「こんなにたくさんの食材をどうするんだよ。」
いくつもの袋を呆れながら見てコーヒーを飲んでいるスンジョ。
「新鮮な食材で美味しいものを・・・・・・・」
「それは判ってるけど、二人でこんなに食べきれるか?」
大方店の人に煽てられて(おだてられて)調子に乗って籠に入れたんだろう。

「う・・・・・・ん・・・。いつもお母さんが買い物をしてくれてたから・・・・・お店の人に<若奥様>って声かけられて・・・・・・。」
やっぱりな・・・・
「<旦那様に美味しいものを食べさせてあげてね>って言われて・・・・・・スンジョ君・・・勉強が大変だから・・・・・病気になって欲しくないから・・・・・。」
オレが怒ったと思ったんだろうな。
奥二重だから判らないが意外と大きなハニの目に涙がジンわりと滲んできた。
「朝市で買うのも新鮮だけど、こんなに買ったら新鮮な野菜も二人で食べるには多すぎる。欲しい物だけを買えばいいんだ。」
優しく言ってはみたが、オレが言うと冷たくなるんだな。

泣いたり・拗ねたり・笑ったり・・・・心の感情が直ぐに表れるハニの澄んだ瞳にオレは弱い。
ハニをからかって意地悪をするのが好きだけど、その大きな目が涙が滲んで赤くなると、後悔している自分がいる。

「オレの服を選んで出掛けるのだろ?」
「えっ?!」
見る見るうちに涙が滲んでいたハニの目が、直ぐにキラキラと輝きだす。
「どこか行きたい所があるんじゃないのか?ロマンス映画を観に行くんじゃなかったのか?」
「スンジョ君・・・・・・知ってるの?」
「疲れて目を閉じているのにお前がパソコン眺めて一人で笑ったりして喋っていれば嫌でも耳に入って来る。いいぞ、今日は若奥様の仰せの通りに従います。」

ピョンピョンとウサギのように飛び跳ねて喜ぶお前の顔を見ると、ハニと出逢って変わった自分が幸せ者だと思った。
こんなハニの嬉しそうな笑顔がオレは好きだ。

ハニに言われるままされるがまま洋服を着替えると、お袋の影響か・・・・・・・
オレが一番苦手とする派手なペアルック。
でも不思議だ・・・・・・・・こんな気分。
ハニが言うとおりオレ達はまだ新婚なんだから、もっと二人でいるのを楽しめばいい。

家の外に出ると、ペアルックのオレ達を見てコソコソと何か言いながら通り過ぎる人達。
「恥かしいな・・・・・・・。」
「いいじゃない・・・可愛いし・・・ねっ?」
嫌じゃないな、こんなのも。

「ちょっと待って・・・・・・・。」
ニヤケる自分の顔をごまかすように屈んで、ハニの解けた靴ひもを結ぶ。
「ありがとう・・・・・・・。」
ハニが言うありがとうと言う言葉に、女の子たちの言う<胸がキュンとする>という感情が湧いてくる。
背伸びをしてハニがオレの頬に柔らかな唇を付けた。
クスクスと言って笑いながら走って行くハニが可愛くて仕方がない。

「若奥様。」
「なぁに?旦那様。」
オレが少し腕を開けると自分の腕を絡ませるハニの温もりに叫びたくなる。


_____オレは世界で一番幸せだ_______