小さいが綺麗なバンガロー風の家は、まるで新築のように見えた。
「この家の持ち主さんが、一度も住むことなく人に貸す事にしたんだって。だから新築と同じ・・・・・・」
ハニは小さないテーブルの上に、紅茶とスポンジケーキを置いた。
「これ、ハニが焼いたのか?」
「うん・・・・驚きでしょ?お世話になっていたところが孤児院で、そこでお手伝いしていた時に教えてもらったの。ちょっとだけ焦げて、硬くなっちゃったけど味は保証できるから。」
「それじゃ・・・・ハニが作ったチョコレートのスポンジケーキを食べるか。」
「パパ・・・・」
「ん?」
「チョコレートのスポンジケーキじゃなくて・・・・・・プレーンのシフォンケーキ・・・・何だけど・・・・」
シフォンケーキに添えようと思っていた生クリームをギドンは紅茶の中にポトンと落とした。
「その生クリーム・・・・・ケーキと一緒に食べて欲しかったの・・・・」
乾いた笑も出せないその空気は、10年前にもハニが料理を作った時に、一応評価しようと思っていた時にも感じた。
「見かけは左程必要じゃない。食べてみて美味しければそれでいいよ。ハニが作ったケーキをいただくよ。」
見かけはよくないシフォンケーキ。
昔は見かけが良くなくて味も保証できない物が多かったが、10年生きて行く為にハニが努力をした成果をギドンは噛み締めていた。
「ダニエルがね、この家を買い取ろうかと言っているの。そうなれば、ソウルには多分あまり行く事は出来ないけど・・・・・・」
「いいのか?」
「ダメなの?ダニエルと子供と一緒にこっちに落ち付こうと思って。」
「そうじゃない。スンジョ君への想いはもう断ち切れたのか?」
「何を言うのよ。私はダニエルと結婚して、彼の子供も産まれるんだよ。」
少し温くなった紅茶を、ギドンは静かに飲み干すと、ここにいるのが自分とハニだけだから本心を聞き出そうと思っていた。
「ハニがダニエルを選んだ理由が判るよ。」
「選んだ理由?」
「目の色や髪の色は違うけど、ダニエルはスンジョ君と似ている。心の奥に深い傷を負った、どこか冷めた目で見ている所が似ていると、初めて見た時から気が付いていた。」
「似ていないよ。スンジョ君みたいに冷たくないし、ダニエルはすごく優しいよ。だからダニエルと結婚しようと思ったのだから。変な事を言わないで・・・・・ダニエルが聞いたら悲しむわ。」
「そうだな。」
これ以上ハニに何かを聞き出そうとしてはいけない。
10年前と変わらないハニのはずはない。
21年間のハニは誰よりも知っているが、10年間のハニは親であっても知ることは出来ない。
「ところで、体調はいいのか?昔よりも痩せたんじゃないか?」
「体調はいいよ。最近ね、お腹の中の子供が動くようになったの。」
「そうか・・・・体調が良くてよかったよ。で・・・・・買い物とかはどうしているんだ?」
家の中には大体の物は揃っているように見えるが、余分なものは置いていない堅実な生活をしている事が判る。
「欲しいものがあったら、ダニエルが仕事に行く前にメモを渡したり、メールを入れるの。この子の前に一人流産をしているから、一人で買い物に出かけさせてもらえないの。」
「流産した事があったのか?」
「うん、6年前にね・・・・男の子だったの。それから精神的に弱って、それで痩せちゃったの。」
「辛かったろ?何も知らなくて・・・・・」
痩せた原因が、その流産ばかりではないが、ハニの中に残っている僅かなスンジョへの想いをギドンには知られたくない。
きっとここに来るために作ったのだろう。
沢山のハニが好きな料理を、一つづつタッパの蓋を開けてハニに見せると、その一つ一つに父の愛をハニは感じた。
一晩ここに泊まって行って欲しかったが、ギドンはスチャンやグミたちとハンダイの保養所に来ているからと言って、夕方よりも少し前にハニに見送られて家を出た。

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「この家の持ち主さんが、一度も住むことなく人に貸す事にしたんだって。だから新築と同じ・・・・・・」
ハニは小さないテーブルの上に、紅茶とスポンジケーキを置いた。
「これ、ハニが焼いたのか?」
「うん・・・・驚きでしょ?お世話になっていたところが孤児院で、そこでお手伝いしていた時に教えてもらったの。ちょっとだけ焦げて、硬くなっちゃったけど味は保証できるから。」
「それじゃ・・・・ハニが作ったチョコレートのスポンジケーキを食べるか。」
「パパ・・・・」
「ん?」
「チョコレートのスポンジケーキじゃなくて・・・・・・プレーンのシフォンケーキ・・・・何だけど・・・・」
シフォンケーキに添えようと思っていた生クリームをギドンは紅茶の中にポトンと落とした。
「その生クリーム・・・・・ケーキと一緒に食べて欲しかったの・・・・」
乾いた笑も出せないその空気は、10年前にもハニが料理を作った時に、一応評価しようと思っていた時にも感じた。
「見かけは左程必要じゃない。食べてみて美味しければそれでいいよ。ハニが作ったケーキをいただくよ。」
見かけはよくないシフォンケーキ。
昔は見かけが良くなくて味も保証できない物が多かったが、10年生きて行く為にハニが努力をした成果をギドンは噛み締めていた。
「ダニエルがね、この家を買い取ろうかと言っているの。そうなれば、ソウルには多分あまり行く事は出来ないけど・・・・・・」
「いいのか?」
「ダメなの?ダニエルと子供と一緒にこっちに落ち付こうと思って。」
「そうじゃない。スンジョ君への想いはもう断ち切れたのか?」
「何を言うのよ。私はダニエルと結婚して、彼の子供も産まれるんだよ。」
少し温くなった紅茶を、ギドンは静かに飲み干すと、ここにいるのが自分とハニだけだから本心を聞き出そうと思っていた。
「ハニがダニエルを選んだ理由が判るよ。」
「選んだ理由?」
「目の色や髪の色は違うけど、ダニエルはスンジョ君と似ている。心の奥に深い傷を負った、どこか冷めた目で見ている所が似ていると、初めて見た時から気が付いていた。」
「似ていないよ。スンジョ君みたいに冷たくないし、ダニエルはすごく優しいよ。だからダニエルと結婚しようと思ったのだから。変な事を言わないで・・・・・ダニエルが聞いたら悲しむわ。」
「そうだな。」
これ以上ハニに何かを聞き出そうとしてはいけない。
10年前と変わらないハニのはずはない。
21年間のハニは誰よりも知っているが、10年間のハニは親であっても知ることは出来ない。
「ところで、体調はいいのか?昔よりも痩せたんじゃないか?」
「体調はいいよ。最近ね、お腹の中の子供が動くようになったの。」
「そうか・・・・体調が良くてよかったよ。で・・・・・買い物とかはどうしているんだ?」
家の中には大体の物は揃っているように見えるが、余分なものは置いていない堅実な生活をしている事が判る。
「欲しいものがあったら、ダニエルが仕事に行く前にメモを渡したり、メールを入れるの。この子の前に一人流産をしているから、一人で買い物に出かけさせてもらえないの。」
「流産した事があったのか?」
「うん、6年前にね・・・・男の子だったの。それから精神的に弱って、それで痩せちゃったの。」
「辛かったろ?何も知らなくて・・・・・」
痩せた原因が、その流産ばかりではないが、ハニの中に残っている僅かなスンジョへの想いをギドンには知られたくない。
きっとここに来るために作ったのだろう。
沢山のハニが好きな料理を、一つづつタッパの蓋を開けてハニに見せると、その一つ一つに父の愛をハニは感じた。
一晩ここに泊まって行って欲しかったが、ギドンはスチャンやグミたちとハンダイの保養所に来ているからと言って、夕方よりも少し前にハニに見送られて家を出た。

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