ポトン・・ポトン・・・
洗面ボウルの水面に数的雫が落ちて、波紋が広がった。
小さな音が静かな室内にはっきりと聞こえるが、その音がなぜか穏やかに眠りを起こしてくれる母の手の温もりのように、ハニの意識の中に聞こえて来た。

誰?

そう声を出して聞いてみたが、その人は何も応えずにハニの額のタオルと交換した。
ひんやりとしたタオルの冷たさが心地よく、それよりもその人の指先の温もりが心地よく感じたが、その感触は初めてのようなそうでないような気がした。

えっ!

その人の顔を見てハニはその言葉しか思い浮かばなかった。

「気が付いたか?」
スンジョ君・・どうしてここに・・・
「どうした?声を出せないのか?」
「あ・・・・・」
声が出ていないの?私は声を出しているよ。
「高い熱が出て、丸二日眠り続けていたから声が出にくいのだろう。無理に話そうとしなくてもいい。」
そうなんだ・・・
でも、どうしてスンジョ君がここにいるの?おばさんに頼まれたの?

ハニは出ない声でスンジョに聞いたが、スンジョの耳には聞こえるはずはない。
「待ってろ・・・部屋に行って紙とペンを持って来るから。」
部屋に行ってって・・・このマンションに住んでいるのは知っているけど、ヘラが行かないでって言ったらどうなるの?

ハニの心の声までスンジョには聞こえない。
何か伝えたい事がある事はその様子で分かるから、スンジョは安心するようにとハニにそう手で表現をして部屋から静かに出て行った。


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