「シェフ!電話です。」
「クリス、誰からだ?」
「ダニエルでぇ~す。」
ダニエル?
ハニに何かあったのか?
「ダニエル・・・ハニに何かあったのか?」
ギドンはハニたちが済州島に渡ってひと月後に連絡があった。
家の前の菜の花が綺麗に咲いているから、一度遊びに来て欲しい
あの時はまだ変わった様子はなかったが、ソウルよりも風が強いから、身体でも冷やしたのではないかと不安になった。
<お義父さん、産まれました・・・・女の子です。早くに産まれてしまいましたが、ハニも子供も元気です。もう少ししたら、お義父さんの携帯にハニと子供の写真が届きます>
ダニエルからの報告を聞いても、ギドンは実感はなかったが、急いでレジ下の引き出しに入れていた携帯を取りたした。
画像が送られてから、それほど経っていない事は判っているが、届くまでの数分がとても長く感じられた。
携帯に送られて来た写真に写っている娘は、その娘が産まれた時の妻の顔とよく似ていた。
こちらに産まれたばかりの子供の顔を見せて、親子三人で写っているその姿を見て、10年の間行方不明になっていて随分心配をしたが、何も出来なかった娘が自ら見つけた幸せだったのかもしれない。
「産まれたん?」
「複雑だけど・・・・まぁ、いいっかぁ~」
ギドンが見つめているハニとダニエルと子供の写真を、ジュングやクリス、そして店の従業員も、ギドンの携帯を覗き込んで見ていた。
「おおかた、夕方からの準備も終わったから、上に上がって休んでくるよ。」
「判りました。」
夕方の開店までの時間、ハニたちから送られて来た写真を、亡き妻にも見せてやろうと思った。
幼いハニを残して逝った妻が生きていたら、きっと一緒になって孫の誕生を喜んでいたはずだ。
「ママ、ワシたちの小さなはにがお母さんになったよ。見えるか?」
笑顔でこちらを見ている妻も、写真の中で少しまた笑ったように見えた。
ギドンは数ヶ月前に、ハニたちが住んでいる済州島に行った時の事を、思い出して目頭が熱くなった。
あの時は、小高い丘の上にあるハニたちの住む家が、菜の花畑の中に埋もれるように、そこだけが別の時間が流れていた。
ウンジョから、両親と一緒に済州島のハンダイの保養所で休暇を過ごすことを提案された時、いつもは自分を気遣ってくれているその想いを遠慮していたが、ハニに会いたさに即答した。
それはウンジョがギドンの為に、ハニと過ごす時間を作ってくれたからだった。
「お袋には内緒にしているから。」
親子水入らずで過ごすことを計画してくれていた。
グミがハニの存在を知ってしまえば、10年の時間を埋める事は出来なくても、その時間だけを過ごす事も出来なくなってしまうから。
保養所からハニが住む家の近くまでバスに乗って、緩やかな上り坂を見上げると一面に広がった菜の花畑。
歳もあって坂道を登るのも少ししんどくなっていたが、その咲いている菜の花がハニの笑顔に見えて、その笑顔の向こうに愛娘が住んでいると思うと、子供のように足取り軽く上がって行きそうに思えた。

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「クリス、誰からだ?」
「ダニエルでぇ~す。」
ダニエル?
ハニに何かあったのか?
「ダニエル・・・ハニに何かあったのか?」
ギドンはハニたちが済州島に渡ってひと月後に連絡があった。
家の前の菜の花が綺麗に咲いているから、一度遊びに来て欲しい
あの時はまだ変わった様子はなかったが、ソウルよりも風が強いから、身体でも冷やしたのではないかと不安になった。
<お義父さん、産まれました・・・・女の子です。早くに産まれてしまいましたが、ハニも子供も元気です。もう少ししたら、お義父さんの携帯にハニと子供の写真が届きます>
ダニエルからの報告を聞いても、ギドンは実感はなかったが、急いでレジ下の引き出しに入れていた携帯を取りたした。
画像が送られてから、それほど経っていない事は判っているが、届くまでの数分がとても長く感じられた。
携帯に送られて来た写真に写っている娘は、その娘が産まれた時の妻の顔とよく似ていた。
こちらに産まれたばかりの子供の顔を見せて、親子三人で写っているその姿を見て、10年の間行方不明になっていて随分心配をしたが、何も出来なかった娘が自ら見つけた幸せだったのかもしれない。
「産まれたん?」
「複雑だけど・・・・まぁ、いいっかぁ~」
ギドンが見つめているハニとダニエルと子供の写真を、ジュングやクリス、そして店の従業員も、ギドンの携帯を覗き込んで見ていた。
「おおかた、夕方からの準備も終わったから、上に上がって休んでくるよ。」
「判りました。」
夕方の開店までの時間、ハニたちから送られて来た写真を、亡き妻にも見せてやろうと思った。
幼いハニを残して逝った妻が生きていたら、きっと一緒になって孫の誕生を喜んでいたはずだ。
「ママ、ワシたちの小さなはにがお母さんになったよ。見えるか?」
笑顔でこちらを見ている妻も、写真の中で少しまた笑ったように見えた。
ギドンは数ヶ月前に、ハニたちが住んでいる済州島に行った時の事を、思い出して目頭が熱くなった。
あの時は、小高い丘の上にあるハニたちの住む家が、菜の花畑の中に埋もれるように、そこだけが別の時間が流れていた。
ウンジョから、両親と一緒に済州島のハンダイの保養所で休暇を過ごすことを提案された時、いつもは自分を気遣ってくれているその想いを遠慮していたが、ハニに会いたさに即答した。
それはウンジョがギドンの為に、ハニと過ごす時間を作ってくれたからだった。
「お袋には内緒にしているから。」
親子水入らずで過ごすことを計画してくれていた。
グミがハニの存在を知ってしまえば、10年の時間を埋める事は出来なくても、その時間だけを過ごす事も出来なくなってしまうから。
保養所からハニが住む家の近くまでバスに乗って、緩やかな上り坂を見上げると一面に広がった菜の花畑。
歳もあって坂道を登るのも少ししんどくなっていたが、その咲いている菜の花がハニの笑顔に見えて、その笑顔の向こうに愛娘が住んでいると思うと、子供のように足取り軽く上がって行きそうに思えた。

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