若い世子との世子嬪の姿を遠く離れた場所から見ている、両班ではないと一目でわかる夫婦がいた。
夫の方は目に涙を浮かべ、妻の方はニコニコと笑みを浮かべていた。

「父さんが来ている事を知っているのかしら。」
「こら『父さん』などと言っては・・」
夫は、王妃がまだ世子嬪だった頃、記憶がなくどこの誰かもわからない時に、一緒に過ごしていた行商のジュングだった。

「立派になられて、可愛い世子嬪と末永く幸せになって欲しい。この先の人生は、我々が知ることもない困難な事が起きるのだろうが、我々は王室があって生きている。」
ジュングは、生まれてからの数年のスンと、時々数名の御付きの人を伴って静養に島に来てくれていた。
その王様の気遣いに、ジュングはこの先も安定した世の中が続くことだろうと信じた。

「ポン様、こちらに来ていただけませんか?奥様も。」
着慣れない韓服が場違いで怪しい人物と思われたのだろうか。
「私たちは招待されて・・」
ジュングの妻のジュリは、王宮から届いた書状を見せようとしたが、ふたりに声を掛けた内官は慌てることなく軽く頭を下げた。
「別室でお待ちの方がいらっしゃいます。」
どうぞこちらにと、案内される方に2人は着いて行くしかなかった。



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