毎日が平凡な日々・・・・・パパは平凡が一番いいといつも言っているけど、私は刺激的な生活をしてみたいと思う。
この大都会のソウルに住んでいるのに、毎日が代わり映えのない生活に、平凡な顔の平凡な私が生きている。

「オ看護師、口からよだれが流れていますよ。」
「えっ!よだれ?」
唇の端を指で触れるよりも先に、開いたノートを見るとしっかりと雫の後が付いていた。
「すみませんねぇ・・・暇なクリニックで・・・」
人のよさそうなその人は、白衣を着ていなければ、穏やかなおじいさんと言われそうな男性だった。
「まったくですよ。時代物のドラマか映画でしか見た事がないような建物じゃあ・・・患者は来ないですよね。」
「そんなクリニックに看護師として雇ってくれと言って来たのは、どこのどなたでしょうか?」
よだれのシミを拭いているハニは、一応聞いてはいるが答える事が出来なかった。
「希望していた所が全部不採用になっていたから、最後の頼みの綱だって・・・言っていませんでしたか?」

ハニは無事に看護師の試験に受かり、順調に看護大学を卒業したものの、看護師求人の採用は大学のランクで採用が決められているように思った。

「パラン大学に行けれたら、きっともう少し仕事が忙しい病院に行けたかもしれない・・・」
白衣を脱ぎながら穏やかな医師は少し顔の表情を変えて、ハニの傍の椅子に腰かけた。
「建物を建て替えるにしても、患者が来なければ意味無いし・・・先生、クリニックを閉めたらどうですか?」
「閉めようか?」
「そうしましょう。その代り私の次の仕事先を紹介してくだ・・・・・」
軽い気持ちで話していたハニは、横を向いた時に見た医師の顔が、何か真剣な事を考えている事に気が付いた。

「先生?先生・・・冗談ですから・・先生が人よさそうだから、ここに雇ってくださいと言ったんですよ。」
「いや・・・ここを閉めようと思う。ワシも年齢には勝てなくてな・・・」
医師からの引退の話を聞かされたハニは、憧れの看護師になった時のあの最高な気持ちの時が随分と昔に思えるくらいに、一気にどん底に落ちて行った。



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