スンジョもハニもドキドキとしていた。
ハニはスンハとスンリを産む時に、その時のことを思い出して不安になっていないだろうかとずっと思っていた。
「大丈夫だ、お袋が付いている。」
助手席で心配そうに前方を見ているハニに、スンジョは膝の上でこぶしを握っているハニの手を包み込むように手を乗せた。
「大丈夫だよね・・・でも初めてのお産って、すごく不安で怖いの。」
そのお産に自分は付いている事が出来なかった。
その時のことは自分の中ではいつまで経っても消える事のない後悔という記憶の一つだった。

「スンハが産まれる時は本当に不安だったよな・・・・」
「そんなつもりで言ったのじゃないよ。初めてのことって本当に不安になるから、ただそう思っただけ。」
あの頃のハニにはスンハが産まれる事の不安もあっただろうが、これからの生活と自分の身に起きた事の方が重かった。
「オレがそう思っているのと同じくらいに、お袋も可愛がっていたお前が家を出てから、ずっと塞ぎ込んでいたし、スンハが産まれた時に何もしてあげられなかったといつも言っていた。スンハが妊娠している事を伝えた時は、歓声を上げるどころか大きな声で泣いていたからな・・『やっとあの時の償いが出来る』って。だからバイトが忙しいインスンに変わって定期健診に付き添う事や、ひ孫の誕生のための準備を楽しんでいたんだと思うよ。」

グミにとっては初めてのひ孫でハニとスンジョにとっては初めて孫。
親友だったミナやジュリとジュングの子供たちはまだ子供が結婚をしていないから、知っている人たちの中でも早くに孫の誕生を祝う立場になった。

「スンリ、病院に着いたから起きろよ。」
長時間の移動で後部座席のスンリは眠っていた。
声を掛けても起きれ層のないスンリをスンジョが抱くと、ハニは先に病院の中に入った。

「ハニちゃん・・・産まれたの・・・ついさっき産まれたの。元気な男の子だって・・・インスン君とご両親も産まれる時に間に合ったのよ。」
「インスン君のご両親来てくださったの?」
「さすがにね、孫が産まれそうだというのに来ないのも気が引けたみたいよ。」
結婚式には参列してくれなかった。
ペク家は全員参列したが、ファン家のインスンの身内はインスンの妹と弟だけの寂しい物だった。

「インスン君、本当に頑張っていたの。大学内のテストでも学外のテストでも成績は落ちないし、バイトも本当に頑張ってスンハも頑張っていたから分かってくれたみたい。」
「よかった・・・よかった・・・」
本当によかった。
スンハはハニの頑張るという性格を受け継いだ。
だから、どんなに辛くても明るい笑顔で頑張っている姿を見て、インスンの両親が許してくれたのだと思う。
スンハの成績も、生活に追われて落ちる事もなく、むしろ人に負けたくないと言う思いが成績が上がったのだろう。

分娩室近くの廊下で、インスンとインスンの両親は改めてハニとスンジョに挨拶をして、お互いに初めての孫の誕生を喜び合っていた。




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