宴の席から離れ内官の後を緊張しながら歩く二人は、何か間違いでも犯したのかと不安になってきた。
内官の衣擦れの音と、宮殿内の警備をしている官吏が歩く足音以外何も音がなかった。
足が宙に浮くとはこのことだろうかと感じた時に、また違った雰囲気の部屋の前に着いた。
何人かの女官が立っている部屋に来ると、案内して来た内官が一人の女官に会釈した。
「決して失礼の無いように。」
「はい。」
短くそう返事をするしかなかった。
部屋の戸が静かに開いて中に入るよう促すと、部屋の正面に王のみが着ることができる真紅の龍袍は、実際に見たことはないが、ジュングとジュリにはどんな身分の人物かわかった。
「ジュング・・」
その声は王の横に座っている女性で王妃から聞こえた。
もう十何年も経っているが、あの頃から変わらない、むしろ綺麗になったハニが笑顔でこちらを見ていた。
色白の肌は透き通り、黒い瞳は大きく潤んで輝いていた。
「父ちゃん・・・顔を上げたら・・」
隣に座るジュリが膝を数回当てて、ジュングは慌てて下を向いた。
その様子を見たハニは、小さく笑うと人払いをした。
「ここには私達だけしかいないから気を楽にして・・・・」
気を楽にしてと言われても、着慣れない絹の服を来ただけでも緊張しているのに、身分の低い自分たちが入ることのできない宮殿の、それも王と王妃の私室にいるのだから身体が宙に浮いている気分でもある。
「ジュングもジュリも送った服がよく似合っているわ。王様と背格好が同じくらいだと思って作らせたのだけど、本当に同じ体格だったのね。」
ジュングもジュリもまだ王の顔を直視していないが、自分と王様の体格が同じだと聞くと盗み見たくなった。
「ハニ、これをジュングに・・・」
狭い私室とはいえ、王宮の王と王妃の私室は広い。
離れた場所でも、王の声は心に響く優しくて包み込むような声だ。
「ジュング・・・スンの父親として王宮では誰も教えることができないことを教えてくれた。これからはこの牌を使って、民の様子を知らせるように。」
書簡と牌が差し出された。
「勿体ない・・・」
「スンと私を助けてくれなければ、今がなかったの。命の恩人に感謝の気持と思って受けてほしいの。」
ジュングとジュリは言葉を返すことの代わりに、ただ床に額を何度もつけていた。
離れて暮らすようになってから、ハニはジュングたちの島に行くことはできなかったが、スンは数回視察
として訪れていた。
そのたびに成長している姿を見ることはできても、話す機会はあまりなかった。
ジュリと夫婦になり、自分の子供が生まれても、スンのことは忘れたことがなかったから、この王命に驚きと嬉しさが入り混じっていた。

人気ブログランキング
内官の衣擦れの音と、宮殿内の警備をしている官吏が歩く足音以外何も音がなかった。
足が宙に浮くとはこのことだろうかと感じた時に、また違った雰囲気の部屋の前に着いた。
何人かの女官が立っている部屋に来ると、案内して来た内官が一人の女官に会釈した。
「決して失礼の無いように。」
「はい。」
短くそう返事をするしかなかった。
部屋の戸が静かに開いて中に入るよう促すと、部屋の正面に王のみが着ることができる真紅の龍袍は、実際に見たことはないが、ジュングとジュリにはどんな身分の人物かわかった。
「ジュング・・」
その声は王の横に座っている女性で王妃から聞こえた。
もう十何年も経っているが、あの頃から変わらない、むしろ綺麗になったハニが笑顔でこちらを見ていた。
色白の肌は透き通り、黒い瞳は大きく潤んで輝いていた。
「父ちゃん・・・顔を上げたら・・」
隣に座るジュリが膝を数回当てて、ジュングは慌てて下を向いた。
その様子を見たハニは、小さく笑うと人払いをした。
「ここには私達だけしかいないから気を楽にして・・・・」
気を楽にしてと言われても、着慣れない絹の服を来ただけでも緊張しているのに、身分の低い自分たちが入ることのできない宮殿の、それも王と王妃の私室にいるのだから身体が宙に浮いている気分でもある。
「ジュングもジュリも送った服がよく似合っているわ。王様と背格好が同じくらいだと思って作らせたのだけど、本当に同じ体格だったのね。」
ジュングもジュリもまだ王の顔を直視していないが、自分と王様の体格が同じだと聞くと盗み見たくなった。
「ハニ、これをジュングに・・・」
狭い私室とはいえ、王宮の王と王妃の私室は広い。
離れた場所でも、王の声は心に響く優しくて包み込むような声だ。
「ジュング・・・スンの父親として王宮では誰も教えることができないことを教えてくれた。これからはこの牌を使って、民の様子を知らせるように。」
書簡と牌が差し出された。
「勿体ない・・・」
「スンと私を助けてくれなければ、今がなかったの。命の恩人に感謝の気持と思って受けてほしいの。」
ジュングとジュリは言葉を返すことの代わりに、ただ床に額を何度もつけていた。
離れて暮らすようになってから、ハニはジュングたちの島に行くことはできなかったが、スンは数回視察
として訪れていた。
そのたびに成長している姿を見ることはできても、話す機会はあまりなかった。
ジュリと夫婦になり、自分の子供が生まれても、スンのことは忘れたことがなかったから、この王命に驚きと嬉しさが入り混じっていた。

人気ブログランキング