ハニという名前にこれほど敏感に反応するとは、スンジョ自身が信じられなかった。
教授の講演の準備を手伝いながら、解錠の入り口から中を伺っている看護学生の視線が自分に注がれている事を、スンジョは気が付いていたがその視線の中にハニがいる事は感じられなかった。

耳にした名前が妃と違いかもしれないと思っていても、このウファ看護大学にハニがいるのではないかという事に確信していた。
確信していても、それを証明できるものはただ一つ、ハニと誰かが言った方を見た時に見えた後ろ姿が、逢いたくて仕方のなかったハニとあまりにも似ていたから。
探し出したもう一つの看護大学はスンジョが父から聞いている辺りの場所からかけ離れていた。

教授の講演中のスンジョは、その話を聞いていたが心は別の方に向いていた。
いつもは複数の大学の教授が講演を行う事が多かったが、今回は単独公演だから演目が終われば早々に引き上げなければいけない。
ホールから外に出ようとした時に、誰かにズボンのすそを引っ張られるような感じがした。スンジョは、そちらを見ると一歳を過ぎたくらいの小さな女の子がスンジョの顔を見上げてニッコリと笑った。

「アッパ・・・抱っこ・・・」
オレに抱きついたその幼い女の子は、笑った顔がハニによく似ていて、自分とは無関係なのに、ハニともし結婚をしたらこんな子供が生まれたのかもしれないと思うと、見ず知らずの人の子供には思えなかった。
「すみません・・・スンハちゃん、こっちにおいで。アッパじゃないのよ、お兄さんでしょ。オンマがもう直ぐお迎えに来るから、託児室に戻ろうね。」
スンハはスンジョの足にしがみつぎ、離れたくないという意思を示そうと必死に抵抗した。

「いいですよ、抱っこをするくらいは。子供は嫌いじゃないですから。」
スンジョはしゃがんで、自分の子供とは知らずにスンハを抱き上げた。
「すみません・・・・父親の顔を知らないで育っている子供なので、父親に抱っこをしてもらったことがないんです。」
小さくて軽くて柔らかで・・・・自分を綺麗な瞳で見つめる顔がハニによく似ていて、なんだか不思議な感情が心の奥からあふれて来た。

「アッパ・・・・・だいしゅき。」
_____スンジョ君・・・・・・大好き_______



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