病棟に来たのは初めて。
あの『ペク先生』はどこにいるのだろう。
ハニはキョロキョロと辺りを見回したい気分だが、どこに何があるのか、何をどうするのか聞いていなと分からないし、聞き漏らさないように聞いていても、そうすぐには覚えきれない。
「緊張しなくてもいいのよ。休んでいる看護師が復帰するまでだから。」
リュウ看護師は緊張しているハニに気持ちを和らげるように、顔を覗き込んでにっこりと笑った。
「さっきの看護師に言われた事を気にしているのね。」

ちょっとしたミスと言えばミスかもしれないが、パラン大病院で働き始めたから建物の事をすべて把握していないハニが悪かったのかもしれない。
「あなたがペク先生の紹介でこの病院に来たから、やっかみが入っているのよ。」
「まさか・・あんなちっぽけで古いクリニックの先生が、そんなに人気があるとは・・・・・」
リュウ看護師の表情で、ハニは『まったりクリニック』の院長の『ペク・スンジョ』ではなく、パラン大病院の『ペク・スンジョ』だと気が付いた。

「ペク先生とは一度も会った事がないんです。本当です・・・・」
「あなたが嘘を吐くとは思ってもいないから気にしなくてもいいのよ。仮眠の時間が短くなるから、早くこの交換したシーツをリネン室に持って行ってね。」
「はい・・・・」
ワゴンから落ちないようにしっかりとシーツを押し込むと、ハニは薄暗い廊下を静かにワゴンを押しながら歩き出した。



リネン室は地下一階。
夜の病院がこんなに怖いとは思わなかった。
「曲がるところを間違えないようにと言われていた・・・・外来の時はここには来た事がないから、間違えないでって言われても・・・・」
ハニは薄暗い廊下の角を一つ一つ確認をしながら歩いていた。


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