ハニと一緒に、保育器の中に入っているスンハを見ると、お母さんはどんな気持ちでオレを見ていたのかと考える。
まだ高校生。
どれだけ不安になっていただろう。
もしかしたら産まれなかったかもしれない。
普通の高校生のように、友達と甘い物でも食べて家に帰りたいのを、お腹が目立ち始めた時はどうしていたのかと思うと、可哀想な気持ちになって来る。
留学生だったお父さんは、留学先の国の高校生の女の子と付き合うのなら、もっと考えて付き合えば良かったと思う。

初恋の人がお母さんだと知ったのは、最後に会った5歳の時だった。
時々キョンエ園に来て、いつもオレに本を読んでくれた綺麗なお姉さん・・・・今度いつ来てくれるのかな?
帰って行くと、その人がいつも座っていた木陰を見ては来る日を考えていた。
読んでくれていた本は、オレの父親から貰ったものだと思う。
いつもお母さんが読んでいたページは同じ所ばかり。
オレと最後に会った日にその本をくれたけど、5歳の子供にはとても読める物じゃなかった。
全部英語だった。
あのページは、お父さんと付き合っていた時の思い出のページだと思う。

「ダニエル・・・見て・・スンハが欠伸をしている。」
「寝ているのに、まだアイツは眠いのだろうか?」
ハニがどうしてスンハと名前を付けたのか、オレには判る。
昔お前を傷付けた男で、ハンダイの社長の兄。
あの医務室にいた男の事が、まだ心のどこかにあるのだろうか?
妊娠したとハニから聞いた時、一瞬疑ったのは事実だ。
ソウルに来て、オレはすぐに仕事を見つけたから、傍にいる時間は少なかった。
宿の女将さんにジェウクを預けて、出掛けた事を聞いた。
あの男に会ったのかと思ったけど、ハニは隠し事が出来ないし、それを聞いた時に会っていたと言われるのも怖くて聞けなかった。

良かった。
スンハは間違いなくオレの子供だと判る顔をしている。
「スンハの髪の色・・・ダニエルと同じだね。明るい髪の色で・・・・授乳のときに目の色も見ようと思ったけど、ほとんど目を瞑っていて見えなかった・・・・・」
「目の色も、オレと同じだよ。」
オレと似ているスンハは、オレが育った時のように寂しい思いをさせたくない。
「そう言えば・・・・私、こっちに搬送される前に保養所の医務室の先生にお礼を言っていなかった。」
「そうだな、明日保養所に行った時にオレが言って来るよ。」
「ダニエルが言ってくれても、やっぱり私も言わないといけないと思う。」
「いいったら!!」
「・・・・・」
「ゴメン、オレが言っておけばいいだろう。別に治療をしたわけじゃないし、こっちの先生に連絡を取ってくれただけだから。」
「そうだね・・・無事に産まれました・・・ってダニエルが言うだけでいいね。」
声を荒げて言うことも無かった。
間近で見た、ハニが昔好きだった男に、オレは嫉妬しているのかもしれない。






人気ブログランキングへ