キョンは皇籍から名前どころか痕跡まで誰にも知られずに消えた。
正確には、恵景妃にだけ王命として、キョンを皇籍から削除することを伝えられた。
それは、母と子としての縁も切れるということではないが、キョンは王族ではなくなるだけではなくそこで育った事実もないことになった。
仕方がないことではあった。
母が王の側室でも、キョンは王族とは違うのだから。
「尹家のヘラでいることはもうできない。できないけれど私はいつまでもキョンの母でいることはできる。この国一番の商人の娘として、何の苦労もなく生きていたけれど、判断を間違えて行ったことで深い心の傷を負って、それを隠し側室として入宮した。
慕っていた当時の世子の傍にいるだけで良かった、行方不明になっている正室がこのまま見つからなければ私がその座につくのだから。」
そこが自分の居場所だと信じて傷を癒やしてきたが、キョンが生まれて一年が過ぎた頃にその望みは消えたけど、それで良かったのかもしれない。
こうして私は自由に平和寺を訪れて、離れたキョンと会うことができるのだから。
「恵景妃様、お待たせいたしました。」
「キョン・・・・」
王宮を出てから十年。
毎月会いに来ていたが、会うたびに成長している様子を目の当たりにすると、一緒に暮らすことができない寂しさに目頭が熱くなった。
「キョンと呼んではいけないわね、恵純・・・変わりなく過ごしていましたか?」
キョンは僧となるために寺に入門した時に、住職から王様から預かった名前を使うように言われた。
血の繋がりはなくても、父の思いが有り難かった。
「はい、王様王妃様もお変わりないでしょうか・・・・」
白い肌に薄い茶色の瞳は忘れることもできないあの日のあの商人を思い出させる。
体の痛みも心の傷も記憶として残り消えることはない。
「実は先日ある方にお会いしました。」
「ある方とは?」
キョンの顔が少し暗くなった。
「私の父親と思
われる方です。」
恵景妃はさぁっと血の気が引く思いがした。
「恵景妃様のご実家に伺った時に、その方に呼び止められ、私とよく似ていらしたのでお互いに気になりましたので、話をさせていただきました。」
隠し通したかったことを、まさか知られてしまうとは思わなかった。

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正確には、恵景妃にだけ王命として、キョンを皇籍から削除することを伝えられた。
それは、母と子としての縁も切れるということではないが、キョンは王族ではなくなるだけではなくそこで育った事実もないことになった。
仕方がないことではあった。
母が王の側室でも、キョンは王族とは違うのだから。
「尹家のヘラでいることはもうできない。できないけれど私はいつまでもキョンの母でいることはできる。この国一番の商人の娘として、何の苦労もなく生きていたけれど、判断を間違えて行ったことで深い心の傷を負って、それを隠し側室として入宮した。
慕っていた当時の世子の傍にいるだけで良かった、行方不明になっている正室がこのまま見つからなければ私がその座につくのだから。」
そこが自分の居場所だと信じて傷を癒やしてきたが、キョンが生まれて一年が過ぎた頃にその望みは消えたけど、それで良かったのかもしれない。
こうして私は自由に平和寺を訪れて、離れたキョンと会うことができるのだから。
「恵景妃様、お待たせいたしました。」
「キョン・・・・」
王宮を出てから十年。
毎月会いに来ていたが、会うたびに成長している様子を目の当たりにすると、一緒に暮らすことができない寂しさに目頭が熱くなった。
「キョンと呼んではいけないわね、恵純・・・変わりなく過ごしていましたか?」
キョンは僧となるために寺に入門した時に、住職から王様から預かった名前を使うように言われた。
血の繋がりはなくても、父の思いが有り難かった。
「はい、王様王妃様もお変わりないでしょうか・・・・」
白い肌に薄い茶色の瞳は忘れることもできないあの日のあの商人を思い出させる。
体の痛みも心の傷も記憶として残り消えることはない。
「実は先日ある方にお会いしました。」
「ある方とは?」
キョンの顔が少し暗くなった。
「私の父親と思
われる方です。」
恵景妃はさぁっと血の気が引く思いがした。
「恵景妃様のご実家に伺った時に、その方に呼び止められ、私とよく似ていらしたのでお互いに気になりましたので、話をさせていただきました。」
隠し通したかったことを、まさか知られてしまうとは思わなかった。

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