ。言えないし言わないよ。」
「金持ちなんだからたくさんお金を貰えばいいじゃん!」
ジュリの言うことも判るけど、そんなことをしたらお金が欲しくてオレを誘ったのかと言われてしまう。
「ハニ・・・・ここに来るまでジュリと話したんだけど、出来ればジュングとの結婚をやめた方がいいよ。あんたの事だから、ペク・スンジョへの思いは断ち切れないでしょ?おまけに彼の子供を妊娠しちゃったんだから。今のハニでジュングと結婚しても、二人が不幸になるよ。最初はスンジョの子供でも受け入れると言っても、成長すればジュングとは親子じゃないのも気が付くし子供の顔も父親と似ていない時が付くよ。もし・・・もしもだよ、ジュングとの子供が出来たら、いくらハニの事が好きなジュングでも、疎ましく思うようになるよ。」
「判ってる・・・・でもこの子を生みたいから・・・・・・・・」
「ハニは、その子を生みたいからジュングと結婚するって言うんだよね。結婚するってただ一緒に住むだけじゃないんだよ。」
「そんなこと判ってるよ。」
「スンジョしか好きになれないハニが、隣にジュングが寝ていて夫婦として・・・・・・・その・・・・・・・・出来る?」
「出来るって?」
さすがに何でも言える二人でもまだ未婚だ。口に出してストレートには言いにくい。
「だからぁ・・・・・・・・ハニが妊娠するようなこと!スジョとしたことよ。」
そう言われてその時は二人に出来ると言った。
でも、ジュングが毎日お見舞いに来てくれて座っている場所も近くなって、顔も近くなって私にキスをしようとした。
私はジュングと結婚するんだから、我慢して我慢して気が付いたら目をギュッと閉じて唇を固く結んで身体を緊張させていた。
「ジュング?」
「そんなに緊張して、身構えたらしたらいかんってことだろ?」
ジュングを傷つけてしまった。
キス一つも身構えてしまうのなら、結婚なんてやっぱり出来ない。
ジュングはずっと待つと言ってくれた。
そんなことが有って体調も安定して退院したけど、相変わらず悪阻が酷くて店の手伝いどころか学校で講義を受けることが難しくて休学した。
巷でスンジョ君とヘラが正式に婚約して、私が休学届を出したその日の夕方に医学部に復学届を出したと聞いた。
あれは退院して店の二階で安静にしている時だった。
そしてあれが最初だった。

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