自分を見るスンの瞳にスンジョは世子の顔から父の顔になっていた。
離れた所にいるハニや女官たちからはその表情は見えないが、恐らく宮中にいる全ての人はその顔を見たことはない。

「スン、おいで。」
スンの小さな手を握り、昇っていた木から少し離れて木の先を指さした。
「あの木は高いか?」
「はい。」
「高くてもこの国の民を全て見ることは出来ない。スンは何も知らず育てられたが、お前はもっと高い所に行かなければいけない。今は何も分からなく、スンは自分がここでの生活に戸惑っているかもしれない。おじい様もおばあ様もそして父も母もいずれはこの世からいなくなる。国の一番高い所に立つことになるお前は、姉しか血縁者はいなくなる。」
「キョンは?」
スンジョはキョンのことを敢えて言わなかったのは、スンに問われて戸惑った。

「キョンは側室の子だから?」
「いつか話すよ。」
キョンの出生については、誰にもまだ話したことはない。
それは尹家の勢力がまだ大きい時期で、郡主の縁談の話が出ているので、嫁ぎ先が決まるまでは静かにしていたいと思っていた。

「スンが母上と戻って来てから忙しかったが、これからは一緒にいる時間はある。学問の方もとても優秀だと先生が褒められていた。」
その言葉にスンは子供らしく目を輝かせ、頬を赤くした。
「明日、父が馬に乗せて上げるから、少し宮殿の外に連れて行ってあげるよ。」
「本当?馬に乗るの?」
「あぁ、時々これからはスンと馬に乗って出かけよう。その代わり、下着姿で木に登ったり姉の髪を引っ張ったりしないで学問を頑張りなさい。
スンは、まだ姉のスンハとの喧嘩の原因について不満があった。
だが、スンジョはスンがなぜ怒って姉と喧嘩をしたのか想像がついた。
嫁ぎ先の話が出ている今、一度母であるハニと三人で話しをしようと思った。


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