こんな日が来るとは思ってもいなかった。
窓の外は穏やかで温かな陽射しと、時々吹く風に花弁が舞っている。
今オレの目の前で生まれたばかりの我が子を、なれない手でそっと胸に抱き上げて愛おしそうに見ている母の顔のスンハがいる。
そして、オレの隣には感激の涙をハンカチで押さえているハニがいる。

「ねぇパパ・・・そんなに見ないでよ。いくら診察で患者の女性の胸を見慣れている父親でも、私の方が恥ずかしい。胸だってママの倍はあるかもしれないけど、あっちを向いていてくれない?」
「私の倍って!確かに小さいけど、ユシムやスンハにスンリを母乳で育てたのよ。」
全く何を実の娘と張り合っているのか。
初孫でもないのに、昨日スンハに陣痛が始まってからずっと泣きっぱなしだ。

「スンジョ君が泣いているの初めて見た・・・」
「オレだって泣くし、ハニが知らないだけでお前と知り合ってから7回泣いたぞ。」
「うそ!」
スンハの方に背中を向けてハニと話しているが、ハニはスンハが授乳しているのを見てはまた感激の涙を流しているのを知っている。
オレと話しながらスンハを見て泣くハニは、まったく器用な人間だと思う。

「本当だ。」
「いつも完璧でいるスンジョ君が、秘密にしないのも信じられない。」
「オレは完璧じゃないし、普通の男で普通の人間だ。」
スンハが生まれたばかりの我が子を抱いて授乳をしながらオレの様子を見ながらニヤニヤと笑っているのが背中に伝わって来る。
慣れない授乳の邪魔をしないように、スンジョはハニと一緒に病室を出た。

「乳児の頃以外で人生初泣いたのは、ハニが家を出て行った時が一度目。二度目は生まれたばかりのスンハを見た時、三度目はスンリを自分の手で取り上げた時、四度目はハニがオレの正式な妻になった時、五度目はスンハが結婚をした時、六度目はスンハが親になった今日。」
「そんなに泣いたんだ・・でも、今日は涙が流れていなかったよ。」
「涙が出なくたって、泣く事はある。」
そんな告白でも、オレが自分と同じで泣くんだと言って喜んでいるハニと結婚してよかったと思う。

「どうしたの?」
「ユシムも守る家族が増えて、診療所の患者にも信頼されているから、オレは彼に仕事を譲ろうと思う。」
「譲るって・・・まだ隠居するには早いよ。」
「そうじゃない。パラン大病院に戻ろうと思う。病院から戻って来てほしいと何度も言われていた。ハニにとって悲しい思いでしかないオレの実家で暮らさないか?」
スンジョの告白はいつも突然で、ハニの頭では冷静に考えて答えを出せない事ばかり。
考える必要はないのかもしれない。
スンジョを信じて付いて行けば、間違いはないのだから。

病室から聞こえるスンハの呼ぶ声に、ハニはスンジョと手を繋いで入って行った。





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